第24話・これだから島国はチート過ぎる!
––––東京都 某所。
廃ビルにも似た建物の3階で、中国人民警察所属の王小明警部はタブレットを睨んでいた。
画面には、ついさっきまで配信されていた透たちが映っている。
「……日本人がここまで容赦のない戦闘をするとはな、まるで我々に見せつけているようじゃないか」
一言呟いた王に、同じ人民警察海外派出所の部下が話しかける。
「極東一貧相な陸軍には違いありません、兵士の数は中国陸軍の足元にも及ばない。我々が恐れる必要は無いかと思いますが?」
帳簿を付けていた部下が、気に入らないと言った様子で顔をしかめた。
配信は大変盛り上がっていて、同接数は2億を突破。
コメント欄も、海外からのリスナーが盛り上がっている。
【完璧な防衛戦! 精密な砲撃はウクライナに供与されたエクスカリバー誘導砲弾のようだ!】
【自走対空砲の対地射撃は素晴らしい運用だ、米軍が朝鮮戦争で得た教訓をしっかり学んでいる】
【中国とロシアは、この陸軍が極東に存在することを再認識する必要があるだろう】
肘を椅子に掛け、王はもう一度戦闘の最初から見直す。
細かい点で、何度も注視した。
「…………ッ」
やはり、こうして実戦で見せられると思わず身構えてしまう。
あのモンスター群が、もし人民解放軍であったなら……果たして違う結果を掴めただろうか。
高性能な戦車、精度の高い砲弾、強力な銃火器。
何より落ち着き払った隊員たち。
王は、未だ納得していなさそうな部下に聞いてみる。
「……確かに陸上自衛隊は人民解放軍より小さい、ロシア軍と比較しても同じだ。しかし状況を変えれば、そんな差は簡単にひっくり返る」
「あり得ませんね、我が解放軍ならこの動画の数十倍は火力が出せます。自衛隊など敵ではありません」
「それは大陸で正面からぶつかるという、最もあり得ないシチュエーションでの話だ。考えてみたまえ……、我々の陸軍は強大だがどうやって全力をぶつける?」
ここまで話して、部下もようやく王の言いたいことが分かった。
「海……ですか?」
「そうだ、日本は海に囲まれた島国––––世界屈指の海洋大国だ。先島諸島ですら日米艦隊に阻まれれば突破できないのに、どうやって日本本土に上陸する?」
「急成長した人民解放軍なら可能です!」
「確かに可能だろうな、解放軍が保有する水上艦艇の9割を喪失して、1個旅団でも九州に上陸できれば良い方だ。しかしその後はどうする?」
王の問いに、部下も押し黙ってしまう。
そう––––最初から不可能なのだ、日本侵攻はエベレストを裸で登るも同然の行為。
この動画で猛威を振るっているのは、小銃を除けば古い部類の兵器ばかり。
だが、もし中国軍が九州や沖縄に上陸すれば––––この動画よりもっと酷いことになるだろう。
最新鋭のドローンと、最新鋭のステルス戦闘機に頭上を取られ続け、最新鋭の戦車と最新鋭の自走砲から砲撃を受ける。
数でも質でも打ちのめされ、海岸線で死体の山を築くことになるだろう。
王は続けた。
「海洋大国の陸軍は存在するだけで非常に脅威だ、なぜロシアがウクライナに行って北海道に行かなかったと思う?」
「……海があったからですか?」
「そうだ、今のロシアはソ連の頃より遥かに落ちぶれ……日本は逆に進化を続けた。現在の極東ロシア軍は艦隊戦力でも陸軍戦力でも、日本に遠く及ばない」
部下としてもゾッとする話だった。
世界最強の日米艦隊を突破して、沖縄に陸軍を上陸させることがいかに無理ゲーであるかと。
「だからロシアは北海道を諦め、ウクライナに行った……」
「そうだ、それでも結果はロシアの負けだったがな。これでわかっただろう? 我々の陸軍が持つアドバンテージは日本に対してなんら影響を与えられない、全く……これだから島国はチートなんだ」
悪態を吐いた王は、タブレットを睨んだ。
「しかしこのままでは終わらせんぞ、中国こそ世界の中心だ。我々は必ず––––あのダンジョンを手に入れる!」
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