表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/456

第231話・錠前と秋山

 

 秋山の住むマンションの周りは、警察と自衛隊によって完全封鎖されていた。

 時刻は日没直前、屋上で手すりにもたれ掛かっていた秋山へ、声が掛けられる。


「やっ、久しぶり美咲」


 私服姿で現れたのは、真っ黒なサングラスを掛けた現代最強の自衛官––––錠前勉だった。

 彼は秋山に近づくと、まだ上空を旋回するヘリの音の中で呟く。


「期待半分だったけど、美咲ならやってくれると信じてたよ」


 隣にもたれ掛かった錠前に、秋山はため息を吐きながらポケットへ手を入れた。

 その顔は、ベルセリオンに向けていた優しいものとは全く違った。


「いつから自衛隊は、民間人を巻き込んで作戦するようになったの?」


「望んでそうしたわけじゃないさ、だが結果的にこうなった……だから僕が謝罪に来たんだよ」


「フーン、まぁ良いけど……あの錠前くんが私に頭を下げる姿が見られるなら、悪くないかもね」


 意地悪気な笑みを浮かべた秋山は、薄っすらと見え始めた星空に目を向ける。


「まぁテオドールちゃんが私のお店に来た段階で、これは偶然じゃないって察してたけどさ」


「言っとくが仕込んでたわけじゃないよ、新海が予約したのがたまたま美咲の店だっただけ」


「どうだか、錠前くんはそうやってすぐ嘘つくし」


「僕の信頼度薄くない……?」


「まぁそんなことはどうだって良いのよ、本題に入りましょ」


 サングラス越しに錠前の魔眼を見つめた秋山は、真剣な表情で続けた。


「ベルちゃんはどうなるの? まさか殺したりしないわよね?」


 恐ろしい殺気すら込めた問い。

 もし彼女に害をなす様なら、たとえお前でも容赦しないという目つきだった。


 だが、錠前はそれすら気にせず飄々と答えた。


「うーん、彼女次第かな。あの子がもしダンジョン側に帰る選択をすれば……今度こそ、責任を持って僕が殺すよ」


「それは……、彼女が侵略者だから?」


「そうだね、でも多分大丈夫」


 手すりから離れた錠前は、ニッと微笑んだ。


「美咲のおかげで、そうなる未来はきっと消えた」


「……、はっ」


 呆れ笑いを浮かべた秋山は、ふと昔の頃を思い出した。

 防衛大時代……最強の錠前と、よく喧嘩していた真島、間に入るように絡んでいた自分。


 3人それぞれ別の道を選んだが、後悔はしていない。

 あっという間の青春、自分の全てを否定した最高の時間、だからこそ異世界の侵略者にも優しくできた。


「民間人に過ぎないわたしができるのはここまでよ……、後はお願い」


「わかった。でも美咲、今からでも自衛隊に戻るつもりは本当に無い? お前さえ良ければ……掛け合うくらいはできるぞ?」


「私は拒んだ人間よ、そんな資格全く無い。お国の防衛は……君らみたいな最強に任せるわ」


「そうか……、じゃあベルセリオンくんにお別れをしておくといい。多分、もう当面会えないだろうからさ」


「うん、それはするつもり。ところで錠前くん」


 下を指差した秋山は、ニッコリと笑った。


「もう部屋が住めないくらいボロボロなんだけど、わたしは明日からどうすれば良いかな?」


「あー……」


 しばらく悩んだ錠前は、指をマネーの形にした。


「ちょっと中国大使館から、賠償金巻き上げてくるわ」


 そう呟いた錠前は、翌日––––本当に中国大使館へ突っ込むことになる。


231話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」


と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ほえちゃんにおける新海さんの立ち位置になるかと思ったけども。。 ベルちゃんは保護者(秋山さん)が必要ですよー
[一言] 能力は別として、力関係はなんとなく察したw 損害賠償として新宿だから──300万¥くらいを要求しよう J「とりあえずはこれだけいただこうか(スッ)」 C「わ、わかった(くっ、300万元なら…
[一言] 錠前サン「賠償は、ニコニコ現金払いしか受付ないぜ。円かドル限定なw君らの外貨は紙くずになる予定なんでw」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ