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第214話・SIG-MCX

 

 ––––3日後。


 錠前1佐により、第1特務小隊全員に外泊許可が出された。

 ダンジョン派遣隊は、当然であるが本土の自衛官といる場所が違うためなかなか外泊ができない。


 そこへ来た、突然の本土帰投のチャンス。

 これを断る人間はいなかった。


 前回は中露北の襲撃、加えてリヴァイアサンの到来によって十分に楽しめなかったのだ。

 しかし前回退けたからといって、今回無事に終わる保障は無い。


 むしろ、ダンジョン運営や中露北がハッキリ敵対してしまったため、前回よりも厳重にする必要があった。


「っと言うわけで、全員にプレゼントがありまーす」


 いよいよ外出というタイミングで、小隊員たちは錠前に呼び出された。

 場所はいつものシューティングレンジ。


 机の上には、錠前の言う“プレゼント”が置いてあった。

 真っ先に反応したのは、ガンマニアの久里浜である。


「『SIG-MCX』!! しかもこれ、300ブラックアウト弾仕様ですか!?」


 興奮気味に持ち上げる久里浜と並んで、坂本も手に取る。

 それは8.25インチ(参考:一般的な長さは10.5〜14.5インチ)という非常に短いバレルと、そこからさらにコンパクトにできる、折り畳みストックを備えたアサルトライフル。


「へぇ、最新のモジュラー・アサルトライフルですか……。アタッチメントもゴテゴテ……すっごい高そうですけど。なぜ唐突に?」


 錠前1佐は微笑みながら、小隊員たちの反応を楽しんでいるようだった。


「唐突に、というわけじゃない。君たちが前回の新宿での任務で見せた活躍に対しての評価だ。特に、この外泊期間中に何が起こるか分からないからね、一応“念のため”だ」


 彼は机の上に並べられた新しい装備を指し示した。


「今の日本は超好景気状態だからね、欧米のこういう特殊用途な高性能ライフルも好きなだけ買えちゃうわけ。まっ、だからと言ってガス流量を調整せずにサプレッサーなんか付けたら……タダじゃ済まさないけど」


「ギクっ……、はっ。反省しています……」


 先日無限ハイポート走の刑に処され、吐く寸前までしごかれた久里浜が顔を逸らす。


 小隊員たちは錠前の言葉の重みを感じ取りながら、新しい装備に目を向けた。

 透は特に慎重にSIG-MCXを手に取り、操作方法を確認し始める。


「20式と結構違いますね……、海外のライフルは初めてだ」


 透の言葉に、他の小隊員たちも同意して頷いた。

 いつも外国製を使っている久里浜も、興奮を抑えきれない様子で続けた。


「これならどんな相手が来ても余裕で圧倒できる。しかも300ブラックアウト弾なら、サプレッサーと合わせれば静音性も高いし、街中で使いやすい」


 坂本も慎重に新しい武器を調べながら、冗談めかして言った。


「まぁ、たまにはこういう最新装備をもらえるのも悪くないですね。これで安心してショッピングモールに行けますよ」


「骨董品好きのアンタに使いこなせんの?」


「舐めんなクソガキ、お前より銃に触れた時間は長い。外国製だろうとボールペンみたいに使いこなすだけだ」


「フーン……まっ、わたしも体格的に余裕かしら。将来もっと身長や胸が成長したら、さらに大きい銃使うし」


 久里浜の自慢気な声に、坂本は嘲笑うように言った。


「プッ、19歳も終わりだってのにまだ成長期があると思ってるんだ。お前みたいな“絶壁”には良いライフルだと思うよ?」


「殺すッ!!」


 銃を置き、その場で取っ組み合いを始めた2人は無視して、透がMCXを構えた。


「試し撃ちしてみても?」


「あぁ、構わないよ」


 お言葉に甘え、透は45発入りの拡張マガジンを差し込んだ。

 重いチャージングハンドルを引いて、初弾装填。


 既に調整済みのドットサイトで、いくつかの的を撃ち抜いた。


「どうですか? 透さん」


 四条の問いに、透は満足そうに頷く。

 銃口を下げ、安全装置を掛けた。


「悪くない、こんなに小さい銃なのに破壊力はM4クラス。反動も思ってたよりキツくない」


「じゃあわたしも……」


 透が撃ったMCXを受け取り、彼女もトリガーを引く。

 サプレッサーはキッチリ仕事をこなしており、四条の細かい連射もかなり静音されていた。


 45発が撃ち終わり、ボルトストップが掛かる。


「面白いですね、こんなに小さいのに……これなら配信しながらだって余裕で戦えます」


「さすが広報官だな、熱心なことで」


「まぁさすがに今回も銃撃戦があるとは思いませんが……用心は必要です」


 マガジンを抜いて銃が置かれると、錠前がパンパンと手を叩いた。


「じゃあ各自しっかり休暇で英気を養うように、あとここで1つ情報を共有しておく」


 錠前が1枚の写真を机に置く。

 そこには、捕虜として捕まえたベルセリオンが映っていた。


「出来ればで良い、このガキを本土で探して欲しい。っというのも、彼女––––尋問中に転移魔法で逃げちゃった⭐︎」


 小隊全員の「何やってんだ」という顔をよそに、彼は続けた。


「新宿のどこかにいるはずだから、そっち方面に行く予定なら手伝って欲しい。もちろん強制はしないよ。今回は休暇であって任務じゃないから」


「じゃあすみません、わたしとこの陰キャは無理そうです」


 挙手した久里浜が、ワクワクと嬉しそうに続けた。


「わたし達、横浜でサバイバルゲーム遊んでくるので!」


SIG-MCX(第1特務小隊仕様)。

アタッチメント一覧表。


ドットサイト:SIG-ロメオ8

マズル:SIG純正サプレッサー

フラッシュライト:シュアファイアM600

グリップ:SIG純正ハンドグリップ

マガジン:45ラウンドPマグ

弾薬:300BLK

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久里浜が図太すぎて好きです 丁重なお願い(命令)を受けて堂々とデート宣言とは... ベルちゃんの現状も気になるところなので、次回も楽しみに待ってます
[気になる点] 灰皿は3日間『無事に』生き残ることができたのだろうか 残飯漁って「こんな美食にタダでありつけるなんて天国ね!」とか言ってたらそっとしておこう そっとしておいたら魔力回復して好き勝手…
[一言] >> 強制はしないよ。今回は休暇であって任務じゃないから」 >> 「じゃあすみません、わたしとこの陰キャは無理そうです」 オイそこのちんちくりん 「お願いの形をした命令」 だって事に気付け…
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