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第258話・偏向報道の末路

 

 ––––純粋な正義と報道の自由。

 朝川TV新聞が創業以来掲げるこの理念は、戦前から今も根強く社内に残っている。


 しかし、実際は一部の癒着派閥によって報道の内容はコントロールされており、自由の名の下に偏向的なニュースばかりが流されていた。

 インターネットの保守派や右翼とよく衝突する中、それでも彼らは伝統的な姿勢によってそのスタイルを維持してきた。


 だがそれも……今日で終わろうとしていた。


「あっ、がぁ……」


 ––––東京都 港区某高層マンション。


 俗に言う富裕層が好んで住まうここで、朝川TV新聞の重役を務める重田(しげた)は床を這いずっていた。

 高級なカーペットには彼の鮮血が滲んでおり、ここで何かがあったことを示している。


「中華系、韓国系政治団体との癒着。それに伴う外国が有利な報道姿勢と莫大な賄賂……重田さん、アンタちょっとやり過ぎたよ」


 300万円を超えるソファーに座りながら、公安として突入した真島雄二は拳銃をチェックしていた。

 マガジンを抜き、チャンバー内を覗き込む。


「た、頼む……見逃してくれ! 金ならいくらでも払うから!!」


 必死の命乞いをする重田を見下ろしながら、真島は部下に新品のグラスを持って来させた。

 机に置かれた半分まで減った某銘柄の高級ワインを、透明なグラスに注ぎ込む。


「はっ、そうか……いくらでも払えるのか。じゃあちょっと悩んじまうな」


 真島は軽く微笑みながら、グラスに注がれたワインを手に取った。

 その色合いを見透かし、軽く鼻を近づけてから香りを楽しんだ。


 深いルビー色と、熟成された果実の芳香が漂う。

 しかし、その一瞬で真島の眉がわずかに寄った。


「このワイン。シャトー・マルゴーの1998年か……」


 真島は声に出してつぶやいた。


「この年のマルゴーは、天候が不安定だったせいか、少しアンバランスって言われてるんだよな……。果実味はあるんだが、酸味がやや強く出すぎていて、後味にエッジが残るのが特徴」


 そう言いながら、真島は一口ワインを含んだ。

 舌の上で転がすようにして味を確かめ、そのままゆっくりと飲み込んだ。


 しかし、すぐに口元に苦笑が浮かんだ。


「フンッ、やっぱりな……期待したほどじゃない。複雑さが足りないというか、深みが全く感じられない。樽の影響もあまりうまくないし、どこかつまらなく平坦な味わいだ。少なくとも、この状況で楽しむには物足りないな」


 人の秘蔵酒を散々な言い様だが、ワイン好きの真島にとっては変に褒める方が失礼という認識があった。


「係長、まだ仕事中ですよ」


 重田を拘束しながら、同じく防弾スーツ姿の女性公安が冷たく言った。


「お前らが黙っててくれれば良い話だよ、一度飲んでみたかった物だが……期待外れだな」


 真島はグラスをテーブルに戻し、重田を冷ややかな目で見下ろした。


「まあ、こんなワインを選ぶあたり、アンタの品位も知れてるってことだ。金で解決できる問題じゃないってことを、そろそろ理解したほうがいい」


 重田の顔がさらに青ざめる中、真島は再び拳銃を手に取り、ゆっくりと立ち上がった。


「さて、そろそろ本題に戻るとしようか」


 近づくやいなや、真島は重田の顔面を蹴った。

 既に流れていた鼻血が飛び散り、机に染み込む。


「関係のあった政治団体を全部話せ、そしたら命だけは救うのを考えてやる」


「ほ、本当か……!?」


「あぁ、ワインの礼だ」


 一縷の希望を見出した重田は、拳銃で撃たれた脇腹を押さえながら洗いざらい喋った。

 それらを記録しながら、真島はため息をつく。


「呆れたな……、政治的主張ならまだわかるが。食事作法の押し付けまで賄賂を受けて報道してたのかよ」


 重田から、日本人の食事作法を韓国式に変えるよう誘導するニュースを指示していたと聞き、さすがに困惑が漏れた。


「ちなみに……、どんな内容で報道したんだ?」


「か、韓国ではインスタントラーメンを食べる時、皿ではなく鍋蓋の裏に乗せて啜るんだ。見た目的にも人間文化らしくて、とてもオシャレだ」


「韓国では常識かも知らんが、日本じゃ最大級に行儀が悪い食い方だぞ……よく浸透できると思ったな」


 拳銃のマガジンを戻した真島は、コッキングして銃口を重田に向けた。


「じゃあ、ご苦労さん」


「おい……待て、話がちが––––」


「“考えると言っただけ”だ、助ける約束なんざ最初からしてねーよ」


 9ミリ弾が、重田の頭部を貫いた。

 血を噴き出して倒れる男を尻目に、真島は銃のセーフティを掛ける。


「偏向報道はほどほどにしとけよ、新聞社さん」


「新聞テレビが終わってるのは確かですが。ネットも似たようなものですよ、最近はどこも偏りが酷いです」


「だから情報の取捨選択は大事って話だ、お前も気をつけろよ。デマやゴシップに踊らされる人間になりたくなければな」


 合図で公安は一斉に動き出し、残りの作業を後続に任せて部屋を出た。

 その頃、ダンジョンでは1人の男が命からがら帰還していた。


ちなみに錠前は下戸です、飲めません。

そして新海はエナドリで割ったお酒が好きです、少し前はストロング系を好んでいたようですが、政府が規制してからは諦めてそういう飲み方をし始めました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新海、わりとアレな好みで草。健康には気をつけてw インスタントラーメンくらい好きに食えとは思うが、流石に文化的とかオシャレは理解に時間がかかったw
[一言] エナドリとアルコールとか人生がハードな印象しかないw
[一言] “考えると言っただけ”、だが断る系の返しで良いですね。 スタンド使いのウマ娘とか血統スポーツだけにあるのかと思いつきましたが、さすがに脱線が甚だしいと反省してます。
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