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第37話・特殊作戦群 久里浜千華

 

【思った通りめっちゃ狭いな、しかも光源はランタンだけで暗いと来たもんだ】

【さっきから壁に書いてある模様、なんか薄気味悪いな……蛇がモチーフか?】

【そもそもさっきのモザイクといい、完全にホラーだろ。このタワー不気味過ぎるんよ】


 盛り上がるコメント欄。

 膨大な数の人間が、ラビリンス・タワーの異質さを怖がっていた。


 まぁ当然の話で、ここまで不穏な人工物はエジプトにだって無いだろう。

 そんなリスナー達を尻目に、6名の自衛官は各々進んでいた。


「狭い通路に入り組んだ角、明らかに敵が仕掛けるなら最適だよねぇ。さっきのガスといい、もし中世の剣で攻略を強いられたら最悪の場所だ」


 列の後方で、警戒しながら呟く坂本。

 今は18人を3チームに分けて、複数の部隊で迷宮をマッピングしながら進んでいた。


 一定間隔でマーカーを置き、帰り道を見失わないようにしっかり対策もしている。

 透たち配信チームと、+2人の中即連隊員が慎重に進む。


【今先頭を歩いてる女の子、久里浜だっけ? 本当に任せて大丈夫なのかな?】

【いくら自衛官っつっても、この薄暗さで突然襲われたら体格差でひとたまりも無いだろ】

【でも気のせいかな……、やたらとクリアリングが機敏だぞ。一般の自衛官ってそんなにCQB得意だったかな?】


 コメントでは、先陣を切る久里浜に不安がる者がたくさんいた。

 小柄な女性には荷が重いのでは?


 新海や坂本が前に出るべきではないか、そういう声もたくさんある。

 だがここに来て、改めて“透の直感”が答えを提示していた。


「久里浜」


「なに?」


「この先30メートル奥の角からいくつも気配がする、待ち伏せだ……対処できるか?」


 肩に手を置いた透に、久里浜はハッと笑って答える。


「さすが隊長、その情報だけでもう十分よ」


「大丈夫か? この先はかなり暗い……視認性は結構低いぞ」


「まぁ隊長たち一般の自衛官からしたら普通そうよね、でもわたしの武器を見てよ」


 言われた通りに見れば、久里浜のライフルとハンドガンには両方ともシュアファイア製高機能タクティカルライトが付いていた。


 どちらも、特戦群の装備だ。


「5秒後に行くわ––––ちょっと荒技使うから、ちゃんと距離を取って」


「わかった、任せるぞ」


 言う間に5秒が経過し、久里浜が動いた。


 ––––ダンダンダンッ––––!!!


 なんと敵が見えないにもかかわらず、彼女はHK416A5を発砲したのだ。

 一見あり得ない行動だが、すぐに真意がわかる。


 カラカラと、角の奥で音がした。

 アレは、モンスターが結晶に変化した際に地面へ落ちた音。

 つまり––––


「さすが千華ちゃん、角待ちなんて効きませんか」


 四条が思わず感嘆する。

 そう、久里浜は壁に向けて斜めの角度で発砲し、なんと“跳弾”で見えない位置の敵を射殺したのだ。


 一部の特殊部隊は、こうしたシチュエーションに備えて“跳弾を当てる”訓練をしているとは聞いていたが、実際見せられると圧倒された。


「じゃ、行ってきます♪」


 床を思い切り蹴る。

 閉所における久里浜は、まるで水を得た魚のように機敏だった。


「フーン、幽霊の次はカボチャのお化けなのね」


 久里浜が突入した場所には、短剣を持った頭部がカボチャのモンスターがいた。

 それの仮称––––“パンプキン・スレイブ”へ、銃を向けながら彼女はハンドガードの後付けスイッチを押す。


 同時に、ライフルへ取り付けられたフルスペックのレーザーエイミングデバイス。

 そして1000ルーメンの強烈なフラッシュライトが光った。


「ハロウィーンにはまだ早いのよ」


 まず視界に捉えた4体のパンプキンへ、軽快なダブルタップでのヘッドショットを決めた。

 結晶化が行われる直前、死体を乗り越えて奥のモンスターが肉薄してくる。


 勢いよく腕が振られるが、

 短剣が下ろされた場所に、久里浜はいなかった。


「よっ」


 小柄な身体を活かして、久里浜は横へジャンプ。

 壁を踏みつけ、反動で回し蹴りをお見舞いする。


 鈍い音と共に、パンプキン・スレイブが仰け反った。

 久里浜はライフルから手を離し、超高速でホルスターの『G17 Gen5』ハンドガンを抜く。


 ––––ダンダンダンッ––––!!!


 半ば押し付けながら接近し、超至近距離から9ミリ・パラベラム弾をお見舞いする姿は、もはや殺し屋に等しいものを感じさせた。


 拳銃を両手で抱くようなその構えは、イスラエルで開発されたCARシステムという射撃法。

 接近戦で銃を奪われないようにしつつ、サイトを使わずにポイントシューティングで敵を仕留めるのだ。


 彼女の長い髪が舞った後には、グロック拳銃により頭だけを撃ち抜かれた死体が積み重なる。

 全てが淡い光と共に結晶化した瞬間、輝きに浮いた久里浜は一言だけ呟いた。


「––––クリア」


 その姿は、紛れもなく『特殊作戦群』そのものだった。


【戦い方がイカツ過ぎだろ……っ】

【交代希望とか言ってすみませんでした!】

【自衛隊ってこんなにCQB強かったんだ……】

【結婚して踏まれたい】


 騒然とするリスナー達へ苦笑しつつ、透は最奥へと前進した。

 いよいよ、最後と思われし部屋へ辿り着く––––


ローファンタジー日間ランキング、まさかの本作が堂々の第1位に輝きました!!

これも応援してくださる方のおかげです、本当にありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


と思った方はブックマークや感想、そして↓↓↓にある『⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎』を是非『★★★★★』にしてください!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ファンタジーはファンタジーでも、ローファンタジーだからねえ。 武器や車両のスペック的にも、立体機動やらの運動性とかも含めて「理論上は可能≒ほぼTASさん専用」みたいなリアリティとファンタジ…
[良い点] 物理が効く小型なら、物量で来ない限り単騎で余裕よ! 残念、踏まれるのは某スナイパーの担当でございます。
感想一覧
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