第204話・世界と日本の動き
––––ダンジョン第3エリアが攻略された。
事前の予想に反し、主力と見られたエルフの軍勢はその殆どが呆気なく降伏した。
テオドールの時と同じく、やはり生活水準の違いを見せて戦意を削ぐのは非常に有効だった。
【エルフが大量に移民してくるってマジ！！？】
【政府の発表だとひとまず関東、関西に分散して住ませるってよ】
【人数は！？】
【まだ大味だから不明だけど、ザッと1万から2万人らしい】
【ウチの職場に来たら優しく指導しよう！】
【日本社会にエルフが溶け込むのか……、とうとうファンタジーじみて来たな】
日本は昔から移民にとても難色を示す国だったが、生活困難な難民を放っておく民族ではない。
政府は速やかに、エルフ定住計画を霞ヶ関で立案した。
1・ダンジョンでの捕獲と保護
まずはダンジョン内で発見したエルフを保護する。
彼らの安全を万全に確保し、日本に護送するための準備を整える。
2・難民としての受け入れ
日本本土に到着後、エルフ族を難民として申請する。
保護施設での一時的な居住と、基本的な生活支援を提供。
難民申請と認定手続きに加え、難民認定申請書を提出する。
その後に入国管理局がエルフの状況を調査し、難民認定を可及的速やかに行う。
これにより難民認定が下りた場合、難民証明書が発行されるので、合法的に日本に滞在できるようになるのだ。
3・在留資格の取得
難民認定後、在留資格を取得する。
「難民等としての在留資格」（ここでは定住者）を申請し、許可を受ける。
4・日本での生活と定住支援
職業訓練、医療支援など、定住に向けた支援を提供。
地域コミュニティとの交流を促進し、日本社会への適応を支援。
5・永住権の申請
一定期間日本に居住し、法的要件を満たした後、永住権の申請を行う。
永住権が認められれば、長期的な滞在が可能となり、生活の安定が図られる。
6・日本国籍の取得
日本国籍を取得するためには、法務局に帰化申請を行う。
また、以下の要件を満たす必要がある。
5年以上日本に居住していること。
20歳以上であり、行為能力があること。
良好な行いをしていること。
経済的に自立していること。
日本国憲法を尊重し、反社会的な活動を行っていないこと。
以下手続きの詳細
1・難民申請手続き
難民認定申請書を入国管理局に提出。
面接と調査を受ける。
難民認定が下りると、難民証明書が発行される。
2・在留資格の取得
難民としての在留資格を申請。
必要書類の提出（難民証明書、身元保証書など）。
3・永住権の申請
永住許可申請書を提出。
過去の犯罪歴や税金の納付状況、住民登録情報などを提出。
4・帰化申請
法務局に帰化申請書を提出。
日本語試験や面接を通過。
必要書類の提出（住民票、納税証明書、職業証明書など）。
っと、上記のプロセスを踏むことになる。
エルフが日本に受け入れられるのは、これで殆ど確定した。
簡単ではないが、国家として必要な手続きだった。
そして、これには海外もかなりの反応を示した。
【日本がついに本当のファンタジー国家になった！！(アメリカ在住)】
【ダンジョンと中国が怖くて旅行に行けてなかったけど、また行こうかしら(イギリス在住)】
【お前ら舐めんなよ、数年前のバカみたいな円安はもう終わってるんだ。経済成長で物価はとんでもなく上がってるから、行くならしっかり貯金しろ(ドイツ在住)】
【いいや行くね！！ もう飛行機の予約は取った！(カナダ在住)】
ダンジョンが出現して3ヶ月。
日本の経済状況は、溢れ出した石油とレアアース需要により好景気を迎えていた。
その勢いは凄まじく、政府はダンジョンの恩恵をフルで活用した。
具体的には、老朽化したインフラの整備。子育て支援、減税、学費免除の拡大、防衛予算の拡大などが来年度に組み込まれる予定だ。
第二次高度経済成長期と呼ばれることになるこれは、日本の国力を著しく増大させた。
そして、それに拍車を掛けたのが––––
『ニュース速報です、自衛隊がダンジョンの新たなエリアを攻略したことで、石油、レアアースに次ぐ新たな資源が出現しました』
ニュースキャスターの声と一緒に、カメラは上空のヘリに移り変わる。
一見何も無い山中だが、今ここは世界を揺るがす資源の埋蔵地となっていた。
『ここは群馬県の山中ですが、至るところに新種のクリスタルが出現しました。専門家の調査によりますと、これは現在治療が困難な“ガン”などの難病に非常に有効な物質を含んでいるとのことです』
政府が“ルテチウム・クリスタル”と名付けたこれは、既存の放射性物質由来の治療に革命をもたらす可能性があった。
まだ詳細な研究はできていないが、イリジウムやルテチウムに取って代わる新薬の素材とだけは確信できていた。
これにより、日本人を長年苦しめたガン治療が大きく前進することになる。
そんなお祭りムードの日本から西へ行った場所––––
「こちら、第1特別輸送群。旗艦『おおすみ』。これより仁川へ入港。1300より順次邦人の収容作業を開始する」
海上自衛隊のシンボルたる旭日旗と並んで、“国連旗”を掲げた自衛艦隊が韓国へ入港していた。
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