第217話・親友の裏切り
なんか感想に返信したはずなのに、反映されてないことがたまにあるようです。
私は感想全部見て返信するスタイルなので、返事来てなかったらそういうことだと思っていただければと
真島の言葉に反応する間もなく、錠前の首に鋭い痛みが走った。
彼の首から大量の血が噴き出し、目の前が一瞬暗くなる。
「なるほどね……」
「悪いな、俺も公僕の身だ……。仕事はこなさなきゃならん、まぁ安心しろ、墓参りには行ってやるさ」
言うやいなや、真島は即座にハンドガンを連射。
超至近距離から放たれたそれは、真っ直ぐ錠前の顔面をぶち抜いた。
口から上を完全に潰された錠前が、椅子から床に崩れ落ちた……。
フローリングに血をぶちまけ、動きが完全に止まる。
さらに間髪入れずに、ウエイトレスへ変装した女性公安が追撃。
手に持ったナイフで、仰向けに倒れた彼の心臓を刺し潰した。
店内の公安たちが見守る中、真島は時計を見て呟く。
「9時42分、目標暗殺。対象の事後処理に移る」
拳銃をしまった真島は、まずカメラで錠前の身体や顔を念入りに撮った。
医療知識を持つ人間にも関わらせ、対象の生命活動が完全に終了したことを示すバイタルパターンまで取る。
書類に書くには十分な証拠が、これで揃った。
一通りの作業が終了し、他の公安員たちもホッと安堵した瞬間だった……。
「雄二、もう良いかい?」
「「「「「ッ!!!?」」」」」」
死んだはずのアノマリーの口が、流暢に動いた。
周囲の人間が一斉に武器を構える中、真島だけはタバコを取り出す。
「あぁ、もう良いぞ。すまなかったな……苦手な演技させちまって」
真島を除いた公安たちは、全員が汗を流す。
見れば、完全に潰された脳みそと心臓が……凄まじいスピードで再生していくではないか。
出血は止まり、顔面や胸は綺麗サッパリ元通り。
起き上がった錠前は、その場で背伸びした。
「本当だよ雄二、僕が演技下手なの知ってるでしょ」
「そのために顔面と心臓潰したんだよ、まぁバイタル止めてくれたのは助かったよ……おかげで良い報告書が書けそうだ」
悪い笑みを浮かべる2人に、ウエイトレスの格好をした女性がドン引きしていた。
「あっ、お姉さん。ジュースのお代はこいつに持ってもらってよね。僕一口しか飲んでないから」
「あっ……、えっ」
端正な顔をした化け物を前に、女性は完全にフリーズしてしまった。
「ウチの部下を怖がらすな、お前が人間辞めてんのはここでは俺しか知らねーんだから」
「あっ、そうなの? ごめんねー」
屈託のない笑顔の錠前に、公安職員たちは完全に畏怖しきっていた。
手応えはあった、頭と心臓を潰して……呼吸も脈も10分以上止まっていたのに。
なぜ生きている……?
一体、こいつは何者なんだ……。
「雄二も結構博打したね、これで公には僕は始末されたことになんの?」
「1ヶ月くらいは騙せるだろう、さっきも言った通り……公安や政治家に、お前を疎ましく思う存在がいるんでな。そいつらを一網打尽にするための餌にする」
真島は最初から、拳銃やナイフで錠前を殺せるなど……微塵も思っていなかった。
錠前もまた、親友である彼が自分を本気で殺すなら、もっと色々準備するだろうと判断。
ゆえに、互いの同意の下––––酷い八百長が行われたのだ。
全ては……。
「日本の上層部に巣食う、腐ったミカンを処理するため……か」
「そうだ、今の勉は最強になったんだろう? だったら自衛隊で働いてもらった方がずっと国益になる。困るのは大陸の連中だろう」
「なるほど、僕が死亡した証拠を使えば……そいつらがドンドン炙り出せるというわけか」
「正解、残念ながら今の日本には……金や権力のためなら祖国を売るクソ野郎が多い。俺の仕事は、そういった奴らの排除だ」
「良い作戦だけどさー、それって結構私情入ってんじゃね? 公僕としてどうなのさ」
からかいを含めた問いに、真島はタバコを吸ってから答えた。
「言っただろう勉、俺はいつだって国のために動く。そもそも公安入ったのだって私情なんだよ。ほら」
血だらけの錠前に、真島が新品のシャツを渡した。
「同じ柄のを用意しといた、任務があるんだろう? もう行って良いぞ」
「さすが雄二、気が利くね」
素早く着替えて、錠前はMP7の入ったバッグを手に持った。
相変わらず周囲の公安は、化け物を見る目だ。
「久しぶりに会えて嬉しかったよ雄二、今度は仕事抜きで飯でも食おう」
「あぁ、良い店を探しておく。国内のゴミ掃除は任せろ。お前は存分にダンジョン問題に注力してくれ」
「おう」
錠前を見送った真島に、公安職員が話しかけた。
「ヤツは……、錠前勉とは。何者なんですか?」
「あ?」
タバコの紫煙を吐き出した真島が、少しの笑いを見せながら答えた。
「“最強”だよ、そして––––俺みたいなクズにいるたった1人の親友だ」




