第21話・初デビューは上々のようです
自衛隊史上初の銃器レビュー動画。
透からすれば、彼女がこう言い出した段階で外堀も埋めて来たのだと悟る。
おそらく、“あの上官”からも許可を貰っているのだろう。
なら特に、問題は無かった。
「は、はい……四条2曹。了解しました」
「先輩が言うなら……」
四条の勢いに、結局坂本も久里浜も逆らえなかった。
即席の机に並んで座らされ、目の前に愛銃を置く。
その際、かなり距離が近く––––
(久里浜のヤツ……! 髪が長いせいか? めっちゃ良い匂いして気が散るッ)
坂本の情緒をかなり乱れさせた。
「ちょっと、お2人共もう少し互いに寄ってください。カメラに入り切りません」
指示通り、ほぼ密着に近い状態へ。
久里浜は明らかに全身シャンプーのような香りがしており、とても普段汗臭いが常識の自衛官とは思えなかった。
「四条、今回のスタイルはどうするんだ?」
「そうですね透さん、配信を行いつつ……アーカイブは消して、後でショート動画に纏めるつもりです。1分動画なら多少テンポが悪くても編集で誤魔化せます」
「なるほど」
そして遂に、緊張する2人へカメラが向けられ、
「じゃあ始めますね」
容赦なく配信開始ボタンが押された。
同接は、すぐに数万人を超える。
「カメラよし、配信に来てくれた人、今日はラッキーですよ。今回は新しい仲間と愛銃の紹介です! アーカイブは残しませんので」
ヒョイとカメラを反対に向けた四条が、ここに来て初めて顔出しする。
その際、横で監督する透の姿も映って––––
【四条2曹の生顔だー!! くっそ可愛いじゃん!!!】
【日本の救世主、新海3尉もいるぞ! 今回豪華過ぎじゃね?】
【新しい仲間ってどゆこと?】
コメント欄の速度が凄まじい。
ゲリラ配信で、よくもまぁこんなに盛り上がるものだと透は思う。
しかし、大半が本人の功績だということをなぜか自覚が無い。
「じゃあ早速紹介、久里浜士長!」
カメラを向けられ、小動物のようにきょどり倒す。
だが、特戦のエリート意識が彼女のスイッチを入れさせた。
「こ、こんにちは。今回初めて配信チームに加わった久里浜士長と言います。今日は愛銃も含めて覚えていってください」
【王道美少女キタ––––!!!!】
【小ちゃくてセミロング可愛い! 愛銃はなんだろ?】
【坂本3曹真顔で草】
視聴者には知るよしもない。
久里浜は今、坂本によって背中を傷ができない程度につままれていた。
別に嫌がらせではない。
久里浜本人が気を引き締めるため、坂本にお願いしたのだ。
「わたしは第一空挺団所属で、この銃は『HK416A5』って言います。今回配信チームへ加わるにあたって導入された、試験用小銃です」
カメラが銃に向けられると、ガンマニア達は揃って興奮する。
【すげぇレア銃!! 自衛隊公式レビュー動画とか初めてじゃん!!】
【EXPS3タイプのホロサイトに最新式のD-VALじゃん、っというかカスタムされ過ぎててヤバい】
【EXPもD-VALも普通手に入らん超高性能アクセサリーだぞ、頭米軍かよ(褒め言葉)】
【試験用小銃なら、確かに納得だわ】
四条の予想は命中し、リスナー達はみんな久里浜の身分を第一空挺だと思い込んだ。
確かに、これを済ますことで彼女の身分は上手く隠せる。
「この銃は口径5.56ミリ、カスタムは結構近接向き……かな? あっ、ストックも変えてまーす」
【マグプルのパーツ多めだな、センスある】
【ハンドガードはガイズリーか、これなら女の子でも持ちやすいな】
【久里浜士長と結婚したい】
不慣れながらも愛銃を紹介する久里浜は、いつの間にか凄く楽しそうに喋っていた。
こっそり坂本がつねるのをやめても、テンポは決して変わらない。
和気あいあいと、面倒くさいガンマニアの質問へ完璧に答えていた。
「上手く行きそうだな」
「えぇ、意外といけそうですね。千華ちゃんならできるだろうとは思ってましたが」
カメラの背後で腕を組んだ透と、見守る四条が満足そうに頷く。
そろそろ一区切りしようと思ったところで、“事件”は起きた––––
『全隊緊急呼集!! 当駐屯地へ敵対生物群接近中! 各部隊は速やかに施設の防衛に当たれ!!!』
非常事態––––敵襲が発生した。
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