第316話・ユグドラシル駐屯地防衛戦⑥
敵が現れた。
1ブロック先の大通りに、全身を光り輝く鉱石で覆った巨大なドラゴンが見えたのだ。
「迷宮区、甲種害獣。ダイヤモンド地竜だ。報告では90式戦車の120ミリHEAT弾が、遠距離とはいえ弾かれたらしい」
「わたし、その現場見てました。アレ……歩兵で仕留められるんですかね」
久里浜の疑問に、透は脳内で相手の装甲強度を予想しながら返した。
「01式とLAM(対戦車無反動砲)なら、有効範囲で普通にいけるだろう。久里浜! 四条たちがポイントB1へ着くのを待たずに攻撃を開始する。この距離なら01式を使え!」
「了解!!」
第3世代MBTである90式の汎用弾が効かないとなれば、やはり至近距離から対戦車弾をお見舞いするしかない。
もしくは、装甲が薄い頭部にピンポイントでミサイルを叩き込むまで。
「よいっしょ」
久里浜が担ぎながら車上のターレットに出て、01式対戦車誘導弾を構えた。
これは米国のジャベリン対戦車ミサイルと同じスペックの物で、公表通りなら第3世代MBTにも通じる強力なミサイルだ。
遮蔽物から出てきたLAVにダイヤモンド地竜が気づくが、もう遅い。
「ロック完了!!」
「撃てッ!!」
引き金がひかれる。
発射された01式誘導弾は、ロケットブースターで一気に加速。
トップアタックと呼ばれる、目標の上面からハンマーで叩くような方式で着弾。
「ガァァアア!??」
顎から上を吹っ飛ばされたダイヤモンド地竜が、その場で結晶に変わった。
爆音が轟き、着弾点を中心としてガラスが砕け散った。
【うおおおお!! さすが対戦車ミサイル!!】
【一撃かよ】
【でももしこれが中世の武器で戦えって言われたら、相当キツイよな】
【ダンジョンさん、来た世界が悪すぎたね】
盛り上がるコメント欄。
だがこれで終わりではない、透たちに気づいた他の個体が突っ込んで来たのだ。
その速度はゆうに80キロに達しており、数瞬の内に肉薄されるだろう。
「あわわ! 隊長! こっち走ってきてます!!」
タレット上で叫ぶ久里浜。
しかし、無線から四条の声が響いた。
『こちら2号車、攻撃開始します』
直後だった。
曲がり角に潜んでいたLAVから、110ミリ個人携行対戦車弾が放たれたのだ。
超至近距離で炸裂したそれは、ダイヤモンド地竜の側面を呆気なく貫通した。
横っ腹を盛大に殴られたダイヤモンド地竜は、傍にあった建物に突っ込んだ後……大量の結晶へ変わる。
「ナイスだ坂本、よく当てた」
透の声に、LAMを撃った坂本が無線で返す。
『図体がデカいので楽なもんです、ドンドン行きましょう』
他の場所からも、同様に爆発音が聞こえてくる。
遅滞戦術は有効に機能していた。
軽装甲車を用いて、大量の対戦車兵器を運用するこれは、ウクライナ東部戦線で行われた手法そのものだ。
数で圧倒的に勝る露軍に対し、ウクライナ軍は1人で何発ものミサイルやロケットランチャーを担いだ。
結果として、1人で戦車部隊を葬る兵士まで現れるほど。
「噴水広場の奥に敵!!」
「ロック完了!!」
「よし、撃て!!」
特に01式対戦車誘導弾の効果はとてつもなく、安全圏から確実にダイヤモンド地竜を葬っていた。
自走203ミリ榴弾砲の到着まで、、あと15分。
このまま持ちこたえられるかと思った矢先だった。
「出たな……」
建物に巻き付きながら出てきたのは、漆黒の巨体をしならせた蛇の化け物。
『ウロボロス』だった。
「隊長、どうしますか?」
久里浜の問いに、透はすぐさま答える。
「距離がある、さっきまでと同様––––01式でロングレンジから粉砕するぞ」
「了解、ロック……完了!」
「撃て!!」
ロケットを噴射しながら、01式は飛翔。
相手の真上から、弾頭が突っ込む。
「なっ!?」
だが、01式は当たらなかった。
直後に上を向いたウロボロスが、口から”熱線”を吐いて撃墜したのだ。
他の部隊も01式により飽和攻撃を仕掛けるが、そのことごとくが撃ち落とされる。
やはり見立て通り、アノマリーには遠いが……それに近い能力を持っている。
どうする、ベルセリオンを呼ぶか……そう思った時。
『全歩兵部隊に告ぐ!! ただちに後退されよ!!』
直後に、ウロボロスの身体に105ミリHEAT弾が命中。
爆炎を発生させた。
敵の身体が一部吹っ飛び、悲鳴が上がる。
『騎兵隊の到着だ!!』
角から現れたのは、陸上自衛隊の主力機甲車両。
”16式機動戦闘車”だった。
『悪いが美味しいところは我々が頂く、財務省の愚かな戦車不要論者に––––最高の映像と戦果を見せつけるんでね!!』
なんか「いいね」機能が改修されて、「リアクション」に変わったようです。
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