第28話・犬猿の仲
「おー、こりゃ凄い」
ヘリ部隊の空爆が終わった跡を、LAVの運転席に座った坂本が視界に捉える。
草っ原は焼け焦げ、辺りはクレーターまみれと化している。
攻撃ヘリの火力が、いかに凄まじいかを物語っていた。
「おかげで無事通過できそうね、とりあえず難関ポイントは突破かしら」
結晶が散らばる横を、8両の90式戦車隊が通過。
次いで89式重装甲車6両が通り過ぎ、最後尾を坂本と久里浜の乗ったLAVが過ぎ去る。
一通り爆心地を見た坂本は、「ところで」と振り返った。
「なんでお前が僕と一緒なんだよ」
「は? わたしだって本当はごめんだったわよ。でも四条先輩と新海小隊長の指示だったから、不本意かつ仕方なくよ」
助手席で不機嫌そうに足を組む久里浜に、運転席から坂本が横目で見る。
「––––お前、どうして特戦に入ろうと思ったんだ?」
「いきなり何よ」
「なんとなく聞いただけ、お前はもう知ってるだろうけど……あそこは本当に命懸けだと思う。当然人を殺す任務もあるだろうし。お前根が優しそうだから、いざって時撃てるのかなーって」
しばらくエンジン音だけが響く。
ドアの外に目をやっていた久里浜は、相変わらずのトーンで呟いた。
「撃てる撃てないじゃない、命令とあらば“撃つ”のよ」
「フーン、それを言えるだけの覚悟はできてるんだ」
「当然でしょ、わたしは……何としても特戦に戻らなきゃならない。アンタ達には悪いけど、この配信チームはただの腰掛けだから」
「ほぅ」
言い切った久里浜に、ふと坂本は聞いてみる。
「お前、髪の匂いが昨日と違うけど……ひょっとしてシャンプー変えた?」
「気持ち悪っ! なんでわかんのよ変態!! えぇそうよ、昨日は違うの使ったわよ」
「何使ったか当ててやろうか? 四条2曹から貰った高級なシャンプーだろ。1本何千円もするヤツ」
「ギクっ……」
表情を歪める久里浜に、坂本は相変わらず前髪もどかさずに続けた。
「あと、お前ここに来た時“エアコン”にえらく感動したらしいじゃん。良いのか? 高級なシャンプーが使えて、暑さに悩まず寝られる環境を……本当に腰掛けにしちゃって」
「むぅ……っ」
「しかもお前、昨日隊長に夜PXへ連れて行って貰っただろ」
「だから何で知ってんのよ!! マジキモい!!」
喚く久里浜に、彼は堂々と答える。
「隊長のことだし、初実戦のご褒美に1000円くらい好きなお菓子を買ってやったと睨んでる。何を買って貰った?」
「……! クッキーとチョコ。あとアップルジュースだけどっ。なにか悪い!?」
「いいや別に、ただ……特戦の先輩達がお前に持ってた気持ち。少し分かっちゃうのがどうもね」
「どういうことよ!」
「こういうことだよ」
左手を伸ばした坂本は、2人の間に置いてあったカバンからチョコレートを取り出した。
結構甘い、久里浜が好みの物だった。
「お前緊張して朝飯全然食ってなかっただろ、これでも齧っとけ」
「あっ、アンタの施しなんて……!!」
「これ、四条2曹に渡されたやつだからね。お前こそ勘違いすんな、要らないなら俺が貰うよ?」
「ッ……!!」
奪い取るようにチョコレートを取った久里浜は、助手席でモグモグと頬張る。
どこか、小動物が必死に食べているような雰囲気だった。
「良いよな〜。冷房が自由に使えて……良いシャンプーが貰えて、隊長も先輩も優しくて、みんな頑張ってるお前が可愛いんだろうよ」
「……っ」
「だから腰掛けなんて言葉、使うのは俺の前だけにしとけよ。人の温情を裏切るのは罪だからさ」
「知ってるわよ……それくらい、暴言もアンタにしか吐かない」
「それで頼むわ、おっ––––」
前方の戦車部隊が、急停車した。
合わせてブレーキを踏んだLAVも、ガックンと揺れる。
「おい久里浜、サッサとそれ噛み砕いてカメラ持て」
「むぐっ!」
必死に頬張りながら、大慌てでカメラを取る久里浜。
坂本達の目の前で、90式戦車の120ミリ戦車砲が発射された。
「撮れ高無いと、2人にどやされる」
爆音と衝撃波が、車体を大きく揺らす。
戦闘が始まった––––
久里浜は頑固に頑張ってるところを、横から甘やかしてなんぼです!
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「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」
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