第275話・激突・日中空母機動艦隊①
中国軍は完全なミスを犯した。
間違った目標への全力攻撃、その後の慢心しきった虐殺行為。
これら全てが噛み合ってしまった結果––––
「敵戦闘機、艦隊より現在“19キロ”!! 既にミサイルを発射した模様!!」
「なぜここまでの接近を許した!!」
「艦載機の収容作業中を狙われました! また、敵機はレーダーに探知されないよう、我々と同じく低空で侵入した模様!!」
韓国海軍が蹂躙されている隙を突いて、海上自衛隊のF-35Bは海面スレスレの超低空飛行で接近。
高いステルス性を最大限活かして、中国機動部隊に信じられない距離まで肉薄。
JSMステルス対艦ミサイルを16発撃ったのだ。
「敵機の撃墜を!」
「もう間に合わん!! 近接対空戦闘、短SAMおよび主砲発射始めっ!!」
接近してくるJSMに、中国艦隊は近距離武装での対応を迫られていた。
艦隊外縁部の055型中華イージスと、054A型フリゲートが主砲による迎撃を開始。
同時に、近距離対空ミサイルランチャーからも、あらん限り迎撃弾を撃ちまくる。
しかし、ステルス性に特化したJSMを落とすのは至難の技だった。
「体当たりしてでも『山東』を守れ!! 取り舵いっぱい!!」
決死の弾幕は、JSMを4発撃ち落とした。
だが、そこまでだ。
両側から挟むように突っ込んで来たミサイルは、艦隊両側面の055型イージス艦に命中。
巡洋艦級の巨大な艦体が、大穴を開けて真っ二つにされてしまう。
「『南昌』および『大連』に命中!! 両艦共に火災発生!! 被害甚大です!」
「他に被害は!?」
「ありません、2隻が盾になったおかげで他は無傷です」
中国海軍は、中核の空母を守り切ることに成功した。
CICの誰もが心の奥で安堵する中、1人だけ顔をしかめる男がいた。
「おかしい……」
モニターを見ていた龍司令は、胸の違和感をずっと抱いていた。
「ここまで艦隊に接近できたなら、我が空母『山東』を直接狙うこともできたはず。なぜ貴重なチャンスを……空母ではなく駆逐艦に使ったんだ?」
攻撃隊の発艦準備中を狙った、ジャミングとステルス性を活用した正確な打撃。
もし自分が自衛隊の指揮官なら、迷わず空母を狙うだろう。
しかし、実際に狙われたのは……。
「まさか……」
思い浮かぶ疑問。
それは、本来なら軍事的合理性などカケラも無いが……遠回しな一手として存在する手段。
「自衛隊は、空母ではなく……最初から高い性能の防空艦だけを狙っていたというのか?」
今被弾した055型ミサイル駆逐艦は、中国軍の中でも最強の水上艦艇だ。
もし今の攻撃をもっと遠方で捉えられていたなら、JSMも楽に落とせていただろう。
「艦長、残存艦艇は?」
龍司令の問いに、『山東』艦長は事の重大性に気づいていない様子で答えた。
「本艦に加えて052C型 中華神盾艦が4隻、さらには054A型フリゲートが6隻です。敵の攻撃はなんとか防げましたな」
「いいや艦長……、我々はどうも敵の手の上で遊ばれているように思える」
「まさか、こちらも被弾したとはいえ……敵艦隊を数倍の数沈めていますよ。戦術的には勝利しています」
「わからないのか? さっき我々が攻撃したのは海自ではない、じゃなければF-35Bがここまで突っ込んできはしないだろう」
そう、敵の狙いは最初から055型イージス艦だけだったのだ。
艦隊防空の切り札を失ったことで、中国艦隊の対空能力は一気に下がったと言える。
「敵の狙いがわからん……、こんなに不気味な相手は初めてだ」
龍司令が汗をかいていると、通信手が声を上げた。
「艦隊司令部より入電、我が軍の国産偵察衛星が日本艦隊の位置を特定出来たとのことです」
すぐに座標データが送られてくる
「我が艦隊から、およそ180キロか……こんなところにいたとはな。殲撃小隊はいつ帰投する?」
「ついさっき通信を送ったので、全速で向かって来ています」
「ならば補給させ、その小隊を艦隊防空に回せ。空対空装備をフルに載せろ。沈められた055型の穴を埋めるんだ」
先手を取ったつもりが、逆に出鼻を挫かれてしまった……。
レーダーで殲撃小隊が、空母に全速で戻っているのを見ていると––––
「は?」
『山東』のレーダーにさっきまで映っていた殲撃小隊が……一瞬目を離した隙に、“全て消えていた”。
「なっ……、に!?」
一体何が起きたのか、全く見当もつかない。
それは、1分前の殲撃小隊のみが知る……隠された真実。
先に答えを言うならば、彼らは“存在しないはずの敵”に遭遇していたのだ。
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