第208話・日本海軍航空隊
––––護衛艦、『かが』。
いずも型護衛艦の2番艦にして、海上自衛隊唯一の航空母艦。
かつては先端が台形だった飛行甲板が、今では完全な長方形となっており、誰がどう見ても空母能力を獲得している。
「ドラゴン隊各機、発艦用意よし!」
艦載機はかつてのSH-60対潜ヘリに加え、最新鋭ステルスジェット戦闘機F-35B。
これは、垂直離着陸が可能なタイプの戦闘機で、かつ短距離離陸ができる代物。
大日本帝国海軍以来––––初めて手に入れた、夢の艦載機だ。
東シナ海から僅かに北へ行った海域に、護衛艦『かが』は浮かんでいた。
周囲には、護衛の艦が取り囲むように航行している。
「コントロールからドラゴン1へ、発艦を許可する」
「こちらドラゴン1、了解。クリアード・フォー・テイクオフ!」
凄まじい轟音を立てて、『かが』の飛行甲板からF-35B戦闘機が飛び立った。
彼らの任務は、また来るかもしれない中国の攻撃から、仁川港の邦人を守ること。
既に『おおすみ』は九州まで満員を乗せて帰っており、現在は同型艦の『くにさき』が任務を行っていた。
中国への報復は、実施も含めて検討中だが……どんな内容になるかは不明だった。
現代の自衛隊なら、海岸部のレーダー基地を潰すなどハッキリ言って容易である。
無難な線を選ぶならその辺りだが、まだ政治的落とし所が決まってない以上……現場ができることは限られていた。
そうこうしている内に、『かが』を発艦した4機のF-35Bは仁川港のすぐ近くまでやってくる。
今度また大陸から巡航ミサイルが来たとしても、今こちらには空母機動艦隊がいる。
護衛のイージス艦に掛かれば、さっきより大規模な攻撃でも十分迎撃可能だった。
っと、そう思っていた時……レーダーに反応があった。
「北東方面より接近中の機体あり、4機編隊です」
「こちらリーダー、IFFに掛けるぞ。米軍かもしれん」
すぐさまIFFと呼ばれる敵味方識別装置を使ったところ、答えはすぐに出た。
「IFF照合、米軍ではありません。韓国空軍です」
しばらく様子を見ていると、徐々に機体が映って来た。
そのシルエットは、空自でも見慣れた戦闘機。
––––F-15Kだった。
『こちら韓国空軍、未確認機へ告ぐ。貴編隊は韓国の領空に侵入している。ただちに武装解除し、我が方へ帰順せよ』
「「「「?」」」」
この無線を聞き、部下が思わずリーダーへ尋ねる。
「韓国の臨時政府から許可は貰ってませんでしたっけ?」
「そのはずだが……、多分勘違いされているのかもな」
ドラゴンリーダーが英語で答える。
「こちら、国連軍所属の日本海軍機である。韓国軍機へ告ぐ、我々はそちらの臨時政府から許可を得て領空を飛行している」
本当は海上自衛隊に一時的に所属している空自なのだが、ややこしいので一括で呼称。
自衛隊だと伝わらないため、外国軍相手には日本海軍と名乗るのが通例だった。
この返事に、韓国軍はすぐさま対応して来た。
「こちら韓国空軍、そのような指示は受けていない。もう一度言う! ただちに武装解除し、我が方へ帰順せよ! さもなくば撃墜する」
空自のパイロットたちは、大いに呆れた。
臨時政府とはいえ、ここまで仕事がガバガバなのかと。
そして、残念ながら今は有事だ……韓国軍に付き合っている暇は無い。
どうしようかと思案した時、後方のE-2Dアドバンスド・ホークアイ警戒機から緊急通信が入った。
「ドラゴン隊各機へ通達!! 青山上空を敵戦闘機……レーダー反射面積から見て、おそらく“ステルス機”が接近中!! 大至急対応に当たれ!!」
ステルス機……っとなると、おそらく中国空軍のJ-20戦闘機だろう。
手強い相手だ、一刻でも早く迎撃に専念したいところだったが……。
「こちら韓国空軍! 日本海軍機へ告ぐ! ただちに武装解除せよ!! さもなくば撃墜する!!」
並走して飛ぶ韓国軍機が、それを許してくれなかった。
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