第276話・激突・日中空母機動艦隊②
「チッ!! こうもタイミングが悪いと白けるな……」
空母『山東』からの援護命令を受けて、殲撃小隊は全速で艦隊に戻る最中だった。
残った気化爆弾は投棄し、機体を軽くしてからマッハで飛行していた。
「ですが小隊長、北京への土産としては十分な物が撮れました。あれだけ日本人を痛ぶる様子が撮影できれば、出世も間違いないでしょう」
過去、日本の護衛艦にレーダー照射を行った中国軍艦艇の艦長は、その功績を讃えられて昇進した。
反日無罪、愛国的行動はどんな罪も許される材料となる。
それは、国際法違反の攻撃をしたこの小隊にも言えることだった。
「それはそうだな、実は……この戦いが終わったら恋人と正式に婚約するんだ。彼女への自慢話ができるな」
「それはめでたい! 出世祝いと合わせて小隊で祝福ですね」
「あぁ、早く祖国に帰りたいよ」
空母まであと70キロ。
通信の内容から察するに、護衛の中華神盾艦が2隻沈められたようだが、これはむしろ好機と思えた。
上手く行けば、帰投最中のF-35Bを発見できるかもしれない。
そうなれば、まだ自衛用の対空ミサイルで叩き落とせる。
いかに最新のステルス機と言えど、エンジンの排熱を捕捉できれば関係無い。
機首のASEAレーダーの捜索範囲を広げ、海自艦隊に戻る戦闘機を捉えようとした時だ。
「ん?」
編隊飛行の最中だったが、ふと見れば隣の機がやたら近い。
HUDの操作で気づかなかったが、距離にして10メートルも無かった。
「おい何やってるんだ、もう少し距離をたも……て…………?」
小隊長は目を疑った。
編隊のど真ん中を割るように飛んでいたのは、味方のJ-15戦闘機では無い。
グレーの特殊塗装に、これまた特徴的なステルス形状。
戦闘機乗りなら知らない者は存在しない、この空域に絶対いるはずが無い航空機。
『Hey, newlyweds! You're not gonna invite me to that party?』
オープンチャンネルで気さくに話しかけてきたのは、世界最強のステルスジェット制空戦闘機。
“F-22Aラプター”だった。
「全機!!! 緊急旋––––」
言うよりも早く、真隣にいたF-22Aが尋常ではない機動で背後に展開。
20ミリガトリング砲で、小隊長機のエンジンを撃ち抜いた。
「な、何でこの戦闘機がここに––––」
それが殲撃小隊の最期だった。
真上から降ってきたAIM-9X空対空ミサイルが、退避しようとしたJ-15戦闘機をバラバラに粉砕したのだ。
もちろんだが、ミサイルはまだ生き残っていた小隊長機にも炸裂。
わずか20秒という一瞬過ぎる時間で、殲撃小隊は戦うことすらできず一方的に撃墜された。
「ラプター1より各機へ、損害報告」
「ラプター2、問題無し」
「ラプター3、ノープロブレム」
「ラプター4、機器正常」
「よし、サプライズ完了。動画はバッチリ取れたな?」
「えぇ、韓国軍への国際法違反の行為はしっかりと。遥々グアムから飛んできた甲斐がありましたね」
「我々は引き続きこの空域でサプライズをお届けするぞ。一度空中給油機とランデヴーする、映像は大事に持っとけよ」
アメリカ空軍のF-22A戦闘機4機は、超音速飛行で悠々と離脱。
中国軍に全く知られずに、撤退した。
一方の中国海軍はというと、自身を振り回す不気味な現象に戦慄していた。
殲撃小隊がどうやってやられたかは不明だが、間違いなくステルス機の仕業だろう。
052C型中華神盾艦が、レーダーを最大出力で索敵するが……機影は全く見当たらない。
相手が第5世代戦闘機になると、ここまで一方的なのかと龍司令は歯噛みした。
だが、やられっぱなしというわけには行かない。
中国軍は、温存していた切り札を使うことにした。
「“転竜作戦”の発令を下命する、第2次攻撃隊––––発艦開始!!」
対艦ミサイルを抱いたJ-15戦闘機が、スキージャンプ方式の甲板から続々と発艦していく。
全機の離艦が完了した頃、『山東』艦長が報告を行った。
「全機出撃完了! これより全力で日本艦隊に対し––––攻撃を開始します」
さらに中国軍は、この攻撃に際して別の手札を用意していた。
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