第22話・大陸への抑止力
『非常事態発生! 非常事態発生! 駐屯地の北12キロより敵群が接近中! 各部隊は速やかに外周防衛へ当たれ!!』
非常警報アナウンスが流れる駐屯地内で、透たち小隊は全力疾走していた。
「この駐屯地に敵襲なんて、今回が初めてだな……!」
透の言葉に、四条が息を切らさず返す。
「えぇ、ここは制圧した第1エリアの平原に建てた駐屯地です。モンスターがポップするなんて今までありませんでした」
「15キロ以上北で発見されたなら、実際はさらに遠くから来てることになる……。別のエリアからの敵だ、いずれにせよ––––」
「はい、かなりイレギュラーなことです」
武器庫に着くと、他の隊員達が順番に自分の銃器をロッカーから持ち出していた。
透はこのエリアを制圧した時にも使った、最新の『20式ライフル』。
四条はその前世代に当たる『89式ライフル』を手に取った。
この『20式』と『89式』、同じ弾薬を使うのだがスペックには凄まじい差がある。
89式がフルサイズで大きく、アタッチメントもロクに装着できないのと違い、前者は全てを克服していた。
透の20式は米国製最新ドットサイトの、エイムポイントM5を始めとした各種アクセサリーを装備。
さらに、J3高威力弾の採用で89式よりコンパクトでありながら、同銃を超える威力を持つのだ。
米欧中露と見渡しても、世界で最上位に位置する国産ライフルと言えた。
「行くぞ」
事前準備していたマガジンを装備し、各々武器庫を出る。
「隊長、敵は後10キロです。かなり足が速いようで……対戦ヘリは間に合わないみたいです」
坂本のネガティブなニュースに、防弾ベストを着込んだ透は肩を叩いて返事。
動揺など欠片も見せなかった。
「砲迫の支援と、こういう時のために準備した防御陣地がある。地形有利はこっちだ、久里浜士長!」
「は、はい!」
「お前の銃、ホロサイトのゼロインは何メートルで設定している?」
「えっと……サークルレティクルの中央、1MOAドット部分で50メートルです」
「近距離設定だな、じゃあドット1つ分を上に照準してから撃て、そうすればキルゾーンの中なら大体当たるだろう」
「了解!」
初の実戦ということで、久里浜はかなり緊張していた。
だが、透のアドバイスによって少し安堵した様子を見せる。
リーダーが毅然としている分、士気が高い状態を維持できていたのだ。
こういう時、ボスと戦った経験のある透は強かった。
「坂本は久里浜とタッグを組んで、第7トーチカで守備しろ。俺と四条は隣の第8トーチカに行く」
「「「了解!!」」」
外に出ると、自走砲と迫撃砲が発射準備を行っていた。
防空陣地から、『87式自走高射機関砲』が2つある砲門を正面に指向する。
これは、かなり頼りになりそうだった。
しばらくして、四条が歩み出る。
「坂本3曹、これを」
「えっ? カメラ?」
「今回は防衛戦、いつもと違って難易度は低いので第2カメラとして機能してください。命を賭けて配信するのがウチの部隊の任務ですので」
「了解です」
受け取ったカメラを、坂本はすぐヘルメットに装着する。
四条の方も、ヘッドカメラとボディカメラの2つを付けていた。
「今配信してるの?」
「駐屯地内の構造は機密ですから……さすがにしていませんが、配置に付いたら開始します」
「そりゃそうか、戦場の生配信なんて……中国軍相手だったら絶対できないだろうし」
現代のハイテク戦争は、スマホ1つで命取りになる。
ウクライナ戦争では、陣地を自慢気に撮影したロシア軍が、数分後にウクライナ軍のハイマース自走砲によって壊滅させられた。
配信とはダンジョン内だからこそ出来る、ある意味でイレギュラーな情報戦だ。
自衛隊の実力を見せることによって、中国やロシアに対して大きな抑止力を発揮できる。
透たち配信チームの重責は、改めてとてつもないものなのだ。
口で言ってもこちらを見くびる無法国には、直接見せつけるしかない。
戦争で現状を変更する国には、毅然とした“脅し”が必要なのだ。
それぞれが配置に着いたと同時、敵は丘陵の奥から現れる。
「さて、大陸の人間に……本場島国の防衛戦を見せてやろう」
透の指示で、四条と坂本のカメラが全世界配信を開始した。
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