第235話・結成、中国大使館殴り込み部隊
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――翌日。朝8時。
相変わらず東京の日差しは早朝でも強いが、一晩で色々なことが起きた。
100万人を超える人間が、テオドール&ミーナペア、坂本&久里浜ペアを追い求めて大移動。
関東全域を巻き込んだお祭りに加え、中国国家安全部との極秘裏の戦闘。
なんとか無事にベルセリオンを保護することに成功した透たちだが、ここに来て問題が生じていた。
「おはようございます、ベルセリオンさん。よく眠れましたか?」
マンションの外へ出てきたベルセリオンに、一晩周囲をパトロールしていた四条が太陽のような笑顔で挨拶した。
しばらく見つめ合った両者だが……。
「プイッ」
四条の挨拶を、ベルセリオンは無視した。
そっけなく秋山の部屋へ戻っていく少女を見ながら、四条はガックリと肩を落とす。
「あうう……、やっぱり見向きもされませんか」
結構なショックを受ける彼女に、後ろから影が近づいた。
「まっ、仕方ないわな」
栄養ゼリーを飲みながら歩いてきた透が、慰めるように四条の肩を優しく叩く。
「いえ……、わかってはいたことです、彼女はあくまで秋山さんに心を開いたのであって、わたしたち自衛隊にはまだ少し警戒心を持っていると」
「テオの時は俺たちが初接触だったから良かったけど、こうなるともどかしいな」
「しかし、秋山さんでなければ彼女の心を溶かせなかったのも事実です……。わたしはわたしのやり方で、絶対に仲良くなります」
決意に満ちた顔の四条は、凛々しく美しいものだった。
その横顔に、透は思わずドキッとしたが……。
「まっ、ゆっくりやろうぜ。あんま気負うなよ、シャワーまだだろ」
「確かにまだですが……、近くの駐屯地かダンジョンに帰るまでお風呂は無いんじゃ?」
「秋山さんが貸してくれるってよ、錠前1佐が掛け合ってくれた。なんでも防衛大の同期なんだと」
「これはまた……、凄い偶然ですね」
「っというか必然じゃね? まぁそんなわけだから、四条は今からでも浴びてこい。この後から錠前1佐と一緒に中国大使館だ……間違いなくハードだぞ」
「では……」
お言葉に甘えて、四条は5階にある秋山の部屋へ入っていった。
見送った透は、飲み終わったパックゼリーを握りつぶす。
「通信感明、どうか?」
駐車場に止めてあった82式指揮通信車をノックして、中の隊員に話しかける。
すると、ハッチが開いて返事が来た。
「感度良くない、おそらく……この区画一帯に至るまでが電子妨害を掛けられてる」
通信中隊に属する隊員が言うのだから、間違いないだろう。
昨晩、中国部隊が秋山宅へ突入したと同時にこのエリアで停電が発生した。
最初は物理的な回線切断かと思ったが、調べてみると遠隔から電力会社をハッキング。
一番近い変圧設備にアクセスして、秋山の住むマンションを停電させていた。
電力自体は既に復旧したが、未だに通信などが上手くできない状態にある。
「やっぱ……」
透が私見を述べようとしたとき、横から声が掛けられた。
「中国大使館を中心として、半径数キロをジャミングしてるんだろうね」
私服姿にサングラスといった格好の錠前が、肌を潤わせながらやって来た。
「全く度し難い連中だ、やっぱ一度本気で痛い目見ないとわかんないか」
「1佐が言うと冗談に聞こえませんが」
「だって冗談じゃないし、事前に言ってた通りだ。今から中国大使館に凸るぞ。MCX忘れんなよ?」
やっぱりかと言った様子の透は、当然上官の命令には逆らえない。
自衛官が大使館を襲撃するなど、本来あってはならないのだが……。
「ワクワクするね♪」
彼––––錠前勉に、常識は通用しない。
まぁ今回も向こうが先に仕掛けたわけだし、言い訳は1佐や外務省にしてもらおうと思った。
錠前がウキウキでその場を去ってしばらくした後、秋山の部屋から帰ってきた四条が歩いてくる。
迎えた透は、思わず胸を高鳴らせた。
「ど、どうでしょう……? 民間人への偽装作戦はまだ続いてますし、替えの服がこれしか無かったので」
そう言った四条の服装は、昨日透が好みド直球で選んだフェス風夏コーデだった。
圧倒的な破壊力を前に、透はドギマギしながらも……。
「似合ってるよ」
ポーカーフェイスを演じ切ることに成功した。
かくして、透、四条、錠前、特戦群を中心とした特務任務小隊。
––––“中国大使館殴り込み部隊”––––が作戦を開始した。
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