第245話・わたしはアンタのお姉ちゃんだから!
テオドールは、最初から単独で勝とうなどと微塵も考えていなかった。
彼女がマスター、新海透から受けた命令はたった1つ。
『俺たちが到着するまで、生きて持ちこたえろ』
これだけであった。
「酷い姿ね、テオドール」
ボロボロの彼女の前で、エクシリアを吹っ飛ばした張本人が背中を見せた。
それは、今まで決して相いれなかった唯一の家族……。
「……遅かったね、お姉ちゃん」
「っ……」
エクシリアを従来とは比較にならないパワーで弾き飛ばしたのは、テオドールの姉……ベルセリオンだった。
水色のサイドテールをなびかせながら、ばつの悪そうな顔でつぶやく。
「い、今更こんなこと言うのは間違ってるだろうし、今までアンタに酷いことばっかり言ってきた最悪の姉ってのも……一応わかってるつもり。でも、それでも言わせてほしい!」
水色の魔力を溢れさせた彼女は、弱った妹の前で金眼を見開く。
愛情を知り、慈しみを知り、秋山という恩人のおかげで気づけた真理を叫ぶ。
「わたしはアンタのお姉ちゃんだから、弱った妹を守るのは当たり前のことだから……! 今は、この子供っぽい理屈を通させてほしい」
気恥ずかしそうに言うベルセリオンに、妹は暖かく笑った。
「うん、ありがと…………お姉ちゃん。初めて見直したよ」
「お礼なら新海透と、わたしにチャンスをくれた四条に言いなさい。あの2人と秋山がいなかったら……本当に大切なものを失うところだった」
彼女がそう言ったタイミングで、奥にあった瓦礫の山が弾け飛んだ。
煙の中から、怒りに満ちた形相のエクシリアが現れる。
「まさかあなたまで裏切るとはね、ベルセリオン」
「裏切ってないわよ、最初からわたし……アンタのこと嫌いだったし」
「それは同感ね、けど……無能な姉がきたところで戦況は変わらないわよ」
「まっ、そりゃそうね。”わたし1人”ならだけど」
瞬間、エクシリアを300BLK弾が襲った。
ギリギリで見切った彼女は、高速移動で後方に下がる。
「大丈夫か! テオ!!」
「今行きます!!」
「透……、四条……」
駆け寄ってきた透が、倒れかけていたテオドールをギュッと抱いた。
「任務達成だな」
耳元でつぶやく透に、テオドールは「全く」と漏らした。
「透は本当にひどいマスターです、こんな重い任務はデザート1個じゃ釣りあいませんよ?」
「わかってる、1個と言わず好きなだけ食わしてやる。今頃は錠前1佐が中国大使館でドル箱を漁ってるだろうし……祝勝会は豪華にしよう」
透いわく、他人の奢りで食べる食事が一番おいしいという話だった。
それを聞いたテオドールは、ゆっくりまぶたを閉じていって……。
「5分、5分で良いです…………エクシリアを足止め、できるならダメージも与えてください。その間になんとか回復して見せます」
彼女の言葉に、ベルセリオンは笑って見せた。
「上等! お姉ちゃんに任せなさい!」
「……お願いね」
テオドールの意識が消える。
彼女を抱いた状態の透の前に、四条とベルセリオンが立った。
「透さん、貴方はテオドールさんの回復を手伝ってあげてください。あの怪物は––––わたし達で止めて見せます」
「……いけるか?」
「同僚1人守れなくて、自衛隊は務まりませんよ。必ず任務は遂行します」
美麗な顔は、覚悟が完全に決まっていた。
ベルセリオンに刺されたお腹の傷は、彼女と交わしたマスター契約の副次的作用によってほぼ治っている。
今の四条は、友を傷つけられた怒りでただただ燃えていた。
「雑兵どもが……!! 手加減してたら調子に乗って!」
エクシリアの周囲にパリパリと電気が迸ったと同時、天空から稲妻が落ちてきた。
「血界魔装––––『雷轟竜の鎧』!!!」
ついに本気を出したエクシリアが、第3エリア攻略戦で見せた変身を披露した。
金髪はより美しく輝き、全身を紋様が覆った。
見るからに異次元の力を持った相手に、しかしベルセリオンと四条は一歩も引かなかった。
「ついて来れますか? 言っときますけど、わたしは秋山さんみたいに優しくないですよ」
「フン、問題ないわよ。サッサとやりましょう。マスター」
「良い返事です」
MCXのチャージングハンドルを引いて、初弾を装填。
銃を構えながら、四条は前に突っ走った。
「わたし達が相手です!!」
大量のイカヅチが、四条とベルセリオンに向かって落とされた。
更新頻度頑張って上げてるんですけど、皆さんの感想が動力源なのでいっぱい送ってくれると助かります。
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