表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/456

第293話・チート戦法

 

「おー、こりゃ凄いですね」


 銃座から上半身を出していた坂本が、後部座席に置いてあった64式小銃のスコープで敵を見ていた。

 倍率の掛かったそれに映ったのは、ゴブリンからオーク……果てはスケルトンメイジといったモンスターが大量に。


 彼のカメラを見ていた視聴者も、遠目に映る大量の敵影にざわついた。


【これ……、逃げた方が良くね?】


【さすがに4人でこの数は無理だろ! みんな急いでにげて!!】


 敗色濃厚。

 視聴者たちの脳裏にそんな単語が浮かんだが、透は全く逆だった。


「坂本、距離は?」


「目視で400メートル! 凄い数ですよ……!」


 普通なら慌てる場面。

 だが、防衛大で歴史の勉強もしていた透は、微塵も動揺していなかった。


「ソンムの戦いって知ってるか? 第一次世界大戦じゃ数千人が一斉に突っ込んでも、機関銃を突破できなかった。怖がるな––––坂本、撃ちまくれ!!」


 指示が飛んだと同時に、坂本は64式をスリングにかけてM2を撃ちまくった。

 12.7ミリクラスの凶弾が、激しい豪雨のようにモンスターへ襲いかかる。


 だがさっきまでで撃ち過ぎたのだろう……。

 激しい連続射撃で、M2の銃身が真っ赤に染まってしまったのだ。


「オーバーヒート!」


 マシンガンの弱点として、撃ち過ぎると銃身が熱で変形してしまう部分にある。

 こうなってしまったら、熱が冷めるまで待つしか無いと思うだろう。


「おっし、じゃあ引き離すぞー」


 慌てることなく、透はLAVのアクセルを踏んだ。

 車が発進したと同時に、坂本が車内に顔を引っ込める。


「チビ助! 予備銃身取ってくれ」


「誰がチビ助よ! はい! サッサと取り替えてよね」


 淀みないコミニュケーション?で、用意してあった新品の銃身が渡された。

 時速80キロの車上で、坂本は断熱グローブを着けて素早く熱々の銃身を交換。


 もう一度コッキングレバーを引いてから、射撃を再開。

 この間……、なんと10秒程度。


 坂本が銃撃を始めれば、また車は適当な場所に停車。

 再び両者の距離が700メートルほど離れたところで、視聴者たちは気づいた。


【めっちゃ引き撃ちしてて草】


【まぁこっちの方が射程で勝ってるのに、わざわざ近づく意味も無いわな】


【ゲームだったら絶対許されない戦法やん】


【心配は杞憂だったか】


 そう、今回は相手に機動力というものが皆無。

 こちらは敵の射程内に入りそうになったら、車という現代のチートアイテムで距離を離せば良いのだ。


 遠距離からほぼ一方的に敵を葬っていく様は、某地球防衛ゲームを彷彿とさせた。


「良いですね透さん、このまま確実に敵を減らしていきましょう」


 助手席の四条が、安堵したように呟く。

 このまま塩試合を続けていれば、現代兵器で武装したこちらが勝つ。


 ゲームでは無いのだ。

 卑怯と思われようが、確実に勝てる戦法があるなら使うべきである。


「隊長、また敵の炸裂魔法が来そうです。そろそろ移動を」


「わかった」


 幾度目かの発進をしようとした時、後方で魔法の光が瞬いた。


「敵弾!!」


 動き始めた車体の傍を、炸裂魔法が通りすぎる。

 しかし狙いはお粗末なもので、大きく外れていた。


 誰もが問題無いと思った時、それは起こった……。


「なっ!?」


 運転席の透は見た。

 進行方向にあった太い木に、炸裂魔法が命中。

 音を立てて倒れてきたのだ。


「掴まれ!!!」


 倒木は、左右から透たちの乗るLAVを挟むように押し潰した。


「あっぶ!!?」


 銃座にいた坂本が、間一髪で車内に落っこちてくる。

 装甲車なので潰れはしなかったが、久里浜が叫んだ。


「M2故障!! タレットごとやられました!!」


 油圧ペダルを何度も押し付けるが、旋回機能は死んでいた。


「チッ!!」


 すぐさま車体を動かそうとするが、透はここでようやく気づいた。


「あっ……、これスタックしてる……」


「「「はい!??」」」


 LAVは2本の倒木によって、その身動きをガッチリ封じられてしまった。

 最後に飛んできた魔法は、車ではなく最初から木を狙っていたのだ。


 重機関銃を潰し、こちらの機動力を削ぐ……。

 現代兵器を知っている者でなければ、ほぼ思いつかない戦法だ。


「あーっ、油断した。だるいなこれ……」


 少し怪訝そうな顔をした透は、すぐさま20式小銃を持った。


「全員下車して応戦、多分敵に……こっちの装備を知ってる“地球人”が混じってるぞ。大方想像はつくけどな」


引き続き面白いと思った方、でも感想書きづらかったら一言

『( ゜∀゜)o彡。』とコピペでどうぞ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
( ゜∀゜)o彡。
400メートルから装甲車狙ったり、700メートルから大木を一撃で折ったり、何気にやべえ威力してんだよなモンスターくん 透が押さえている間にM2を銃座から外して、その凶悪な12.7ミリ弾で木をぶち折るん…
M2重機関銃さんは銃身を真っ赤に燃やして頑張ってくれたので、次は透さんが右腕を真っ赤に燃やして敵を討つと。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ