第23話・ユグドラシル駐屯地防衛戦
「撃ち方始めッ!!」
敵が距離2キロにまで迫った時点で、最初に発砲したのは陸上自衛隊の『90式戦車』4両だった。
ドイツのラインメタル社製120ミリ滑腔砲から、対戦車榴弾が轟音と共に一斉発射される。
この主砲は、以前性能不足で同世代の戦車より威力が劣ると言われていたが––––
––––ドドドドォンッ––––!!!!
4発の榴弾は、綺麗な弧を描いてゴブリンの集団へ着弾した。
爆風が敵の先頭を吹き飛ばし、陣形にいきなりヒビを入れてしまう。
戦車砲の性能不足は、弾薬を改良することによって改善されていたのだ。
しかも、この戦車には自動装填機能が付いている。
僅か4秒という短時間で、次弾が発射された。
「弾着ッ!」
後続の敵群へ命中。
3000を超える敵が、ほぼ一方的に撃ち減らされていった。
戦車が射撃を続ける中、次に攻撃を始めたのは『FH-70』155ミリ榴弾砲。
16門が統制射撃され、1.4キロ先のゴブリン・デビル目掛けて落ちていった。
「3、2、1––––今ッ!!!」
対人空中炸裂弾が、ゴブリンたちの上空で爆発した。
榴弾砲の攻撃は、相手の頭上で炸裂させる事で効力を発揮する。
シャワーのように降り注いだ鉄の破片が、容赦なくオーガを血まみれにした。
それでも不思議だったのは、敵が前進をやめないことだった。
遠距離砲撃で既に半数が失われているのに、逆に勢いをつけて突っ込んで来るのだ。
ヤケになったのかは知らないが、透たちのトーチカにそれを受けて無線指示が入る。
『キルゾーンに入り次第、“突撃破砕射撃”を開始せよ』
突撃破砕射撃とは、陣地防衛における最後の大攻撃だ
持てる全ての火力を使って、相手を殲滅する。
「さて、じゃあ俺はせっかくだしこれを使うか」
トーチカの穴から外へ向けて設置された、『ブローニング12.7ミリ重機関銃』に触る透。
これはなんと基本設計が80年前でありながら、未だに全世界で現役の化け物級マシンガン。
第二次世界大戦、ベトナム戦争、アフガニスタン侵攻、湾岸戦争、そしてウクライナ戦争において絶大な威力を誇っている。
透がコッキングレバーを引いた様子を、四条がカメラに収めた。
「距離900––––突撃破砕射撃、始めッ!!」
各陣地から、ブローニングの一斉射撃が始まる。
12.7ミリと言えば、人体に掠めただけで部位が消失する威力。
圧倒的なパワーと、安定した連射で雑多なゴブリン共を引き裂いていく。
––––ババババババババッ––––!!!!
この弾幕射撃でも特に強烈だったのが、途中で透の見かけた87式高射砲による制圧射撃。
35ミリの炸裂徹甲弾は、高層ビルをまさしく引き裂く威力だった。
ブローニングと87式の攻撃により、もはや敵は壊乱状態も良いところ。
とっくに侵攻能力など消え去ったところで、自衛隊はトドメを刺しに掛かる。
『全部隊––––全ての火力でもって、敵群を粉砕せよ!!』
遂に歩兵のライフルによる射撃も加わり、さらに81ミリ迫撃砲が十数連続で発射。
砲弾の嵐が上から襲い、正面からは雨のごとき弾幕射撃が立ち塞がる。
ほぼ全てのモンスターが駆逐された中、唯一鉄条網まで辿り着いたゴブリンが––––ボロボロの状態で口を開いた。
「話が違う……、日本人というのは世界最弱の民族じゃなかったのか」
呟いたゴブリンが、機関銃で即座に蜂の巣にされる。
亡骸は、戦車砲の射撃により結晶すら残らなかった。
––––第1次ユグドラシル駐屯地防衛戦。
敵性集団、戦死3521体。重軽傷者無し。生存者ゼロ。
陸上自衛隊、戦死者ゼロ。重軽傷者無し。弾薬損耗のみ。
先手を受けた自衛隊側による、一方的勝利で戦いは終わった。
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