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第34話・死亡フラグ、遺言クラッシャー

日間ローファンタジーランキング6位!ありがとうございます!!

まさか自衛隊モノでここまで行けるとは思ってませんでした。

引き続き「感想」、「レビュー」お待ちしています!!

 

 大量の空薬莢が床を転がる。

 絶えず続く発砲音と同期して、モザイク連中が四散した。


 高倍率スコープのおかげで、遠距離から正確に狙えるのが救いだった。

 ラビリンス・タワー内に残されたこの隊員は、命を賭けた足止めを行っていたのである。


「いってぇなァ……、クソっ」


 熱線で射抜かれた右足から、ドクドクと血が溢れ出ている。

 だが痛みはなく、どこか熱いだけだった。

 おそらく、アドレナリンの過剰分泌で痛覚が麻痺しているのだろう。


「人生最期の瞬間だ、せっかくなら––––あの人らの真似でもしてみるか」


 先輩に貰った手榴弾を投擲し、モザイク幽霊共を粉砕した。

 再集合までは時間が掛かるだろう。

 隊員は自分のスマホを取り出すと、それが4G回線で繋がっていることを確認。


 動画配信サイトにアクセスして、“配信ボタン”を押した。


「見る専のアカウントだったんだが、これで親族には最期のさいごまで戦った記録が残せる……!」


 タイトルは適当に『ダンジョン内で奮戦中、遺族向け』とだけ無機質に付けた。

 登録者がいないアカウントだったが、“ダンジョン”という単語がサーチに引っかかったのだろう。


 数人の視聴者がやって来た。


【どういう状況!!?】

【民間のハンターじゃないよね? タイトルが物騒過ぎるんだが】

【状況解説求む】


 いくつか付くコメント欄。

 書き込めないよう設定しようにも、時間がそれを許さない。

 どうせ死ぬのだからと、彼は残り少ないマガジンを装填しながら答えた。


「新エリア攻略中に孤立、ッ……! はぁっ、絶賛本隊到着まで時間稼ぎ中っ」


 20式ライフルを発砲する。

 いかに新型のJ3弾薬だろうと、相手が霧散するだけならば何の意味も無い。


 ただひたすら、無我夢中でトリガーを引き続けた。

 助けが来ないのはわかっている、入り口からここまで徒歩で時間内に辿り着けるわけないからだ。


【なんで死ぬ前提なんだよ!! 銃撃ちながら逃げろよ!!】

【民間のハンターじゃなく陸自!? 例の配信チームとは違うよね?】

【なんかさっき一瞬映った足、血まみれだったんだけど……】


「俺も逃げれるならそうしたいよ、でも足をやられた……敵の熱線でバイクもイカれてる。最悪だ……、ようやく結婚できたってのに」


【死亡フラグ立てんな! 奥さんのためにも絶対生き残れ!!】

【ヤバい配信見つけちゃったんだけど……、えっ、どうすんのこれ】

【よりによって結婚したてかよ……、これ以上見てられん。落ちたい】


「いやホント、新婚旅行の日程もようやく決まったばかりだったんだけどさ。……、嫁と“生まれてくる子供”に申し訳ねぇよ」


【生きろ!! 諦めんな!!!】

【誰か近くにいないのか!? 他の部隊は? 絶対死んじゃダメな人だよ!!】

【見てて涙出て来た、銃弾効かないとか最悪過ぎる敵だろ】


 マガジン内の弾を撃ち切る。

 見れば、足元には数えるのも面倒くさい数の“空になったマガジン”が落ちていた。


「…………」


 息を吸い、残った最後のマガジンを銃に差し込む。

 ボルトを前進させ、ラスト30発の狙いを定めた。


「ちょうど良いや、これ撃ち切ったら多分死ぬからさ……君たち俺の親族に向けてちゃんと証言しといてよ。俺は最期まで戦ったって、日本の自衛官として生きたって」


 トリガーを引くごとに、命の尽きるカウントダウンが縮まる。

 だが躊躇などできない、連続で発砲を続けた。


「生まれてくる子供の顔くらいは見たかったけど、それは贅沢か……」


【贅沢じゃない!! 当然の権利だぞ!】

【もうダメ落ちる、人の死ぬ瞬間とか見れん】

【頼むから逃げてくれ】


 コメント欄が流れるよりも早く、最後の弾丸が発射された。

 弾頭はモザイクを突き抜け、奥の壁に命中する。


 もうこの最新小銃は、トリガーを引いてもバネの感触しかしない鈍器と化した。

 彼は銃を丁寧に置くと、バイクにもたれ掛かった。


「良い人生だった、遺族年金とかって出るかな……? たくさん出れば良いんだけど」


【お前が稼ぐんだよ!!】というコメントで溢れる。

 だがもう全ては終わったのだ、射撃の無くなった隊員へ向け––––モザイク達は一斉に魔法陣を広げた。


 死の痛みを覚悟し、歯を食いしばった瞬間––––


 ––––ダンダンダンダンダンダンッ––––!!!!!


「ッ!?」


 飛翔して来た7.62ミリ弾が、モザイクたちを撃ち抜いた。

 ふと反対側を見た彼の目に、あり得ない“救済”が映った。


「良い狙撃だ坂本!! そのまま制圧しろ!! 四条と久里浜も続け!! 絶対に熱線を撃たせるなッ!!」


「「「了解!!!」


 4人の自衛官が、銃声を轟かせながら現れたのだ。

 しかも徒歩ではない。

 サイドミラーをへし折って、無理矢理狭い通路を通れるようにした高機動車に乗っていた。


 端的に言ってイカれている。

 そんな色々ぶっ飛んだ高機動車は、隊員の目の前で急停車した。


「……小学生以来の射的は楽しかったですか?」


 車上から降車してきた新海透3尉に、隊員は思わず笑顔を見せた。


「アンタ達という最高の景品が来たんだ、十分楽しかったよ。あえて文句を言うなら……俺のカッコつけた遺言は全部無駄になりそうだ」


 透は急ぎ、負傷した隊員の手当てを開始した。

 ––––第1特務小隊、戦闘開始。


第34話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


と思った方はブックマークや感想、そして↓↓↓にある『⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎』を是非『★★★★★』にしてください!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 洋画みのある台詞にニヤけてしまう。こういう台詞一度言ってみたいよね。こんな場面には遭遇したくないけど。
[一言] 職場てコッソリ読んで泣いてしもうた
[一言] 1本だけなら死亡フラグ。乱立させれば生存フラグ!
感想一覧
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