第361話・VS防衛大のバグ世代
本日よりマンガ版連載スタートです!!
「おい!! 聞いてんのか! サッサと車から降りろ!!!」
そう叫んだレオニード中尉の背後では、コートの下に隠したAKS-74U短縮アサルトライフルを構えた兵士が数人。
いずれも、ロシア対外情報庁の特殊部隊所属。
腕前で言うなら、一線級の兵士たちだ。
特戦から逃げて消耗しているとはいえ、並みの兵士で敵う存在ではない。
……が、錠前はなんの焦りもなく振り向く。
「……どうする? 雄二」
そう尋ねた錠前に、真島は顔をしかめながら答えた。
「この車も税金で買ってるんだ、壊されたら困る」
「じゃあ降りるしか無いねー」
全員が素直にバンから降車。
周囲の騒ぎが酷いため、警察も気づいている様子はない。
「勉、伏兵を含めて数はわかるか?」
「んー……」
僅か1秒。
魔眼を周囲になぞらせ終わり、軽く一言。
「伏兵なんて贅沢なもん、持ってないってさ」
「そうか、なら話は早いな」
一歩前に出た真島が、首をゴキゴキと鳴らす。
「俺は腹を空かした子供たちにラーメンを食わせなきゃならん、悪いが車はやれん。勉」
「はいよー」
錠前が足裏を軽く叩くと、彼を中心として半径100メートルの魔法結界が展開された。
世界から隔離され、途端に静かとなった結界内で……ロシア兵たちは困惑を隠せない。
そして、そんな隙を晒して無事で済むほど––––この3人は甘くなかった。
「美咲」
「りょーかい」
錠前を追い抜いた真島と秋山は、背後でAKを構えていたロシア兵へ一瞬で肉薄。
「えっ……?」
スピンを加えて加速した秋山が、持っていた果物ナイフで兵士2人の腕を切断した。
堅牢な骨から筋肉まで滑らかに斬れる光景は、まるで熱したバターのよう。
切れ味不十分な武器でこんな芸当ができるのは、まさしく天性の才能と言う他無い。
痛みで悲鳴が上がる前に、秋山は両腕を無くした敵の首をまとめて斬り裂く。
「やるじゃねえか」
ほぼ同時に、真島もAK持ちへ攻撃。
常人では捉えられない速度のラッシュを叩き込み、2人のロシア人兵士をあっという間に撲殺してしまう。
2人が殺害までに掛けた時間は、たった3秒。
傍で見ていた氷見とレオニード中尉からすれば、まばたきする間と言って良い。
まさに瞬殺だった。
「へっ……?」
「なっ……」
思わず固まってしまう2人。
完全武装した特殊部隊が、なんの抵抗もできずに秒殺された。
氷見もレオニードも、通常の視点で見ればエリートの部類。
しかし––––
「あと1人どうすんの? 真島くん」
「勉が決めるだろ、殺すか生かすかは知らんが」
こいつらは違う。
常軌を逸しているどころではない、何もかもが……。
「僕も”この後”デカいのが控えてるんでね、悪いけど……魔力抜きでやらせてもらうね」
規格外……!!
眼前で微笑む最強の自衛官に、レオニードは半ば恐慌状態で拳銃を向けようとして。
「ほい」
「ッ!?」
発砲できなかった。
銃口を向けた瞬間、イスラエル式の格闘術によって拳銃を奪われたのだ。
一見高速で握手したように見えたその後、拳銃は錠前が握っていた。
「近接戦で腕を伸ばすのは御法度だよ? お勉強が足らなかったか」
後悔する暇すら与えず、錠前はトリガーを引いた。
渇いた銃声の後、最後の一兵であったレオニードはアッサリ殺害される。
マガジンとチャンバーを確認しながら、錠前が呟く。
「ロシアの練度も落ちたね、僕らが学生時代に戦った奴らの方が10倍強かった」
過去の楽しかった思い出に触れつつ、残りのロシア兵へ素早く死体撃ち。
結界内には、4人だけが残った。
「はっ……、はわ……」
あまりにも一方的。
戦闘とも言えない殺戮が目の前で展開された氷見は、絶対に超えられない”向こう側”を見せられていた。
これが現代最強、そしてそいつと同じ時を過ごした防衛大のバグ……。
「ごめんねー氷見さん、怪我は無い?」
「ひっ!!」
いつの間にか近づいていた秋山に、ビクリと氷見が肩を震わせた。
「勉、結界内の死体はどうなるんだ?」
身元の証拠品を押収しながら、真島が質問する。
「あー、仕様的に消滅かな。まぁ雄二が持ってる証拠品は消えないから安心しなよ」
「そうか、じゃあサッサと解いてくれ。子供を待たせてる」
「はいはい、いつからそんなに子供好きになったんだか」
現実での経過時間は0.2秒。
この際、錠前は周囲の監視カメラも全て故障させていたので、レオニード中尉たちが死んだことは誰も気が付かなかった。
マンガボックスアプリにて無料で読めるので、是非……何卒よろしくお願い申し上げます!!!




