第297話・ダンジョン配信者
乾いた銃声が監督室に響いた。
薬莢の転がる音が、床に鳴り渡る。
SFP-9を構えた錠前は、ゆっくりと席を立った……。
「ほう」
血の噴き出る胸を押さえながら、監察官が呟く。
「……なんのつもりですか?」
「とぼけるなよ、その程度の変身……僕の“魔眼”が見抜けないわけないだろ。サッサと正体を見せな」
「……」
直後だった。
それまで一般的なアジア人男性だった見た目の監察官が、変貌した。
髪は黄金色に染まり、顔がより引き締まったものとなる。
「なんだ、バレてたのに付き合ってくれてたんですね」
冷たい声。
頭の上に現れたヘイローが、そいつの身分を明かしていた。
「茶番に付き合うのは配信者のお約束だろ?」
錠前の言葉に、男が振り向く。
「おっしゃる通り、思っていたより気が利く男じゃないか」
魔眼を向けた錠前が、ハッと笑いながら呟いた。
「なら……君も配信者ってわけか、そのメモ……紙じゃなくて“タブレット”だろ」
言われて観念したのか、男はメモだった物を錠前に見せる。
そこには、地球のタブレット端末と似たような画面が映っていた。
【ゲッ……! バレた!】
【なんでこっちの魔導具がわかったんだ?】
【地球にもダンジョン配信の文化があるんだ】
見慣れた光景だが、コメントを打ち込んでいるのは人間ではない……。
書き込んでいるのは。この世界と違う連中だ。
「名乗れよ、名無しで殺したんじゃ後が面倒だ」
拳銃を向けられながら……、男は傷を治癒魔法で再生しつつ答えた。
おそらく、撃たれる直前に心臓を横にずらしたのだろう。
器用なヤツだ……。
「自分は大天使サリエルと申します、いやぁ……変身には自信があったんですがね」
予想通りのキザでナルシストな男。
錠前からすれば、この上なく嫌いな人種だった。
「新海に聞いたぞ? 前もここへ来てインタビューをしたらしいじゃないか。確か……その時は僕のことを聞いたんだって?」
「えぇ、敵の情報は何よりも大事ですから。お会いできて光栄ですよ……現代最強」
「下請けがミスって、大元が出てくるようになったんじゃぁ……いよいよ末期じゃね? 業務体系見直したら?」
「誰のせいだと思ってるんですかね、錠前勉」
拳銃を隙なく構えるアノマリーに、天使はニッと笑った。
「聞いていますよ? 君は今魔法の使用ができない状態にあると……ガブリエルからはあまり突っ込むなと言われていますが––––」
タブレットをしまったサリエルは、両手に魔力を込めた。
「今……ここで倒してしまっても、問題無いのでしょう?」
サリエルの言葉に、天界配信のコメント欄は一気に盛り上がる。
【うおおおおお!!! サリエルさんかっけええエエェェエエエ!!!!】
【相手はアノマリーだぞ、いけるか?】
【サリエルさんを舐めるなよ、魔法が使えない人間なんていくらでも勝てる】
サリエルの挑発に、サングラスを着けたまま錠前は銃を向けて––––
「は?」
手に持っていたハンドガンを、相手に向かって放り投げた。
当然発砲してくるものと思っていたサリエルは、一方的に虚を突かれる形となり……。
「弱体化したと思うのは勝手なんだけどさ」
刹那の時間で懐に入った錠前は、右手に尋常ではない量の魔力を宿らせた。
冷や汗をかく大天使に、現代最強……錠前勉はニッと笑い、久しぶりに大好きなキャラのセリフを言ってみた。
「僕––––最強だから」
––––バギィッッッ––––!!!!
戦車すら吹き飛ばす掌底突きが、サリエルの腹部に直撃した。
魔眼から来る魔力の衝突は紅い火花を発生させ、眩いスパークを生じさせた。
「ガァっ…………ッ!!!?」
サリエルは思わず白目を剥き……吐き出された血が宙を舞う中、天界のコメント欄が騒然となる。
【サリエルさん!!?】
【は…………?】
【えっ、はい…………!?】
【大天使様が一撃…………?】
サリエルのタブレットが、音を立てて床に落ちた……。
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