表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
368/453

第368話・補足せよ、中国軍超新鋭警戒機

 

 連合軍の作戦は、快調なほどに上手く進んでいた。

 積み重ねたシミュレーション、各国との共同訓練が活きた形だった。

 初撃が完璧に決まったこともあり、制海権と航空優勢は台湾東海域全体にまで広がる。


 沿岸部のレーダーと1個艦隊を潰したことで、次なるステップへ進むことができた。


「さて、では作戦をフェーズ2に移す。よろしいかな?」


 ––––原子力空母『ジェラルド・R・フォード』艦内。


 次の攻撃に向けて、甲板上では艦載機が発進準備を行なっている。

 今は先制攻撃を掛けたF-35C、およびEA-18Gグラウラーの着艦が終わったところだ。


 艦中央部にある作戦司令室には、今回参加した各国の艦隊司令官が一堂に集まっていた。


「よろしいも何も、予定通りです、特に問題はないかと」


 席に座って短くそう言ったのは、海上自衛隊の艦隊司令官を務める山口海将補。

 彼はリヴァイアサン戦で、『ひゅうが』に乗艦して直接指揮を執った猛将だ。


 何を隠そう、今回の作戦の具体的な部分はほぼ彼が策定していたのである。

 トップはあくまでアメリカ軍のマッキャンベル大将だが、影響力は山口もほぼ同じと言って良い。


 さらに彼はかつて図上演習で、米第7艦隊を完封した実績を持つ将官だった。


「ふむ……では次だ。我々は現在、確実に敵の索敵能力を削っている。トマホークの大半が目標に着弾したのは幸先が良い」


「全くです。艦載機の連携が上手く行きましたな! 演習の時に電子妨害下での戦闘を訓練しておいて良かった」


 そう返したのは、イギリス軍の艦隊司令官。

 彼の傍には、ドイツ軍フリゲート、並びにオランダ軍フリゲートの艦長も座っていた。

 NATO艦隊の面々は、初動の成功に安心しているようだ。


「天下の米英日が本気を出したのですから、我々としては勝ち戦ですよ」


 ご機嫌に呟くドイツ軍艦長。

 しかし、山口は顔を緩めていなかった。


「80年前に初戦が上手くいきすぎて、後に大敗した国があります。まだ油断は禁物かと」


 ドイツ軍艦長の顔が歪む。

 例えに出た国が一体どこかは、言わずとも皆察していた。


 戦場では僅かな油断が、一瞬で艦隊を失う事態となる。

 現に、ついさっき中国の最新鋭艦隊を6隻沈めたばかりだ。


 欧州軍のお気楽さにため息をつきつつ、山口は帽子の陰に収まる黒目をマッキャンベルへ向けた。


「敵は固定式レーダーを失いましたが、まだ早期警戒管制機が残っています。完全に航空優勢を握るなら、立て直しの隙を与えないのがよろしいかと」


「山口海将補の言う通りだ、時間を置けば衝撃力が失われる。30分後に攻撃隊を発艦、グラウラー支援の下、敵航空基地へのスタンド・オフ攻撃を開始する。中国艦隊の殲滅はその直前に行われるだろう」


 マッキャンベルの言葉に各々が頷く。

 だがここでも、やはり山口が発言した。


「……もし敵の早期警戒機が”デュアルバンドレーダー”を搭載していたら、ステルスと言えど位置が割れます。そのHVT(最重要ターゲット)は福建省後方にいた機体が怪しいですかね、明らかにF-35のアムラームを警戒していた」


「バカな、デュアルバンドレーダーは米軍でも艦船に搭載するのがやっとだぞ。早期警戒機に乗せられるとは思えんが……」


 反論するオランダ軍艦長。

 だが山口は、この場で答えを知る者の返答を待った。


「あぁ……この場で隠すわけにはいかないから言うが、実はデュアルバンドレーダーの航空機搭載は我が軍でも試験的に成功している。山口海将補の懸念はあり得る話だ」


「「「ッ!!」」」


 マッキャンベル大将の言葉に、山口が続いた。


「もし中国軍がその虎の子を投入した場合、貴重なステルス艦載機が失われます。そうなれば物量に押されて敗北もあり得るでしょう」


「し、しかしその試験機は福建省の内陸部にいるのだろう? アムラームでも届かないぞ」


「豪軍の意見に同意だ、山口海将補……妙案があるのなら聞かせてもらいたいな」


 各国軍将官の視線が集まる。

 普通なら萎縮する場面だが、リヴァイアサンというアノマリーと目の前で対峙した山口にとって、こんなものは重圧の内に入らない。


 淀みなく、自信に満ちた声で返した。


「我が海軍の艦載機部隊にお任せください、グラウラーの支援も必要ありません」


「日本が単独で仕留めると!? さっきステルス機は通じないと話したばかりではないか!」


「問題ありません、マッキャンベル大将……天気予報図はありましたな?」


「あぁ、ここだ」


 A1サイズの紙を広げた山口は、不敵に笑った。


「40分後に我が海軍の艦載機部隊を発艦させます、HVTを殲滅したら合図を出しますので、連合軍は台湾周辺の打撃艦隊を仕留めてください」


 どよめきが起こる中、会議は一旦終了した。

 巨大空母の艦内を歩きながら、山口はリヴァイアサン戦で一緒に戦った戦友を思い出す。


「……あぁ緊張した、でも君は英雄としてもっと激しい重圧を日本中から背負ってるんだろうな。尊敬するよ––––新海3尉」


 基地攻撃隊の米艦載機が発艦。

 その10分後に、海自の空母『かが』からF-35B戦闘機が4機飛び立った。


 目標は、デュアルバンドレーダー搭載の超新鋭早期警戒機だ。

明日、6/1に漫画版最新話更新です!!

お見逃しなく!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
曽祖父か高祖父世代の親族が、旧日本海軍の少将だったりしそうだなあ>山口海将補 と思ったら、やっぱり多聞さんを連想した人がいたか。
内心の緊張を押し殺して強者の振る舞いをする、静かだけど熱い描写で好きw
もし中華の船が来ても、爆弾でもいいから攻撃しに行くんだぞ 山口よ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ