第191話・突入! アカシック・キャッスル
彼女が空中で優雅に回転する姿は、まるで舞台上のバレリーナのようだった。
しかし、その瞬間––––アカシック・キャッスルの空は彼女の存在で満ちた。
テオドールの手には、呪文が刻まれた小さな魔法陣が握られており、身体の周囲には青白い光が輝いている。
ベルセリオンは、驚愕と共に怒りが込み上げてくるのを感じた。
「テオドール! お前、一体何を……! 対空防御!! あの愚かな妹を撃ち落として!!」
全ての砲台が落下するテオドールへ向けられるが、彼女は空中へ魔法陣をいくつも出現させた。
「よっ」
それらを足場にして、とても人間とは思えない機動力で対空砲をかわしていく。
前までのテオドールと明らかに違う、動きが別人のようだった。
「弾幕薄い!! もっと頑張って!!」
「無駄だよ、お姉ちゃん」
テオドールの言葉が空中に響き渡ると、彼女は腕を振るい、巨大な魔法陣が天と地を繋ぐかのように広がった。
次の瞬間、空から降り注ぐ光の矢が、城のバリアを突き破り始めた。
オークはパニックに陥りながらも、指示を仰ぐためにベルセリオンを見上げた。
「どうしましょう、ベルセリオン様! 防御魔法が次々と破られていきます!」
ベルセリオンは冷静さを取り戻そうと、急いで指示を出した。
「全ての魔法陣を強化!! 外壁の防御を固めて! テオドール……お前がどんな魔法を使おうと、ここで殺す!!」
さらに弾幕が濃密さを増し、巨大な拠点を覆う防御魔法が淡く光った。
元のダンジョン・マスターの加護に加え、ベルセリオンの魔力が加わったのだ。
しかし、安堵も束の間––––背中をゾッとするものが襲った。
テオドールの魔力が、今まで感じたことのない規模で膨れ上がったのだ。
具現化していた魔法陣を消滅させ、彼女は右手に全魔力を集中させた。
直感で危機を察知、ベルセリオンは声を張り上げた。
「魔導防壁、上部に集中展開!!」
その他全ての守りを捨てて、城全体の魔力を天上の魔法陣へと注ぎ込んだ。
空が一瞬、静まり返り……重苦しい静寂が拠点を覆う。
それぞれが息を呑み、次の瞬間を待った。
「さあ、来なさい、出来損ないの妹め!」
ベルセリオンの声が、拠点の中をこだました。
テオドールは静かに微笑み、限界まで圧縮した魔力を解放した。
それは、かつてアノマリー……リヴァイアサンにすら打ち勝った最強の攻撃魔法。
「『ショック・カノン』!!!」
鮮やかな青白い光が彼女の手から放たれ、太い光の束が城に向けて突き進む。
その光は、ベルセリオンが強化した魔導防壁に激突し、ほんの一瞬、防御魔法が光を抑え込む。
……ように見えた。
しかし、その力はあまりにも強大だった。
魔導防壁が震え、次第にひび割れていく様子が見て取れた。
全てのエルフとベルセリオンがその光景に息を呑み、不安と恐怖で目を見開いた。
「そんな……!」
ベルセリオンは必死に魔力を防壁に送り込むが、テオドールのショック・カノンは止まらない。
光が増すごとに、防壁の亀裂は広がり……ついには大きな破裂音とともに砕け散った。
天井が余波で崩れ落ち、無数の光の破片が城内に降り注ぐ。
巨大な瓦礫が落ちてくる中、オークは恐怖のあまり逃げたところを……落ちて来た天井に潰された。
周囲へ光の雨が降る中、テオドールは静かにベルセリオンの前へ降り立った。
「久しぶり……お姉ちゃん。少し痩せた?」
「ッ……!! テオドール……!」
決して相容れない姉妹が、再会した瞬間だった。
191話を読んでくださりありがとうございます!
「少しでも続きが読みたい」
「面白かった!」
と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!




