表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
277/457

第277話・激突・日中空母機動艦隊③

 

 中国軍は、今回の攻撃に合わせて切り札を用意していた。


『こちら、空警-500。たった今現場空域に到着した––––これより艦隊への航空支援を開始する』


 この4発のプロペラに加え、機体上部に円盤のようなレーダーを付けた航空機こそ、中国軍の対ステルス戦闘機キラー。

 名をKJ-500、軍でも生産数が極めて少ない早期警戒機だ。


 国産高性能のレーダーは、理論上F-35ですら僅かだが捉えることができる。

 加えて、高高度においての索敵能力も非常に高く、日本のイージス艦のミサイル……その射程距離外から作戦が遂行可能。


 わざわざ大陸から飛ばして来たが、その性能をもってすれば、今までのようなやられっぱなしの状態を脱却できるだろう。


 一方で、高高度を飛ぶそれは……当然ながらとても目立った。


「中国艦隊の後方に大型機を確認、艦載機ではないようです」


 ––––海上自衛隊、イージス護衛艦『はぐろ』。


 その艦内にあるCIC(戦闘指揮所)で、レーダー員の報告を艦長は聞いていた。


「大型の4発機……多分だが、宮古海峡を通過した空警-500だろうな。用心深いことで、あんなに後方で飛んでやがる」


「艦長、距離にして200キロ以上離れています、SM-2はもちろんですが……最新のSM-6でも無理ですよ」


 砲雷長の言葉に、艦長は「ふぅむ」と少し唸った。

『はぐろ』のイージスレーダーは、既に発艦した第二次攻撃隊を捉えている。


 今は海面スレスレを飛んでいて見えないが、直に……具体的に言えば距離40キロ地点でホップアップ。

 一瞬だけ上昇して、対艦ミサイルを発射するだろう。


 韓国艦隊がやられた時と、同じ攻撃だ。

 直掩のF-35Bを出したいところだが、空警-500のレーダーであればおそらく探知されてしまう。


 かと言ってミサイルは射程圏外……。

 もう時間が残されていない中、『はぐろ』艦長は決して慌てていなかった。


「“あの技”を使うぞ、2分で良い。『あたご』に本艦のカバーを頼むよう通信してくれ」


「まさか……アレですか、実戦では試したことなど無いですけど」


「敵さんは今頃こう思ってるだろう。どうせミサイルは届かないから高高度を飛んでも平気だとな。そこを突く」


 確かに、レーダー上では高度9000メートルを飛ぶ空警-500が堂々と映っていた。


「電子戦用意! SPY-1レーダーの出力を限界まで上げろ」


「対電子戦! SPY-1の出力上げ!!」


 艦長が不敵な笑みを浮かべる。


「見せてやろう、偽物や廉価版ではない……“本物のイージス艦”の能力を」


 一方の空警-500はというと、『はぐろ』艦長の予想通り全く海自を警戒していなかった。

 当然だろう、前面に壁として艦隊が位置し、さらには200キロも離れているのだから。


 たとえF-35Bであっても、この障害を越えて来るのは不可能と言えた。


「レーダー、F-35Bは捕捉できそうか?」


 コックピットの機長が、副長に質問した。


「もう少しレーダーの感度を合わせてやれば、いけるでしょう。そうすれば攻撃隊を安全に誘導できる」


「まぁ慌てるな、海自のイージス艦からは200キロも離れている。ゆっくり落ち着いてやれ」


 デュアルバンドレーダーならもっと簡単にできるのだろうが、残念ながらそんな高級品は米軍しか持っていない。

 空警-500が、ドンドンノイズに隠れたF-35Bの位置を洗い出して行く。


 あと10秒で、海自航空隊の展開場所がわかる。

 これでチェックメイトだと思った矢先……。


 ––––バチンッ––––!!


「なっ……!!?」


 機体が大きく揺れたかと思うと、いきなり全ての電子機器が強制的にシャットダウンした。

 レーダーどころではない、航法システムや空調に至るまでが完全に光を失った。


 通常鳴り響くはずのアラートすら沈黙してしまっており、機体が海面に向かって落ちていく。


 空警-500の機長は、「やられた!!」と叫んだ。

 すぐに操縦桿を握り直し、全力で機体を引き上げた。


「電子制御はもう利かない!! 手動で操縦する!!」


「レーダー、センサー共に感無し!! 機長……一体何が!」


 戸惑う副長に、機長がしてやられたと顔を歪めた。


「イージス艦の電磁波集中照射をモロに浴びたんだ!! クソっ!! 都市伝説くらいには出来ると聞いていたが、本当にやって来るとは!!」


「それは……、つまり?」


「機体に搭載された半導体が全部焼き切れたんだ! レーダーから機体制御システムまで全て! フル稼働した電子レンジに入れられたようなものだ!! これではもう何も出来ん!!」


「か、艦隊に通信を……!」


「無理だ! 電子機器は全部焼かれたんだぞ! もう何もかもが遅すぎる!!」


 空警-500が戦闘不能になったことを知らず、山東攻撃隊は前進を続けていた。

 彼らが向かう先は、大口を開けたアジア最強の艦隊防空網だ。


引き続き面白いと思った方、でも感想書きづらかったら一言

『( ゜∀゜)o彡°』とコピペで送ってください。

モチベ爆上がりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
空警-500…これはもはや空を飛ぶ鉄の塊ですな、イージスシステム恐ろしや
レンジに入れられたようなものってあたりで某人気搭乗式人型兵器アニメにもそんなやり口の攻撃あったなって思い出しました。あちらは地中に埋めた装置で最大出力だったのでそもそも域内のナマモノは破裂してましたし…
ちうごく「見せてもらおうか、本物のイージス艦の能力とやらを」 ↓ ぬわー! ニコラ・テスラの無線送電みたいだ。できるわけーだろそんなもん、と思われていたのが実際できたという 手動操縦できて良かったな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ