第31話・突入開始
榴弾砲の攻撃後は、機甲部隊によるトドメが行われた。
残存していた地竜は、203ミリ榴弾砲による砲撃で既に満身創痍であった。
10両ちょっとの機甲戦力が掃討するのに、30分も掛からない。
タワー防衛にあたっていた敵は、これにて全部倒したことになる。
「久里浜、ちゃんと録画ボタン押してただろうな?」
小型カメラをヘルメットに付けながら、坂本が聞く。
それに対し、彼女も同じ動きをしながら答えた。
「当然じゃない、わたしはアンタみたいなのと違うから。キッチリ録画してるわよ」
「なら良い、ほら––––おいでなすったぞ」
坂本が指差した方向から数台のLAVが走ってくる。
1分も経たない内に2人の前で停車し、複数の陸上自衛官が小銃を持って現れた。
「よっ、坂本に久里浜。ちゃんと撮れ高はあったんだろうな?」
「お2人の映像が肝なんですから、期待していますよ?」
出て来たのは、配信チームの小隊長である透と副隊長の四条。
彼らを含めて30人余りが降車した。
「お疲れ様です隊長、四条2曹。このチビ茶髪がうざかった以外は全く問題ありませんでしたよ」
ニッコリと微笑む坂本へ、久里浜が横から蹴りを入れる。
どうやら、お互いに上手くやったらしいと透は解釈した。
「じゃあ大丈夫だな、ご苦労だった」
戦車部隊が周囲に展開し、ラビリンス・タワーを囲むように配置される。
坂本は、1つ疑問に思っていたことを口にした。
「隊長、今回はこの人数で攻略するんですか?」
自分たちから少し離れた場所で、20式小銃を持った自衛官たちが30人ほどいた。
その中から、1人の中年の男がやってくる。
「中即連の中本1尉だ、よろしく頼むよ」
剛健な肩を持った彼は、ガッチリと坂本を含めた全員と握手する。
透が横に付き、詳細を説明した。
「彼らは中央即応連隊の人だ、この方たちと一緒に今回はタワーを攻略していく」
中央即応連隊とは、いわゆる遊撃的な便利屋部隊であった。
レンジャーや空挺資格持ちではないにしろ、海外派遣や有事における即応性を求めた精鋭である。
有名な逸話を出すとするなら、“日本一弾薬を消費する部隊”というものがある。
もちろんこれは特戦を除いての話だが、それでも通常部隊としては高い練度を誇っていた。
「心強いわね、よろしくお願いします」
敬礼する久里浜に、中本も敬礼で返す。
しばらくして、さらに追加の部隊が到着した。
偵察用オートバイに乗った隊員2名と、1トン半救急車だ。
透は銃にマガジンを差し込みながら続けた。
「まずオートバイ部隊が先行して侵入、その後に俺たちが突入。もし負傷者が出たらそこの救急車まで運ぶって流れだ」
見れば補給用の車両や、追加の救急車が続々とやってくる。
味方がいかに、自分たちをしっかりサポートしてくれるか……身をもって実感できた。
戦場でロクに救援もしないロシア軍とは、まるで天と地の差だった。
「このようにバックアップもたくさんあります、陣地はこれから構築するので……最悪難しそうならトライアル&エラーを繰り返して、安全に進めましょう」
敵からすれば、ここまで補給が整った部隊を相手にするのは地獄だろうと思う。
それぞれがライフルのコッキングレバーを引き、初弾を薬室へ送り込んだ。
これで、この武器は指先1つで絶大な威力を発揮できる。
「オートバイ部隊、突入せよ!!」
2両のバイクが、エンジン音を立てながら先行してタワー内へ入って行った。
突入部隊36名、フル装備の自衛官に……果たしてこのタワーはどんな抵抗を見せるのか。
そして、願わくばここにダンジョンの制御室があることを、透は強く願った。
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