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第302話・陥落の執行者

 

【鳴いたああぁぁぁぁぁああああ!!!】


【待ってましたあああぁぁぁぁぁああああああ!!!】


【可愛いいいいいいいいいいいいい!!!!!!!】


【学校で噂になってたから見に来たけど、何この可愛い生き物たち】


 大盛り上がりを見せるコメント欄。

 一方で、もぐもぐとシュークリームを頬張ったテオドールは、非常に幸せそうな顔をしていた。

 満面の笑顔は、まさしく天使と言う他無い。


 つい最近、天使の襲撃を受けたばかりだが……。


「むふぅ……っ、お店のもすっごく美味しかったですけど、これは全然違います……ッ。一体どういう魔法ですか?」


 驚き倒す眷属に、透が早速説明した。


「何事も鮮度が大事ってことだ、それは焼き立てだからな……生地の食感からして多分違う。ましてや料理上手な人たちが作ったんだから当然だよ」


 冷蔵のシュークリームも、決して不味いわけではない。

 しかし窯焼きシュークリームという物もある以上、生地は焼け上がった直後の方が当然美味い。

 今彼女たちが食べている物は、サックリとしたクッキーのような食感を持つ。


 そこを通り過ぎれば、しっとりとした甘いクリームが待っているのだから……美味くないわけが無い。


「モグモグッ……。ふえぇ……っ」


 普段こそ凛々しい顔つきのベルセリオンだが、現在はとろんとろんに溶けていた。

 彼女はダンジョン勢力時代から甘い物が大好きだったので、こんな暴力的な甘味を口に入れてしまえば……妹同様に情けない鳴き声が出るのも必然であった。


【ほえふえ姉妹が見せる笑顔と鳴き声……、相変わらず素晴らしい】


【こんなに美味しそうにシュークリーム食べてる子、初めて見た】


【癒されるわぁ……】


【顔とろけてて草、良いぞ! もっと食わせろ!】


 3個ずつあった極上のシュークリームは、あっという間に食べ終わってしまった。

 だがこれっぽっちで執行者のお腹を、舌を満足させられるなどとは当然思っていない。

 2人の食べっぷりを見て本当に嬉しそうにした秋山が、カメラに映らないように次の品を持ってきた。


「なっ、なにこれぇ……!!」


 それはデザート大好きベルセリオンを興奮させるのに、十分なインパクトを持っていた。

 頂点にイチゴやクッキーを関し、その下にはまるでタワーのように何層ものアイスや果物が詰まった、女子なら絶対に興奮する食べ物。


 ”パフェ”が置かれたのだ。


【パフェきたああああああああ!!!】


【こんな綺麗なの手作りできるんだ!!】


【シェフは誰だ! シェフを出せ!!】


 滝のように流れるコメント欄。

 一方で、シュークリームを食べ終わったばかりにも関わらず……2人の執行者は溢れる唾液と、押し寄せる女子としての本能を抑えきれなかった。


「と、透……こんな豪華な物、わたしなんかが食べて良いのでしょうか?」


 ガクブルと震えるテオドールに、透は微笑んだ。


「あぁ、遠慮なく食え」


 2人の顔がパッと明るくなる。

 スプーンを持ち、まずは頂上のアイスクリームを食べて––––


「ほっ、ほえ……!!」


 全身がビリビリと痺れた。

 イチゴソースのほんのり掛かったそれは、滑らかな舌触りと酸味をもって執行者の口の中で暴れ倒す。


 隣でほえほえと震える妹を見て、ベルセリオンも恐る恐る……パクリと頬張った。


「ふえっ…………」


 こちらも秒で陥落。

 パフェという女子なら絶対に喜ぶデザートを前に、2人の執行者は無様な鳴き声を上げ続けた。


【無様可愛いよ2人共】


【普段は凛々しい子が、デザートで堕ちてる姿は眼福ですなぁ……】


 とっても幸せそうな顔でパフェを食べる2人を見て、透はひとまず労いが成功しつつあるのを感じた。

 そういえばと、自分は昼飯を食べていなかったと思い出す。


 どうしようかと思った矢先……。


「新海は飯食ってくれば? しばらくなら僕が引き継いどくよ」


 読心術でも持っているのかとツッコミたくなる上官が、腕を組みながら言った。


「すみません、ではちょっと離席します」


 足早に食堂を去った透は、基地内コンビニで油マシマシのチキンとおにぎりを買ってから、一旦自室に戻る。


「さって、パパッと食って仕事に戻るか」


 誰もいない部屋でチキンの袋を開けようとして––––


「新海透!」


「ッ!?」


 突然名前を呼ばれ、すぐさま臨戦態勢に入る。

 部屋を見渡すが誰もいない……、だが声はまたも聞こえて来た。


「こっちよ! 新海透」


「ん、んん〜……?」


 声のする方を見れば、そこには何かがいた。

 飲み終わったエナドリ缶……その横に、同じサイズの女の子が立っていたのだ。


「やっと気づいたわね、まぁ……こんな姿じゃ無理もないか」


 思わず目を丸くする。

 机の上に立っていたのは、アニメのちびキャラのごとく小さくなった……“執行者エクシリア”だった。

エクシリアたん

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― 新着の感想 ―
読み返し中 テオとミーナが食べ歩きした時も釜焼きシューでしたね。2個で450円 色んなものに言えるけど一度に大量に作れるものって単価を安くできるんだよね。特にこういう手間のかかる料理は…
インフルで封印してたら乗り遅れたー!!! ちくしょうめー!
もきゅもきゅ食べるよ、もきゅシリアさん爆誕かな……?
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