第206話・無言の宣戦布告
全世界から経済的に切り離された中国とロシアに、もはや怖いモノなど無かった。
国連軍が邦人の救出に来るのは知っていたので、北京はすぐさま経済制裁への報復措置を決定。
本土の基地から、航空部隊を発進させて遂に攻撃を開始したのだ。
宣戦布告も無しの、ウクライナの時と同じ奇襲だった。
「急げ!! スクランブルだ!!」
「今日だけで6回目だぞ! 機体整備がまだ追いついてない!!」
「良いから! すぐに上げさせろ!!」
––––韓国空軍 鳥山空軍基地。
ここでは、既にボロボロと行っても良いレベルで酷使されたF-16とF-35戦闘機が置いてあった。
中露の防空圏侵入は激しく、韓国空軍を想像よりもハイペースで消耗させていたのだ。
そのため、まだ整備が追いついておらず、飛ぶには時間が掛かった。
ゆえに、最悪の事態が発生する。
基地の空襲警報が大音量で鳴り響いたのだ。
見れば、共同で使用している在韓米軍の戦闘機が次々に飛び立っている。
戦闘のためではない、退避しているのだ。
『全基地職員へ通達! 大陸より巡航ミサイルが発射された。目標は本基地および仁川港! 発進可能な機体はただちに離陸せよ!!』
中国にもはや躊躇いは無かった。
本土の奥深くから、中国空軍のH-6型爆撃機が大量の空対地ミサイルを発射したのだ。
その数なんと80発以上。
防ぎ切るのはどうやっても時間が足りない。
「総員退避!! 機体は捨てろ!! バンカーへ逃げるんだ!!」
数分後……、鳥山空軍基地の韓国区画へミサイルの雨が降り注いだ。
防空ミサイルで15発は落とせたが、残りが全て容赦なく襲いかかった。
「あぁ……!!」
屋外に駐機していた戦闘機が、次々と大爆発を起こしていく。
いくら最新鋭の機体とはいえ、地上にいる状態ではあまりに無防備。
それだけでは終わらない。
ミサイルは、ハンガー内に止めてあったF-15K戦闘機にも命中した。
こちらは貫通用に遅延信管を使っているようで、屋根を貫いて保護されている戦闘機へ命中。
基地内の全ての戦闘機ハンガーが、大爆発を起こした。
一連の攻撃により、韓国空軍は高性能戦闘機を実に40機以上失ってしまった。
これは韓国軍の保有する戦闘機総量からすればかなりの……いや、致命的過ぎる痛手だ。
管制塔などの施設にも命中しており、韓国側死傷者はあっという間に200人を超える。
なお、戦火を広げないためか……ミサイル攻撃は米軍区画を一切襲っていない。
そのため、在韓米軍だけは一命を取り留めたのだが……。
––––仁川。
「沖合で警戒中の護衛艦『きりさめ』より通信! 敵航空部隊、巡航ミサイルを発射した模様!!」
港内で邦人収容の任務中だった輸送艦『おおすみ』は、突然の攻撃に何もできなかった。
「艦長、今すぐ艦を離岸させるのは間に合うかね?」
「難しいですね……、アレに対地ミサイルだけじゃなく対艦ミサイルも含まれていた場合、どの道無意味かと。それに––––」
艦橋から外を見る。
そこには、ところ狭しと港の敷地を覆う日本人がいた。
「彼らを捨てて、我々だけ逃げるのは……許されないでしょう」
「そうだな、護衛の艦をアテにしたいところだが……」
思考を巡らす群司令。
今黄海にいるのは、汎用護衛艦の『きりさめ』と米軍のイージス駆逐艦が1隻……。
これらがフルで対空ミサイルを撃ったとして……。
「……鳥山空軍基地に落ちた数と同じなら、迎撃は可能だが。それ以上となると」
言っている傍で、通信担当が声を上げた。
「『きりさめ』より続報! 第一波ミサイル60発に続いて、第二波ミサイル35発が接近中。推定速度マッハ5以上! これは––––“極超音速ミサイル”です!!!」
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