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第266話・決戦、射的屋バトル!

 

 ––––パァンッ––––!!


 金属製のトリガーが引かれると、コルクは勢いよく飛翔。

 狙いはそこそこの大きさを持つぬいぐるみだったが……。


「あっ」


 ほんの僅かというところで、弾はぬいぐるみを逸れて奥へ逃げてしまった。


「あー! 惜しい!!」


「でも初めてにしては良いセンスだぞ!!」


「次は当てろ! テオドールちゃん!!」


 ミスショットだったが、野次馬たちは大盛り上がりとなった。

 構えから射撃の一連を見ていた久里浜も、結構感心していた。


「やるわね、構えも悪くない。トリガーの力加減さえコントロールできたら次は当たるわよ」


 特戦群の彼女がそう言うレベルなので、実際テオドールは初ショットにしてはかなり型ができていた。


「あぁ、今のは緊張してガク引きだったのが原因だな」


 ※ガク引き:トリガーに込める力が強すぎて、銃口が狙いからブレることを自衛隊ではそう言う。


「次はわからない」


 周囲に響く大歓声の中、テオドールは第二射の準備を進めていた。


「さすがに一撃とはいきませんか……、やはりあのヌイは手強いですね。でも要領は掴めました」


 彼女は戦いに明け暮れた異世界出身。

 当然であるが、本物の弓矢も扱ったことがある。

 米軍に匹敵する実戦の経験から、テオドールは冷静に反省点を導き出した。


 コルクを詰め、音を立てて素早くコッキング。

 今度はよりしっかりストックを頬と肩に当てて、呼吸も止めてみる。


 さっきまで遠くに見えたぬいぐるみが、さらに近くに見えた。


「今」


 今度の射撃は完璧だった。

 お世辞にも良いとは言えない品質のトリガーを、彼女は見事な力加減で引いた。


 銃口も一切ブレず、発射されたコルクはぬいぐるみの頭部へヒットした。


【キタ!!】


【命中弾!!】


 歓声が上がる、しかし残念ながらぬいぐるみはこれでも落ちない。

 正確には、奥へ少しズレただけだ。


 普通なら悔しがる場面でも、テオドールは銃を下ろしながら呟いた。


「なるほど、こうやって連続で当てれば……いずれ落ちるということですね」


 残弾は3発。

 どんなに余裕を見積もっても、全弾当てなければぬいぐるみは落とせない。


 次弾を装填していると、後ろで腕を組んでいたベルセリオンが声を掛けた。


「フフッ。代わってあげようか? テオドール」


「いらない、お姉ちゃんはそこで見てて」


 コッキングレバーを前に押し出す。

 感覚を掴んでいる内に、テオドールはチャンスを逃すまいと間髪入れずに射撃。


 2発共がぬいぐるみに命中し、胴体の半分が棚から押し出された。


【マジでギリギリの勝負じゃん……!!】


【なぁ……ここで最後外しても、もう1回やれば確定で落とせないか?】


【エアプ乙、動いた景品は5発以内に落とせなかったら元の位置に戻される。次がラストチャンスだ】


 実際その通りで、お店のルールにも明記されていた。

 最後の射撃に備えて、彼女は深呼吸した。


「諦めません……。あのぬいをゲットして、一緒のベッドで寝るんですから」


【あっ、お人形さんと寝るタイプだったのね】


【達観してるけど、女子らしい部分があって安心した】


【ほえドールちゃん可愛いなオイ】


 とうとう最後の1発……。

 コルクを詰め、コッキングレバーを操作。

 ガチャンと音を立てると、もうすっかり様になった構えで狙いを定めた。


「諦めません、あのぬいは––––」


 大勢が見守る中、トリガーが引かれた。


「わたしがお迎えするんです!」


 撃ち放たれた一撃は、ぬいぐるみを見事にヘッドショット。

 棚からズレ落ちて、奥に落下した。


 数瞬の沈黙の後、大歓声が響いた。


「よっしゃああああ!! 落としたぞおおおおお!!!」


「さすが世界のアイドル!! 決める時は必ず決める!!」


「カッコよかったよテオドールちゃん!!」


 大盛り上がりの中で、テオドールは無事に人形を受け取った。

 ぬいぐるみは可愛らしいクマを模した物で、彼女は勝利と戦利品獲得の高揚感に包まれる。


 これが日本の夏祭り……、なんて楽しいのでしょう!


「むふふ……、ほえぇ」


 とっても可愛い人形をゲットできて、無事にホクホクドールとなった。

 もしスパチャあり配信だったら、今頃とてつもないことになっていただろう。


 目的を達成したので、次の屋台に行こうとしたところ––––


「なぁ……ウチもこれで赤字覚悟の経営になったんだ。代わりと言ってはなんだが自衛官さんよ、景気付けに腕前を見せてもらえないか?」


 射的の店主が、コルク銃を持って久里浜に話し掛けた。


「道の端から5発……、距離にして10メートル。全部標的に当てたら今棚に置いてある商品を全部プレゼントしてやるよ。まさか––––“当てれないから嫌だ”なんて言わないよな?」


「は?」


 久里浜の“狂犬”としての本能に、超高火力コンロばりの火がつけられた。


266話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」


と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 意地を張らなきゃいけない時って確かにあるんだけどさぁ……少なくとも全世界生配信真っ只中っていうリスク背負って行うもんじゃないだろ……この状況で自衛隊凹ませてドヤ顔したって何も生まれやしないだ…
[一言] コンロ?いいえ、火炎放射器です よう煽ってくれるわ。プレゼントは要らないから全弾オメーのドタマに当ててやんよ! ぬいぐるみ1個取られたくらいで赤字になるような経営ってなんだ…落ちない細工で…
[良い点] 食べてる時以外もほえドール! レアなシーンいただきィ! テキ屋のおっちゃんに誰か投げ銭してあげてー。 [一言] まさかあんなことになるなんて思いもよりませんでした・・・ 後にテキ屋は語った…
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