表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
321/454

第321話・ユグドラシル駐屯地防衛戦11

 

 ベルセリオンとエンデュミオンは、一定の距離を保ちながら睨み合っていた。

 それは、両者共に相手の出方がわからなかったからだ。


 ––––エンデュミオン……。アイツの下で働いてた頃の機密情報は、エリカの眷属になった時点で消されている。転生者でかつ……天界からチート能力を授かっているのは知ってるけど、それが一体なんの能力なのかはわからない。


「……」


 ––––今判明しているのはモンスターを召喚する力と、失った両腕を軽く再生するだけの治癒魔法に魔力出力。

 加えて錠前勉の話だと、魔法の極地……暁天一閃(ぎょうてんいっせん)も習得していると言っていた。

 属性魔法は基本的に1人1つが原則だけど、わたしみたいな執行者だと2個まで持てる。


「うーん……」


 ––––さらに転生チートを持っているエンデュミオンが、封印魔法しか使えないはずは無い。

 2つ目……最悪は3つ目の属性を持っていると考えるのが妥当かしら……。


 一方で、思考を巡らせているのはエンデュミオンも同じだった。


 ––––今の一撃でヤツの魔力出力はわかったが、そうなれば問題なのが属性魔法の精度だ。

 サリエルの話では、ヤツが俺の記憶に無い魔法……魔法戦の極地である暁天一閃を用いていたと言う。

 最初は勘違いか間違いだろうと思ったが、こうして正対すれば嘘ではないのがわかったな。


「ふむ……」


 ––––ここまでの出力を維持できるとなると、精度や効率も格段に上がっていると見て良い。

 覚醒した執行者の上限値がエクシリア並みと仮定しても、より出力の高い大技を隠し持っている可能性が高いな。


 数秒が経ち、両者は結論を出した。


「めんどくさ……」


「面倒だな……」


 両者共に拮抗。

 互いが警戒するあまり、互いが互いの出方を窺う形になってしまった。

 こうなってしまえば、搦め手の類は意味をなさない。


 っとなれば––––


「クック、互いの能力が測れない状況で仕掛けないということは……これ以上手札が無いという意味になるぞ?」


 エンデュミオンの体から、さらに魔力が噴き出した。


「知っているか? 結界術はなにも現実世界と隔離するためだけに使うのではない」


 人差し指と中指が立てられる。


「現実では到底実現できない……己の能力を120%発揮できる領域の構築。見せてやろう、魔法戦のもう1つの極地––––“戦闘用の結界術”をな」


 巨大な魔力を感知したベルセリオンが、魔法の発動前に叩こうと突っ込む。

 それでも、エンデュミオンの方が一歩早かった。


「『魔導封域』」


 彼を中心として、結界が展開された。

 飲み込まれたベルセリオンは、走りながら身体の異常を確認。


 ––––干渉された形跡は無し。何かしてくる前に潰す!!


「”八界(はっかい)“ ”悠遠(ゆうえん)“ ”空蝉(うつせみ)(かげ)“––––」


 魔法の詠唱を行い、威力を一気に底上げしてからハルバードを振るう。

 しかし、彼女の攻撃は敵に当たらなかった。


「いっつ…………ッ!!?」


 ベルセリオンの魔法発動よりも早く、炎の塊が彼女の横っ腹を殴りつけた。

 すぐさま距離を取り、脇腹を押さえる。


「ケホッ……」


 口端から流れた唾液を拭い、思考を巡らす。


 ––––おかしい……! 詠唱も魔法発動もわたしが早かったはずなのに。まるで––––


「後出しジャンケン……とでも言いたそうだな?」


「っ……」


「ウブなお前に教えてやろう、『魔導封域』内では魔法発動の優先順位が変わるのだ」


 頭の中で、さっき受けた攻撃が蘇る。


「つまり、わたしがどんなに早く魔法を発動したとしても……因果が逆転して、アンタの攻撃が先に当たるわけね」


「そういうわけだ、加えて––––」


 エンデュミオンの姿が眼前から消えた。

 視界を左右に振るが、声は後ろから掛けられた。


「封域内では俺のステータスも大幅に上がる」


「ぐはっ!!」


 背中を思い切り蹴られたベルセリオンは、家屋に激突した。

 崩落した壁と一緒に地面へ落ちた彼女は、激痛に襲われながらも立ち上がろうとして––––


「無駄だ」


「ッ……!!!?」


 ベルセリオンを中心とする半径10メートルに、数十トンの重さを伴った衝撃が叩きつけられた。

 封域効果により、完全詠唱状態の重力魔法が、無詠唱で直撃したのだ。

 クレーターの中心で、全身を血まみれにしたベルセリオンが倒れている。


「せめて結界術の基礎でも学んでから挑めば、こんな結果にはならなかっただろう」


 踵を返したエンデュミオンは、ふとある事に気が付いた。

 さっき蹴り飛ばした衝撃で手放したハルバードが、消えていなかったのだ。


「宝具がまだある……? まさ––––」


 間一髪のガードだった。

 血だらけで走り込んで来たベルセリオンが、背後から重い蹴りを放ってきたのだ。


 ––––くたばっとけよ……!!


 ––––くたばんないわよ……!!


 これほどダメージを受けているにも関わらず、威力が殆ど落ちていない。

 その事実を受け、エンデュミオンに数瞬の緊張が走る。


「だが、無駄な足掻きだ」


 彼女の頭上に魔法陣が発生する。

 何度立ち上がってこようと、封域効果で魔法は先手必中。

 もう一度、今度こそ地面の染みにしようとして……。


「さぁ、どうかしらね?」


 信じられないことが起こった。

 エンデュミオンの背後に空間の亀裂が走り、中から銀髪の少女が出てきたのだ。


「ッ……!!!!」


「なにもわたしは、最初からタイマンなんてする気無いのよ」


 封域を割って入り込んで来たのは、血の繋がった姉の気配を辿り転移してきた––––

 ”執行者テオドール”だった。


 その右手には、100%まで充填された『ショックカノン』が握られている。

自称“宇宙戦艦の主砲”系女子、参戦!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
姉妹の絆イイゾー! よっしゃ!卑怯技ばかり使うゆうたデュミオンはネギトロだぁぁ!
おお!ほぇふぇ姉妹共闘!!
近接のふえ、大艦巨砲主義ほえ、二人でランページ・ゴーストだ!(スパ□ボ風
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ