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第314話・ユグドラシル駐屯地防衛戦④

 

 ベルセリオンのギアが上がってからしばらくして、その報告は入ってきた。


『敵軍団の一部が突出!! 間もなく第2防衛ラインに接触します!』


 それまで鈍重だった敵が、いきなり一部の部隊を最前線に突っ込ませてきたのだ。

 すぐさま上空のUAVが、敵モンスターの詳細を確認する。


「また……厄介だな」


 タブレットを見た機甲部隊を率いる中隊長が、苦々しく呟いた。

 市街地区画に侵入したのは、正面装甲が第3世代MBTに近いダイヤモンド地竜。

 そして、それよりさらに邪悪さを増したような漆黒の細長いモンスターだった。


「“ウロボロス”だったか? 蛇をファンタジーのラスボスっぽく魔改造したような外観だな……。どう見る? 新海3尉」


 隊長は、同じくテント内にいた透へ意見を求めた。

 ダンジョン攻略の最前線で活躍し、日本をV字復活させた英雄に視線が集まる。


「能力は不明ですが、個人的に外観が少し気になりますね……」


「地球じゃお目に掛かれない外観というのはわかるが、君の目にはどう映っている?」


「自分は第2エリア攻略戦で、『ラビリンスタワー』と呼ばれる塔の攻略を担当しました。今仲間として活躍してくれている、テオドールを捕まえた場所って言えば通じますかね?」


「知ってるよ、高機動車のミラーを吹っ飛ばして突っ込んだんだってな。聞いた時は思わず噴き出したよ」


 テント内に少しの笑いが起きるが、それもすぐに収まる。

 みんな、透の次の言葉が気になったからだ。


「あの塔の中に、ちょうどあんな外観の蛇を模した模様がたくさんあったんです。当時はあまり気にしていませんでしたが、今日ウロボロスを見て気づきました」


 ラビリンスタワーの内部には、壁画とも言うべき模様が多数存在した。

 通常、壁画というのは神聖な存在や王を記したりするもの。

 であれば、あの蛇との相関関係が疑われた。


「つまり……、あの蛇は他の有象無象と違う可能性があると、新海3尉は思ってるわけか?」


「仲間になった執行者いわく、ダンジョンというのは侵略した世界を切り取って吸収するそうです。おそらくここも、第2エリアも……元は別の世界の国家なり地域だったのでしょう」


「じゃあ答えは見えてくるな」


 敵集団が、第3防衛ラインまで10キロを切った旨が報告される。


「あの蛇は、第2エリアがあった世界で信仰されていた……一種の土地神みたいな存在ってことだ。おそらく、戦闘能力も他のモンスターより遥かに高い」


「えぇ、情報が少ない中……交戦は避けたいですが……」


「そうも言ってられんだろうな、ここが突破されれば日本に通じるダンジョンゲートまですぐだ。東京湾に潜られたらとんでもなく厄介なことになる。だから––––絶対にここで止めるぞ」


 方針が決まった。

 透たち第1特務小隊と、第1戦闘団機甲中隊は市街地エリアでの防衛を担当。

 まだ敵にワイバーンが100体以上残っているので、航空支援は期待できない。


 しかし自走203ミリ榴弾砲があと少しで展開できるらしく、それの攻撃が開始されれば、いくら土地神のような存在でも容易に粉砕できる。


 機動戦力として、市街地でも運用可能な10式戦車と16式機動戦闘車が正面へ。

 支援として、第1特務小隊と何個かの対戦車小隊が展開を開始した。


「ベルセリオン、やる気が出てるところ申し訳ないが、まだ前線には出ないでくれ」


「ふえ? なんで?」


 LAVに乗り込もうとした彼女を、透が止めた。


「お前には、もし敵がさらに奥の手を使ってきた際の切り札として残ってもらいたい」


「ふーん、アレが陽動という根拠があるわけ?」


「悪いが無い、敢えて言うなら”直感”だ」


 ニッと笑う透に、ベルセリオンは––––


「了解、ヤバくなったらエリカを通してテレパシーで連絡して。すぐに駆け付けるわ」


「サンキュー、助かるよ」


 小銃を担いでLAVに向かうと、坂本と久里浜が荷物の搬入を進めていた。

 そこには、大量の『01式対戦車誘導弾』と、『110ミリ個人携行対戦車弾』が並べられていた。

 車上のターレットから撃てるようにするため、今回LAVに機関銃は搭載されていない。


「これ全部持っていくんっすか? 露軍の戦車大隊と戦える弾数ですけど」


「ウクライナ陸軍の真似事になるが、重装甲の敵がたくさん来るならこれがベストなんだよ」


 作戦としては、機甲部隊が正面で敵重戦力を迎撃。

 支援として、透たち第1特務小隊はLAV2両を用いて機動防御戦術を展開。

 市街地の遮蔽で、ゲリラ戦を行う腹だ。


「1号車に俺と久里浜が乗車、2号車には四条と坂本が乗れ。四条、久しぶりだろうが運転はできるな?」


「問題ありませんよ、荒地だろうと絶対付いて行って見せます」


「オッケーだ、それじゃあ––––」


 透が業務用兼、配信用のスマホを四条に投げた。


配信(おしごと)開始だ」


 各々の銃がコッキングされる。


 全員の目が、今までの温厚なそれから……自衛官特有の鋭い戦闘マシーンのようなものへ変わった。

 配信画面が表示され、同接数は一瞬で数千万に。


 相手に地球人が混じっていた場合、インターネットを用いた配信にはリスクがある。

 それでも透たちがカメラを起動したのは、自衛隊として……絶対に負けない自信があったからだ。


 ––––203ミリ榴弾砲大隊到着まで、あと30分。

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― 新着の感想 ―
さー、ド派手にかましてくれぃ!
相手の指揮官がどこまで策を練ってるか分からないからこそ、適宜潰していかねば。
くっ、天界の残念配信が頭をよぎる。最高の配信で嫌な記憶を消してほしい!
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