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第247話・中国国家安全部、陳大佐

 

「そんな……、ありえない。このわたしが……」


 腹にノーガードで銃撃を食らったエクシリアは、口から鮮血を流しながらよたついた。

 激しかった魔力の渦が、ゆっくり収まっていく。


「アンタの負けよ、エクシリア。今のわたしたちに……勝てる可能性なんて無い」


 ハルバードを向けたベルセリオンが、最後の送り言葉を告げた。


「最後の最後まで1人で背負った、誰も頼ろうとしなかった……それがアンタの敗因」


 執行者は特別な存在だ。

 たとえ致命的なダメージを負おうと、時間が経てばあっという間に復活する。

 その特性を十分に知っていたベルセリオンは、即座にトドメを刺すべく動いた。


「ッ……!!」


 もうロクな抵抗もできないエクシリアに、トドメの斬撃が放たれた。

 だが、ハルバードの切先が届く前に––––


「ウグッ……!!」


 横から割り込んだ男によって、ベルセリオンが殴り飛ばされた。

 すぐさま起き上がった彼女が見たのは……。


「ッ……! 陳っ」


「久しぶりベルセリオン、随分と雰囲気が変わったね」


 中国国家安全部の超エリートスパイ、陳大佐だった。

 黒装束を翻し、膝をついたエクシリアの前に立つ。

 突然の乱入に、その場の全員が当惑した。


「ど、どうして……あなたがここに?」


 困惑を隠せない四条。

 それは透も同じで、2人の間には共通の確定したはずの事項があったからだ。


 なぜ、なぜ……生きている。

 なんで錠前1佐は……。


「どうしてって、あぁ……そういう意味か」


 しばらく考えた陳は、下卑た顔で答えを渡した。


「錠前勉は––––私たちが封印した」


 その答えに固まったのは、ほんの0.1秒。

 四条はその場の誰よりも素早く動き、銃口を陳へ向けた。


「そうですか、死んでください」


 フルオートで300ブラックアウト弾が放たれる。

 しかし、陳は銃口の向きから射線を予測。

 スラスラと、なんでもないかのようにかわした。


 さらに、避けながら彼は持っていた拳銃を四条へ発砲。


「ッ!!」


 銃弾が当たろうとした時、ベルセリオンが横から入り––––


「はあぁッ!!」


 持っていたハルバードで、四条を凶弾から守った。

 一瞬の攻防を終えて、陳が呟く。


「まぁまぁ、そう焦んないで。なに、君たちの計画が潰れただけじゃないか」


 この場の誰も、陳の言葉が嘘だとは思えなかった。

 もし仮に眼前の中国人が嘘をついていたとしても、あの錠前がみすみす見逃すわけがない。


 こいつが渋谷にいる時点で、錠前1佐はなんらかの手段で無力化された可能性が高い。


 ふざけた事実に歯噛みしたが、今やるべきことに変わりはない。


「そうですか、では……やっぱり死んでください」


 怒りを含んだ四条が猛攻を仕掛ける。

 銃撃を織り交ぜながら、キレのある近接戦闘で陳へ攻撃したのだ。


 エクシリア相手なら通じた手だが……。


「ワンパターンだよ」


 陳は全ての攻撃を避け切り、魔力を纏った掌底突きを四条の腹部へめり込ませた。


「がっは……!?」


 あまりに重いそれは、軽装の四条を一発で吐かせた。

 第3エリアで久里浜がこいつに蹴りを入れられた時のことが、今になってようやくわかる。

 自分が死んだのかと錯覚するほどの威力。


 ––––この男、錠前1佐のせいで霞んでいましたが……!!


 吐き気を堪え、すぐさまMCXを発砲することで追撃を防ぐ。

 それすら軽くかわした陳は、一瞬で背後に回っていたベルセリオンへの対処も怠らない。


「エンデュミオンに代わり、この女をマスターにしたか……」


 ハルバードを受け流し、ベルセリオンの腕を絡め取る。


「ッ!?」


「悪くない判断だ、タイミングは悪かったけどね」


「あぐっ!!」


 武器を奪い取った陳は、彼女を背負い投げで地面に叩きつけた。

 その力は凄まじく、地面が一気に陥没する。

 瓦礫に埋もれる形で、ベルセリオンは仰向けで半分意識を失った。


「いくら執行者といえど、基本構造は地球人と変わらない。脳震盪をうまく起こさせれば簡単に無力化できる」


 陳が拳銃をベルセリオンに向けるが、


「だあああぁぁあああ!!!!」


 トドメを刺そうとした彼へ、空の銃を放り捨てた四条が思い切り突進。

 押さえ込むように、敵の動きをなんとか止めた。


 だが、それも時間の問題だろう……。


「錠前1佐が規格外過ぎただけで、アイツ……普通に俺や四条より強いじゃねーか……!!」


 2人がやられる姿を見た透は、焦るように自身の腕で眠っている少女を見つめた。


「もう7分経った……、まだかテオ」


 本人は5分で回復すると言っていたが、思っていたよりもダメージが酷かったのだろう。

 テオドールが目を覚ます気配は無い。


 両手でお腹越しに魔力を注ぎ続けているが、とても足りない。


「うぐっ……!」


 ついに取っ組み合いでも負けた四条が、服を掴まれる。


「しょせん女だね、何発耐えられるかな?」


「ぐはぁッ……!!」


 倒れられないようにした状態で、彼女に何発ものパンチが叩き込まれた。

 全て腹部を集中的に狙っており、四条の口から血が流れ落ち始める。


「クソッ……!! クソ!! 頼む、目覚ましてくれテオ!!」


 必死に叫び、魔力を送り続ける透。

 今自分が撃ったところで、四条を盾にされるのがオチだ。

 でもこのままじゃ……。


「おえっ、ゴホッ……!!」


 とうとう大量に吐血する四条。

 ぶちまけられた血が陳の顔に張り付くが、彼は舌で舐めとると殴打を再開した。


 もう1分ももたない……!!

 四条が殺されるのを黙って見ることなど、到底できない。

 透は最大効率でテオドールに魔力を注ぐべく、覚悟を決めた。


「すまん……! テオ!!」


 これより15秒後––––執行者テオドールは目を覚ます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 錠前が封じられてて、チームでの動きが出来てない以上は陳が優勢なのは道理なのよね…。 即殺しない嫌らしさのお陰で四条が生きてるってのが、助かってる点と言うべきかなぁ。
[一言] マウストゥマウスじゃないと遅いんだよォ!
[良い点] 女性キャラがボコボコにされた後ですから、ヘリコプターからRPGとか飛んできませんか? お盆休み&台風なので過去作も楽しんでます! [一言] すみません、前回のコメント失礼かなと思って返信…
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