第240話・あなたにとって錠前勉とは?
以前からどうしてもやりたかった……。っと言うか、このパロするために錠前単独突入→敵による防壁攻略→イマココ。
をやってます、まぁ展開がバレるのが痛いところですが。
––––あなたにとって錠前勉とは?––––
ある休日、防衛省から監察に来た職員が何人かに質問して回った。
最初にインタビューを受けたのは、食べ過ぎたテオドールを駆け足(無限ランニング)でしごいていた透だった。
「はい? 普通に上司ですよ、まぁ恩人でもありますが……って、なんなんですかいきなり?」
素っ気ない答えに、謎の監察官は淡々と続きを求めた。
「もっと具体的に? うーん……まぁなんて言うんでしょうか……」
場面は移り、次は四条に同様の質問。
「わたしを配信小隊に入れた張本人……というくらいしか。って言うか、どうやって兵庫地本のしがない広報官を見つけたのやら。そもそも貴方––––誰ですか?」
続いて久里浜。
「一応先輩にあたるわね、普段は昼行灯でフワフワしてるけど……これだけは言えるわ」
次いで坂本。
「超人、魔王、アノマリー……。色々呼び方はあるんでしょうけど。きっと満場一致でみんなこう答えてるんじゃないっすか?」
一通り聞き終わった監察官は、最後に全員が揃って言った単語をメモに書いた。
そこには、たった一言で––––
【––––最強––––】
とだけ書かれていた。
◆
場面は変わって結界に覆われた中国大使館。
次元防壁の攻略をされつつあった錠前は、微塵も焦らずにゆっくり進んだ。
「良いアイデアだ、発想は悪くない。もし部下だったら素直に褒めてたよ」
「だったら降伏しなよ、日本人ごときに褒められても何も嬉しくない」
「はっ、てめーらの残り少ないドル箱を貰うまで帰らねーよ」
その瞬間だった。
遠距離から飛翔してきた12.7ミリ対物狙撃弾が、構えを取っていた天界1等神獣の首から上を吹っ飛ばして。
「ッ……!! 狙撃兵か!!」
「僕に気を取られすぎなんだよマヌケ」
ミリ秒単位で生じた隙を逃さず、錠前は一気に距離を詰めた。
頭の無くなった3メートルはある神獣に、上から乗って––––
「楽にしてあげる」
首の切断面に、P320自動拳銃を全弾撃ち込んだ。
スライドがホールドオープンすると同時に、神獣が絶命する。
あまりにも規格外、本当にこいつは––––
「李!! もう一度行くぞ!!」
叫んだセルゲイ少佐が、再び攻撃を開始した。
『魔法結界・装』による打撃を繰り出すが……。
「よっ」
「は?」
彼の拳は空を切った。
本来そこにあるはずの防壁が、消失していたのだ。
「そーら」
「ぐぅおッ!!?」
盛大に隙を見せたセルゲイは、錠前の殴打によって地面を転がった。
状況を全て見ていた李大尉は、確信する。
––––こいつ……! 次元防壁を解いている!
即座に魔法を中断し、アサルトライフルをコッキングした。
ならば好都合、こちらは通常兵器で攻撃すれば良い話!
「撃て!! 蜂の巣にしろ!!」
周囲の兵士と重機関銃、李大尉が銃口を向けて––––
「ゴフッ……! 魔法結界を解くな!! 李ッ!!!」
その警告はあまりに遅過ぎた。
一斉射撃と同時に、錠前は人間離れした機動で李大尉へ肉薄。
ライフル弾を体に受けながら笑みを浮かべ……。
「最初に言っただろう、お前から殺すと」
「ッ!!!」
視界が反転した。
否、李大尉の首が呆気なく切断され……宙を舞ったのだ。
「李大尉!!」
セルゲイと神獣が、左右から挟むようにして錠前を囲む。
既に大尉は絶命しており、血を噴いた胴体が地面に倒れていた。
ニッと笑った錠前が、見破ったりと声を上げた。
「やはりな、結界纏いと通常の魔力使用は同時に並行できない! 付け焼き刃の代償が出たな」
大使館から重機関銃が雨のように放たれるが、全て錠前の次元防壁によって防がれる。
だが李大尉の死を無駄にはできない。
なんとしても、ここで次元防壁を剥がす。
「だからさぁ」
ため息をついた錠前が、指を鳴らした。
「僕だけ気をつけても意味ないって」
その時、大使館の上空に動きがあった。
間抜けな落下音が響いた後、重機関銃の拠点になっていた建物が爆散したのだ。
風が吹き荒れる中、倒壊音と悲鳴が結界内にこだました。
「迫撃砲だと!?」
さすがの陳も目を見開く。
一撃で鉄筋コンクリートを粉砕したことから、おそらく陸上自衛隊で最強火力を誇る120ミリ迫撃砲だろう。
「やってくれたな……! 錠前勉!!」
錠前の四方を囲んで、セルゲイと神獣が渾身のパンチを放った。
纏う結界により、次元防壁が凄まじい勢いで削られていく。
それでも、彼は全く焦っておらず。
「良いのかい? たとえ君らが僕の防壁を崩せたとして……どうやって殺すつもりだ。重機関銃も潰れて、もう限界なんじゃない?」
一瞬だった。
セルゲイが次元防壁を食い破った瞬間、錠前は何も無かった空間から『M2重機関銃』を取り出した。
彼の得意は空間魔法、重量物を亜空間にしまうことなど簡単であった。
「はい、おしまい」
両手でつかんだと同じく、錠前は真上に高くジャンプ。
12.7ミリ対物ライフル弾を、上空から雨のように降らした。
セルゲイは右腕を吹っ飛ばされ、神獣も脳天から股下までを貫通されて絶命。
着地した錠前は、唯一立っていた陳大佐に銃口を向けた。
もう遺言も何も残させず、一撃で葬り去る!
ここでこの中国人を殺す。
「……さすがだね」
完全な詰みである。
全てが決着を迎えようとした直後だった。
「今だよ、エンデュミオン」
陳が呟いたと同じくして、結界内に侵入した”ダンジョンマスター”エンデュミオンが、錠前の直上で巨大な魔法陣を広げていた。
黒いコートを翻しながら、エンデュミオンはニヤリと笑う。
「封印魔法、暁天一閃––––」
錠前勉に、人生で初めて寒気が襲った。
「出力最大、『極ノ棺』」
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