第278話・激突・日中空母機動艦隊④
––––護衛艦『かが』、FIC内。
イージス艦のレーダーとリンクしたパネルには、180°反転して逃げて行く空警-500が映っていた。
「『はぐろ』より通信、電子攻撃成功。敵早期警戒機の無力化に成功したとのことです」
通信手の声に、艦隊司令の若葉は頬を僅かに吊り上げた。
「ふむ、上手く機転を利かせたじゃないか。これで連中の目は潰せたわけだ」
「っとなれば、後は向かってきてる攻撃隊の対処ですが……」
町田艦長がディスプレイを操作すると、AIが予測した敵機の進路が表示される。
これも、イージス艦から受け取ったデータを基に、艦隊リンクで共有しているからできることだ。
「第二次攻撃隊のJ-15は計20機、合計で40発の対艦ミサイルを発射してくるものと思われます」
「『山東』の搭載数や予備も考えたら、かなりの全力攻撃だな……。防げるか?」
「たとえ全て発射されても、こっちにはイージス艦がいます。問題はほぼないですが……嫌な可能性は極力潰すのが得策かと」
町田の考えに、若葉司令も首を縦に振った。
「よろしい、空警-500がいなくなった今がチャンスだろう。艦隊の後ろに隠していた”アレ”を突っ込ませようか」
若葉の黒い目が、モニターに反射して錆銀のように光る。
一方で、いよいよ海自艦隊まで距離60キロを切った第二次攻撃隊も、違和感を覚え始めていた。
「隊長、レーダーにまだF-35Bが映りませんが……本当に空軍の連中はアテにして良いんですかね?」
本当なら、少し前の段階で空警-500からデータを送ってもらうはずだった。
その情報を頼りに、攻撃隊はF-35Bを回避する予定なのだ。
しかし、いくら待っても通信すら来ない。
「まだ送られて来ていないのは不気味だが、もしかすると……我々同様、敵も再攻撃の準備中で、飛んでる機体がいない可能性がある」
「っとなれば、我々も連中にやられたことの意趣返しができるというわけですな?」
先ほどの中国艦隊は、艦載機の出撃準備中を狙われた。
つまりこの状況、さっきと立場が逆転していると言えた。
「よし、空警-500のデータを待たずに攻撃を開始する。全機、ホップアップ用意」
マッハで海面スレスレを飛ぶJ-15は、予定通り距離40キロでグンと機首を上に上げた。
ASEAレーダーが水平線に隠れていた日本艦隊を探知し、各機がミサイルを撃とうとした時だ。
「は……?」
大空を塗りつぶすように、先頭集団のパイロットの視界には––––”AIM-120空対空ミサイル”が映っていた。
RWRがやっと警報を鳴らすが、もう遅い。
前方を飛んでいた4機のJ-15戦闘機は、何もできず木っ端微塵に砕かれた。
「F-35Bだ!! 全機、ミサイルを投棄せよ!!!」
隊長の指示で、攻撃隊は対艦ミサイルを海へ即座に捨てた。
身軽になり、大急ぎで高度を上げるJ-15。
なぜだ、どこから来た……! 空警-500は何をしていた!
そう思う間もなく、隊長機の背後につく機影が映った。
視界に入ってきたそれは、ステルス機たるF-35Bに違いは無かったが……明らかに様子がおかしかった。
「嘘だろ」
攻撃隊20機に対し、海自が割り当てられる戦闘機は4機が限界だろうと踏んでいた。
1機につき空対空ミサイルを4発積んでも、16機を相手するのが関の山。
まして、空警-500がいる中で、こんな”野獣”が来るなんて考えてもなかった。
「敵F-35Bは”ビーストモード”だ!! 高度を上げて自衛用の対空ミサイルをばら撒け!!!」
”ビーストモード”。
それは、本来忍者のように振舞うステルス機の掟に反し、できうる限りの武装を搭載した超攻撃型形態のF-35を示す。
その戦闘力は通常の約4倍。
最大の強みであるステルス性を捨て去り得た武装量は、AIM-120中距離空対空ミサイルを14発、さらにAIM-9X空対空ミサイルを2発の計16発搭載可能。
さらには機体下部に後付けの25ミリガトリング砲も搭載。
まさに野獣、ビーストの名を欲しいままにした、最強のF-35だった。
「フレアだ!! 全部ばら撒いてかわし切れ!!」
混乱する中国海軍航空隊に、海自一航戦は容赦なく大量の空対空ミサイルを撃ち放った。
その数実に40発以上……。
1機につき2発ずつ発射されたため、どう足掻いても逃げられるわけが無い。
真っ白な尾を引いて飛翔したミサイルが、サーカスのような軌跡を描いて、次々と中国軍機を空から叩き落としていった。
「探知できなかったのは……、俺たちと合わせるように低空を飛んでいたからか! この化け物めぇ!!!!」
フレアを振りまきながら必死に回避していた隊長機も、アムラームミサイルを食らって海に沈んだ。
残ったJ-15は決死のドッグファイトを仕掛けるが、そもそもF-35Bは機動性能においてもラプターに近い。
あっという間に背後を取られ、25ミリガンポッドで粉々にされた。
「『かが』よりビースト小隊へ、よくやった。敵機の殲滅を確認、ただちに帰投し––––最後の攻撃に備えよ」
艦隊戦もいよいよ大詰め。
海自艦隊は、中国艦隊へトドメを刺すべく一気に前進を開始。
そして、最前方を担当するとある艦が、海中のわずかな動きを探知した。
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