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第322話・ユグドラシル駐屯地防衛戦12

祝・5万ポイント突破ありがとうございます!!

まさかこんな大台に乗るとは、最初全く思ってませんでした

 

 突然現れた執行者テオドールに、エンデュミオンは混乱した。

 通常、封域は外側からの侵入者を絶対に許さない。


 それは沖縄や新宿、渋谷で展開された魔法結界と同じだ。

 しかし、この2人は”血”という魂で深く繋がった存在。

 たとえ片方が封域内であろうと、魔力を辿ることが可能なのだ。


 テオドールの右手が、エンデュミオンの顔に突き付けられた。


「久しぶりです元マスター、死んでください」


 普段は温厚な彼女だが、空腹の恨みは恐ろしかった。


 全身全霊のショックカノンが放たれる。

 至近距離から放たれたそれは、不意打ちも合わさって完璧に決まったと思った。

 だが……。


「やるじゃないか」


「ッ!!」


 エンデュミオンは直前に封域効果を発動。

 防御魔法の優先順位を繰り上げし、さらに効果を底上げするための代償として、左腕を犠牲にした。

 結果として、近距離ショックカノンを凌いだのだ。


「ごめんお姉ちゃん! しくじった!!」


「構わないわ!!」


 血まみれの身体に鞭を打ち接近。


「余裕無くなってるんじゃない!!?」


「ぐぅっ!!」


 間髪入れずに、ベルセリオンが肘打ちを混ぜた打撃をお見舞いした。

 左腕を身代わりにする……そんな芸当をしなければならないくらいには、追い詰められている証拠だ。

 このまま押し切る!!!


「お姉ちゃん! 治して!!」


 反対側で拳を振るうテオドールが叫んだ。

 いくら封域バフが掛かってるとはいえ、片腕のみでさばけるほど、覚醒した執行者は弱くない。


「サンキュー!」


 一歩引いたベルセリオンが、治癒魔法により一気に全身の傷を回復させた。


「やっぱり……」


 傷を治したベルセリオンは確信する。

 もしヤツが今も無傷であれば、封域効果を使って彼女の治癒魔法より先に、自分の攻撃を叩き込んだはずだ。

 しかし、なんの邪魔も入ることなく全快まで持っていけた。


 これはつまり––––


「封域で最優先する魔法は、重複(ちょうふく)できないわね?」


「チッ!」


 彼女の糖分に満ちた頭は、次々と封域の特性を見抜いた。


 今エンデュミオンは、防御魔法の優先順位をトップにしている。

 封域内で攻撃に回せるほどの余裕が、腕を無くしたことで失われているのだ。

 もちろん、治癒魔法の発動など論外。


 それでも、前線からベルセリオンが一歩でも引いたことで隙が生じる。


「しまっ……!!」


 テオドールの攻撃を、バク転でかわす。

 こちらが治癒魔法を運用したほんの一瞬を突かれたのだ。

 すかさずベルセリオンが動く。


「ハルバード!!!」


 落ちていた自身の宝具を引き寄せ、思い切り振りかぶった。


「『空裂破断』!!!!」


 その一撃は凄まじかった。

 固い地面が大きく2つに割れ、衝撃波が周囲の家屋をバラバラに吹っ飛ばす。

 全力の範囲攻撃に続いて、治癒の暇を与えないようテオドールも動いた。


「『ショックカノン』!!!」


 魔法戦の極地とも言える戦闘が繰り広げられる。

 乱れ飛ぶ魔力ビームと衝撃波の中を、エンデュミオンは封域の効果と自身の転生チートで得た身体能力を使い、必死にかわす。


 旋風と瓦礫、膨大なエネルギーの中。

 エンデュミオンは刹那の思考を行っていた。


 ––––ガキ共がここまで強くなっていたとは、次の封域効果……選択をミスれば俺は死ぬな。


 先手扱いできる魔法は1つのみ。

 現在は嵐のような攻撃を、防御魔法に集中することで耐えれている。

 だがこのままではジリ貧で負けてしまうだろう。


 守りか攻めか、エンデュミオンは即座に決断した。


「この俺をここまで追い詰めたのは、評価してやる」


 選んだのは攻撃。

 防御を瞬間的に放棄する代わりに、『ショックカノン』の優先順位を変更。

 ビームをかわし、テオドールの腹部へ炎を纏った拳を叩きつけた。


「ゲボッ……!」


 封域効果で120%の威力を持ったそれは、テオドールの内臓を簡単に潰す。

 吐き出された血が腕にかかり、相手が脱力したのを確認してから手を引き抜こうとするが……


「錠前のマジパンチに比べれば、全然大したことないですね……!!」


「ッ!!?」


 眼前の少女が、口から血を流しながら不敵に笑う。


 同時に、エンデュミオンの腕はガッチリと掴まれた。

 岩に固定されたかのような感触で、全く抜け出せない。


「ッ……! 貴様ッ!!」


「残念ですが逃しません」


 そして、封域の効果は未だに『ショックカノン』の優先順位に固定されていた。

 魔力を右手に込めたベルセリオンが高速で回り込み、敵の側面で大きく腕を振りかぶる。

 

 ––––出力最大––––


「死ね、ロクでなし」


「しまっ……!!」


 ––––バギィッッッッッッ––––!!!!


 全力の右ストレートが、エンデュミオンの頬をもう一度砕いた。

 水色の魔力が衝突し、バチバチと同色の閃光が激しく走る。

 保有する全ての魔力を込めた、最大出力の一撃……いくら転生チートの肉体といえど、容易に耐えられるものではなかった。


 ––––封域展開から640秒後、エンデュミオンの魔導封域は完全に崩壊した。


 同時に、執行者2人も戦闘不能となる。

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― 新着の感想 ―
敗因は糖分だったか。
彼女の糖分に満ちた頭は… すなわちスイーツ女子!(確信w)
>彼女の糖分に満ちた頭は、次々と封域の特性を見抜いた。 言いたいことはわかるが、なんか体に悪そう^^;
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