表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
373/454

第373話・いつもと変わらないダンジョン

 

 中華人民共和国のスピード降伏は、世界中に報道された。


 撮影された空爆映像を元に、大手メディアが特集を組んで放送。

 一部では、「連合軍はやり過ぎだ! 中国が何をしたというのか!」と学者が叫ぶ番組もあった。


 もっとも、そんなのはごく一部だったので、誰も相手にしていない。

 現在は”上海を除いて”、連合軍が各主要都市を占領している。


 南シナ海から台湾海峡、東シナ海は連合海軍で埋め尽くされており、勝敗は誰が見ても明らか。

 今朝は、停戦の調印と同時刻に、パフォーマンスとして70機を超える連合軍機が北京の空を大編隊で飛行した。


 そんな物騒な世間から遠く離れた場所。

 ダンジョンでは、敢えていつもと変わらない日常が送られていた。


「なぁ坂本よ、世間は大変だが……俺の彼女。すっげえ可愛くって、超良い匂いすんだよね。マジ天使なんだ」


 椅子に座って呆けた顔でノートパソコンを見つめながら、新海透は惚気たことを口走った。

 そんな上司に、坂本はスマホゲーを弄りながら回答。


「それを言ったら僕の彼女も同じっすよ、あの小さな八重歯がまた可愛いんすわ……。まっ、その口から出てくる一言は余計な場合が多いですけど」


 惚気自衛官2人による、国際情勢とは無縁な雑談。

 ダンジョン内においては、目の前の敵に集中すべきということで、なるべく国際情勢を意識しないよう言われていた。

 そんな中、透はふと聞こうと思っていたことを思い出した。


「そういえば坂本、特戦の人らに連れてかれてたけど……なんかあったのか?」


 4週間前の新宿で、坂本と久里浜はロシア特殊部隊相手に奮戦した。

 その後てっきり揃って合流するかと思っていたのだが、なぜか坂本だけ習志野駐屯地に連れていかれていたのだ。


 ようやく出来た休日なので、忘れない内にふと聞いてみた。


「あぁ、特戦の方々……千華を超大切にしてたみたいで。どうやら妹分として原隊復帰を待ちわびてるらしくって、ここで僕と肉体関係持った件でちょっと」


「マジ…………? 特戦式の拷問とかされた感じか?」


 本気で心配する透に、坂本は顔を向けた。


「いえ、特に怒られたりはしなかったっすよ。彼らも千華のことは分別ある大人として見てるらしくて、隊長が想像するようなことは無かったですね」


 いわく、彼らは普段の久里浜の様子が気になって仕方がなく、坂本に近況を聞きたくて拉致したらしい。

 一緒に食事をしたり、部屋で遊んだり、ダンジョン攻略の話で盛り上がったとのこと。

 久里浜がこっちで楽しく過ごしてると聞いて、群長の城崎や小隊長クラスの隊員たちも安堵したようだ。


 おそらく、これが一般の隊員であればこうはならなかっただろう。

 坂本はなんだかんだ戦果を挙げており、しかもあの現代最強である錠前勉が指名するほどの自衛官。

 特戦が今更文句を言う理由など、最初から無かったのだ。


「でもまぁ、千華を不幸にしたら”殺しに行く”とは言われましたね」


「やっぱヤバい目に遭ってね!?」


「ご心配なく」


 長い前髪の奥で、黒目が据わる。


「俺は絶対に千華を幸せにし続けるんで、なんも心配してません。むしろ、そんなアホをやらかしたら殺してくれるんです……感謝したいくらいですよ」


「錠前1佐が狂ってるのは前から知ってるが、お前も大概だぞ……」


「そうですかね? でも僕は隊長の方が心配っすよ」


「俺か?」


「えぇ、隊長は結構な女たらしですからねぇ……。なんかやらかして、四条2曹を不機嫌にしないか心配っす」


「誰が女たらしだ。でも、テオや錠前1佐にも同じこと言われてんだよなぁ……」


 新海透という男は、良い意味でも悪い意味でも平等だ。

 恋人という特別な女性に対して、知らぬ内にやらかす危険は確かにあった。


「まっ、そん時は衿華が俺をぶん殴ってくれるだろ。アイツ一応俺と同じくらい体術強いし」


「そうならないことを祈ってますよ。そうだ、錠前1佐と言えばなんですけど――――」


 坂本がそう口開いた瞬間だった。


「んっ?」


「あっ」


 部屋の中央が、眩く輝いた。

 神々しい光の中から、見慣れた異世界の少女が現れる。


「透! 坂本!! 今すぐわたしの部屋に来てください!」


 転移してきた執行者テオドールは、現れるやいなやそう叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
中国が何をした?じゃねえよw ほんとにもー、これを機会に反日共は大掃除するべきでは? 外患誘致は実質的には適用不可らしいですが、実質的というならスパイ防止法も出来てることだし。 新海・坂本両氏が人生の…
俺らが・彼らが何をした→魔法でテレポートしてレーダーを掻い潜り宣戦布告も無しに友好国の首都を爆撃したうえ、世界に向けて戦術核を発射する直前までやった。数分遅かったら核戦争が始まってた これ系統のテンプ…
中国が何をした?それ、本気で言ってるのかな?宣戦布告もせずに隣国首都に特殊部隊を送り込んで戦闘した上に空爆したでしょうに。特殊部隊の方は公表されていないかもだけど、空爆の方は隠し様無いよね。 それで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ