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第199話・真打ち登場

 

「おいアイツ、僕らに戦闘押し付けて逃げたマスコミじゃん……。なんでパワードスーツに乗ってんの? しかも今……」


 坂本は腰のP220自動拳銃を取り出しながら、嫌そうに呟いた。


「真打ち登場とか言いませんでした?」


 これがどちらにとっての真打ちかなど、もう答えは示されているようなものだった。

 他4体のスーツの影から、1人のアジア系の男が出てくる。


「いやはや……、骨の折れる作業だったが。間に合って良かったよ」


 自衛隊とはまた違う迷彩服に身を包んだ彼に、陳大佐は労いの言葉を掛ける。


「お疲れ––––李大尉、さすが北朝鮮人だ。ちょっと遅刻だけど、無事古代兵器の調整は終わったみたいだね」


「もう二度とゴメンだ、未知の兵器の整備なんて……いつ自衛隊のミサイルが降ってくるかわかったもんじゃない」


「すまなかったよ、北朝鮮には約束通り––––我が中国から食料支援を約束しよう」


「頼むぞ、だから協力してやってるんだ」


 目の前で交わされる国家規模の取り引き。

 透はさすがに汗をかきながらも、状況をしっかり分析する。


「中国に加えて北朝鮮まで絡んでんのか……、こうなったら見境なしだぞ」


「えぇ、さらに言えば……」


 四条は4メートルはある剣を持った、パワードスーツ部隊を睨む。


「あの記者……、どういうつもりなんですかね?」


 四条の問いに答えるように、佐世が口を開いた。


「どういうつもり? それはこっちの台詞ね自衛隊……いや。“侵略者”」


 剣を構え、佐世は意気軒昂に続けた。


「戦闘になっても私たちを守れず、言論の自由は封殺。さらには過去の大戦の反省もせず再び侵略を行う。私は……そんなイカれた国家の民であることを猛烈に恥じたわ」


「エルフと戦闘させたのはお前の部下だろ……、守ってくれなかったとか言うが、そもそもそっちが俺らから逃げて––––」


「そんなどん底の私に、陳大佐は希望をくれたわ! 残虐国家日本の侵略に苦しむ中露北に手を貸せば……、北京でそれなりのポストを立ててくれるとね」


 透はもとより、四条や久里浜、坂本までもが両手で天を仰いだ。

 ダメだこいつは、古く過激な表現だが売国奴なんて言葉じゃ全く足りない。


 外患誘致罪のさらに上の行為を、さも正義かのように語って行っている。

 だが厄介なことに、透たちは銃の引き金から指を離すしかなかった。


「駄目です隊長……相手がいくら腐ってても、奴が日本人である以上……僕ら自衛官ではアイツに銃を向けれない」


 P220を悔しそうに下ろす坂本。

 四条と久里浜も、自動拳銃を同様にゆっくり下げた。

 その様子を見た陳は、転移魔法の光に包まれながら下卑た顔を見せる。


 陳の姿が薄れていく中、四条が声を上げた。


「くそっ!!!」


 他でもない、庇護すべき対象が敵に回るという最悪の事態。

 いくら裏切り者でも、自衛官が日本人に銃口を向けることは許されないのだ。


「さぁ、今こそ侵略者を成敗する時。楽しみね……北京であなた達の悪行っぷりを記事にする日が」


 パワードスーツの部隊が徐々に陣形を固める。

 彼らの動きは訓練された軍人のそれであり、ジャーナリスト佐世のもとへ集結する。


 透は一瞬で戦場の地形と敵の位置を頭の中に描き、タブーとされる決断を行おうとしていた。


「全員……、テオとベルセリオンを抱えて逃げろ。俺が奴らの足止めをする」


「透さん!?」


「サッサと行け!! こうなった以上……勝ちの見込みはゼロだ。せめて、犠牲は最小で済ませたい。それが小隊長としての責務だ」


 彼の言葉に反論しようとした四条を、坂本が肩を掴むことで止めた。


「行きましょう、四条2曹……僕らの立場じゃ。自衛権すら認められない」


「ッ!!!!」


 四条の目尻に涙が浮かぶ。


 透たち自衛隊は素早く体勢を整え、ジャーナリストを含む敵の攻撃から距離を取る。

 しかし、佐世の叫び声が響き渡った。


「逃げても無駄よ!  今や私は中国人民14億の力を背負っている。あなたたちは終わりよ、侵略者自衛隊!!」


 その言葉とともに、パワードスーツの部隊が一斉に前進し––––彼らの武器が透たちを襲う。

 放たれた衝撃波が、全員を殺そうとして……。


「ッ!!?」


 一瞬で掻き消された。

 ただの威力減衰ではない、斬撃を遥かに上回る別の攻撃が間に割って入ったのだ。


 全員が、おぞましい“魔王”の気配に立ち止まった。

 ツカツカと、透たちの横をブーツの足音がこだます。

 エクシリアなど比にもならない魔力を持った彼は、口角を吊り上げた。


「勘違いしてるみたいだから言っとくけど––––」


 現れた自衛隊迷彩服に身を包んだ男は、その“魔眼”を開きながら人差し指を向けた。


「そっちが侵略者だから」


 狂気に満ちた笑顔でそう言ったのは、現代最強の自衛官にしてアノマリー。

 ––––錠前1佐だった。


199話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」


と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 真打ち…………いや、デウスエクスマキナの間違いでは?あと数話でこの戦況決着? [気になる点] 以下何となく作ってみました。実際この時どんな気分だったんだろうなー [一言] 問題。取材に訪れ…
[良い点] 歯は磨いたか?寝る前のトイレは済ませたか? では酔っぱらいの時間は終わりだ(終焉
[一言] 多分あと5~10分くらい到着早かったら全員叩きのめして相当物語のショートカットしたんだろうなぁ・・・(遠い目) ある意味惜しかった ひとまずそこの生きる外患誘致罪はボコろう、ほぼ確定死刑だ…
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