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第207話・黄海防空戦

 

「『きりさめ』より続報! 第一波ミサイル60発に続いて、第二波ミサイル35発が接近中。推定速度マッハ5以上! これは––––“極超音速ミサイル”です!!!」


 艦内の緊張が一気に高まった。

 極超音速ミサイルの脅威は、通常のミサイルとは全く比較にならない。


 亜音速巡航ミサイルと違い、迎撃の時間は非常に限られている。


「全力で撃ち落とすしかないな。『きりさめ』に指示、迎撃準備を急げ!」


 群司令の命令が下り、『きりさめ』の乗組員たちは迅速に動き始めた。

 また、米イージス駆逐艦も同様に迎撃態勢に入る。


 激しい時間との戦いが始まった。


「対空戦闘! 目標をトラックナンバーに指定開始!」


「目標セット、トラックナンバー1010から1070。指定!!」


 海上自衛隊の汎用護衛艦は、対潜性能こそ高いが防空性能はイージスに比べると遥かに劣る。

 メインのミサイルは、個艦防空用のESSMしか持ち合わせていなかった。


「米軍艦艇、迎撃開始!!」


 高性能イージスレーダーを持つ米軍が、まず最初に動いた。


「Launch anti-air missiles at targets 01 through 20!」


『きりさめ』より数キロ離れた場所で、米軍のアーレイバーク級ミサイル駆逐艦『ミリアス』が、対空ミサイルを次々に発射。


 その弾種は、米軍の最新鋭ミサイル“SM-6”。

 VLS(垂直ミサイル発射装置)から、業火を上げて次々に撃ち上がった。


 通常、軍艦は水平線より向こうの目標を捕捉できない。

 だがこのミサイルは、他の早期警戒機から情報を受け取ることで長大な射程を得ていた。


「米軍の対空ミサイル、間も無く弾着!」


 飛翔したSM-6は、亜音速弾の後方からマッハ5以上で突っ込んで来た極超音速ミサイルへ立て続けに命中。

 上空で火花を上げ、中国自慢の新兵器を見事に叩き落とした。


 だが––––


「こちら『ミリアス』、即応弾のSM-6は在庫切れだ! これよりSM-2による迎撃へ移行する!」


 高性能である宿命か、米軍をもってしても今のが限界だった。

 イージス駆逐艦『ミリアス』は間断なく対空ミサイルを発射し続け、距離50キロに迫るまでに極超音速弾18発、亜音速弾41発を撃墜。


 しかし全部ではない、ここでようやく『きりさめ』の火器管制システムが目標を探知する。


「対空戦闘! ESSM発射始め!!」


 護衛艦『きりさめ』の対空ミサイルシステムが次々と起動し、ミサイルの迎撃を開始した。


「サルボー!!」


 ESSMが連続で発射され、接近する巡航ミサイルに向かって飛んでいく。

 迎撃弾は即座に目標へ命中し、空中で派手に爆発が起こる。


 このミサイルは旧来のESSMから改良された新型であり、他目標同時交戦能力を持っていた。

 通常の対地ミサイルなら敵ではない。


 しかし、第二波の極超音速ミサイルは依然として迫っていた。


「まだだ、まだ終わってない!」


 艦長の叫び声が響く中、第二波の迎撃に全力を注ぐ。

 極超音速ミサイルの速度と破壊力に対抗するため、全ての防空システムがフル稼働する。


「主砲、撃ちー方ー始め!!!」


『きりさめ』に搭載された76ミリ速射砲が、全力射撃を敢行。

 かろうじて2発を撃墜したが……。


「ミサイル10発!! 本艦上空を通過!!」」


 激しい轟音を立てて、巡航ミサイル群が『きりさめ』と『ミリアス』の直上を一瞬で通り過ぎた。

 とてつもないスピードで、仁川港へ突っ込んで行く。


「CIWS、AAWオート!!!」


「間に合いません! 目標、既にCIWSの射程外へ!!」


「ッ!!『おおすみ』へ通信!! ミサイル10発がそちらへ接近中!! 大至急退避されたし!!」


 この通信を受けるよりも早く、『おおすみ』は既に行動を開始していた。

 せめて1人でも日本人を守るため、身を切る思いで離岸作業を進めていたのだ。


「レーダー探知!! 敵ミサイル……急速に接近中! 弾着まで1分!!」


「離岸作業、間に合いません!!」


 あまりに絶望的な状況で、群司令は艦内スピーカーを取る。


「本艦に乗り込んだ全ての人間へ告ぐ、衝撃に備え!!!」


 いよいよ極超音速ミサイルが水平線から姿を現す。

『おおすみ』に搭載されたCIWS(高性能20ミリ機関砲)が、ガトリング砲で弾幕を張るがとても当て切れない。


 遂にミサイルが目視距離にまで迫った時––––


「ッ!?」


 港に集まった日本人へ直撃するコースを取っていたミサイルが、上空で突如爆発した。

 それも1回では無い。


 立て続けに10発全てが、横合いから殴りつけてきた別の対空ミサイルによって撃ち落とされたのだ。


 死を覚悟した邦人たちの上空に、轟音を立てて飛んできた4機の“F-35B”戦闘機が翼を広げた。

 その機体には、グレーの日の丸がハッキリと描かれている。


 唖然とする『おおすみ』に、通信が入った。

 それは……先日まで、東シナ海にいたはずの海上自衛隊最強の戦力。


『こちら––––航空母艦『かが』、ミサイルは後続も含め全て、本艦搭載の戦闘機が撃墜した。引き続き邦人救出を続行されたし』


 広島県、呉基地を母港とする海上自衛隊唯一の空母。

『かが』を中心とする、空母打撃群が到着したのだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 一人がヒーローなのではなく、自衛隊全体がヒーローなの本当に本当に好きです、かっこよくてまたほれぼれしてしまいました。(ほとんど衝動的に感想を書いています) まるで映画のようにドラマチックで…
[一言] メタ的に、民間人に被害は出さないだろうと思っていても心臓がヤバい フィクションとはいえこれほど嫌われ役が多い中露北って、前世(リアル)で悪行を積んだからだよねきっと 創作の話ですら「あいつ…
[一言] おお、熱い 韓国における中露の人的被害は現在0だけど、犠牲者が出たらそれを口実に核ぶっぱしそうな感が凄いな 道理を無茶で押し込みそうだ
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