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第374話・エクシリアVS???

 

「透! 坂本!! 今すぐわたしの部屋に来てください!!」


 ワクワクとした表情で、執行者テオドールはそう叫んだ。

 まず2人が驚いたのは、彼女のしている恰好だった。

 それは、普段のカジュアルな服装と正反対。


「あれ、懐かしいな……ダンジョン側にいた時の制服じゃん」


 見れば、テオドールはいつものパーカーとショートパンツではない。

 シルク素材のアクセサリーが施された衣服に、黒いスカート。

 普段着に慣れてしまっていた分、今更ファンタジー感が溢れ出ていた。


 毎日のようにほえほえと鳴いているから忘れがちだが、彼女は異世界ファンタジーからやって来た魔法少女なのだ。


「はい、正直もう着ないと思っていたのですが、この”一大イベント”の審判をやるからには、ビシッと決めねばと思いまして」


「審判?」


「はい、今日はなんと師匠が強敵と戦うんです!」


 彼女の師匠と言えば、あの執行者エクシリアのことだろう。

 敵だった頃は、覚醒したテオドールでも勝てたことが無い。

 現在では3頭身のマスコットとなっており、とても戦える状態ではないと思ったのだが……。


「……わかった、戦闘団で女子寮への入室許可取ってから行くよ」


 テオドールがこんな格好をしてまで審判をするのだから、何か凄い相手と戦うのだろう。

 もしかしたら、ようやく回復して元の姿に戻ったのかもしれない。

 そのお披露目会となれば、確かにあの気合も納得がいく。


 若干の期待を抱きつつ、先に転移したテオドールを追いかける形で、透と坂本は女子寮へ入った。


 ……が、そこで待っていた光景は、全く想像していないものだった。


「キュウ…………」


「「は?」」


 中学教科書の並べられた学習机の上に乗っていたのは、そこそこ大きなケース。

 その中には、”ハムスター”が入っていた。


「よく来たわね、新海透。坂本慎也」


 見れば、相変わらず3頭身なエクシリアが四条の膝上に乗っていた。

 長い金髪は輝いており、コンパクトだがちゃんと執行者用制服を着ていた。

 全く状況が飲み込めない透たちへ、四条が口を開く。


「あぁ、透さんに坂本3曹。いよいよ始まりますよ」


「えと…………何が?」


 困惑しかない透へ、四条はにこやかに喋った。


「ここの女子寮でハムスターを飼ってる隊員がいまして、それをエクシリアさんに見せたところ、ぜひ異世界の魔獣と戦ってみたいとおっしゃいまして」


「異世界の魔獣? ハムスターだぞ…………?」


 まぁ確かに、エクシリア目線から見れば間違いではない。


「では師匠! 準備は良いですか?」


 何故か興奮しているテオドール。

 どうやら、久しぶりに敬愛する師匠の戦いが見れるということで、喜んでいる様子。


「フッ、もちろんよ。こんなに小さくなっちゃったけど……アンタの師匠として、威厳を見せてあげるわ!」


 ドヤ顔のエクシリアがケースの中に入れられる。

 フワフワの床に立った彼女は、ひまわりの種をかじるハムスターへ指を向けた。


「そこの魔獣! 掛かってきなさい、この私が相手してあげる」


 もう全くついていけない透と坂本だが、とりあえず成り行きを見守ることとした。

 エクシリアを見たハムスターも、どうやら侵入者として認識したらしい。

 ひまわりの種を捨てて、ゆっくりと対峙した。


「師匠………! 油断しないでください」


 ガチめの汗を流すテオドール。

 相手はハムスターだぞ……? というツッコミは野暮。

 そして、戦いは始まった。


 突っ込んで来たハムスターに対して、エクシリアは正面から迎え撃った。


「ふんぬ……!!」


 正面からガッチリと取っ組み合って、エクシリアとハムスターは押し合いを開始した。


「ふんぬぬぬぅッ……!!!」


「キュウ!」


 3頭身の異世界人と、ハムスターが力比べをしているという、なんというか凄まじい光景。

 これを配信できれば良かったのだが、生憎と彼女の存在は機密事項。


「うぅ……、こんなベストバウトを配信できないなんて。札束をドブに捨てるようなものですね」


「いやそうだがベストバウトではないだろ……、完全にマスコット同士の戦いだぞ」


 名残惜しそうな四条に、透が思わずツッコミ。

 押し合いは続く。

 執行者制服で審判を務めるテオドールは、両手を握り締めて応援した。


「師匠! 負けないでください!!」


「ッ……!!」


 その想いが届いたのだろう。

 エクシリアの身体から、魔力が溢れ出た。


「どっりゃああ!!」


「キュウ!」


 ――――コテンッ――――


 エクシリアの投げ技で、ハムスターはひっくり返った。

 即座に、テオドールが赤色の旗を上げた。


「師匠の勝ちです!!」


「やったわ! 見てたわね!? テオドール!?」


「はい! しっかりこの目に焼き付けました!! さすがはわたしの師匠です!!」


 大盛り上がりする2人の執行者。


「えっ、これでこんな喜ぶの…………? 相手ハムスターだぞ?」


「まぁ本人たちは喜んでますし、良いんじゃないっすか?」


 一方のハムスターはというと…………。


「キュウっ」


 上体を起こし、ノソノソと移動。

 そのまま回し車の上で元気に走り始めた。

 エクシリアに負けたというよりも、途中で戦いに飽きた……という感じだ。


 そんな外の世界とは反対な、平和過ぎるダンジョン。


 ハムスターを返しに行くついでに、透は提案した。


「せっかくだ衿華、このまま食事配信しようぜ」


「えっ、でもエクシリアさんは機密事項じゃ……」


 心配する彼女に、透は快活な笑顔を向けた。


「大丈夫、考えてみれば……もう隠す必要が無い」


 本日の昼食は、”キーマカレー”だった。

前にコメントで、エクシリアのことを「はえスター」と呼んだ方がいたのを思い出しました。

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― 新着の感想 ―
エッちゃんおかえりー!!(2度目 …は、定着していないのであらためて考える。 はぇぇ…と鳴くのではえちゃんは決まりなんだけど… はぇクシリアが順当だけどもひねりがないかな。 エクシリはぇ、語尾が締ま…
おしい!そこはとりあえず撮っておいて、後から公開できるようになった時のために動画化しておけばよかったのに!
ふえほえ姉妹につづく 新しいネーミングはどうなるのだろうか
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