表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/453

第189話・92式地雷原処理車

 

 ミーナいわく、現在透たちがいる地点からすぐ前に、大量の爆裂魔法陣地があるとのことだった。


 ひとたび車両の類いが踏みつければ、逃げる間もなく起爆。

 どんな生物だろうと吹っ飛ばす大爆発が起こるよう、執行者ベルセリオンが仕込んでいるらしかった。


 もしこの情報が事実だとすれば、危うく数十人単位でやられてしまうところだ。


「爆発の範囲がわからん、指定座標へ向けて最大仰角を取れ!」


 到着したのは、MLRS(多連装ロケット)をよりスリムにしたようなトラックだった。

 迷彩色を施されたそれが5両––––荷台のロケットランチャーを、天へ向ける。


 この92式地雷原処理車は、敵の膨大な地雷原に文字通り穴を穿つために作られたものだ。

 処理の仕方は、至って単純。


「発射用意––––()ぇっ!!」


 ––––バッシュウウゥッ––––!!!


 轟音を立てて、92式から巨大なロケットが発射された。

 空中に飛び上がったロケットはすぐさま噴射をやめ、数十個の数珠繋ぎになった爆薬を、言い方は悪いが金魚のフンのように垂らした。


 やがて重力に引かれて落ちていったそれら5本のロケットは、地面に落着するや––––


 ––––ズッドドドドォンッ––––!!!!!!


 炸裂。

 ロケットが垂らした糸に沿う形で、大量の爆薬と爆裂魔法陣地が共鳴。


 地面を大きく揺らす、大爆発を起こした。


「衝撃波、来ます!」


 雪混じりの爆風が、装甲部隊へ叩きつけられた。

 LAVが大きく揺れたので、透はミーナが怖がっていないか確認する。


「大丈夫か?」


「別に、それよりさ」


 己の情報が真実であったことの証明に、ミーナは笑みを浮かべた。


「これで少しは信じてもらえたかな?」


 キノコ雲が発生していることから、いかに強力な魔法だったかが車内からも窺い知れる。

 もし直撃を食らっていたらと思うと……ゾッとしない。


 普通地雷はUAVで敷設跡がいくらかわかるものだが、魔法は全くわからない。

 アノマリーと化した錠前の眼があれば判明したかも知れないが、あいにく彼はまだ全力を出せない状態。


 ミーナの助力により、自衛隊はからくも敵の罠を粉砕できたのだ。


「……どうやら、君にこれを撃つことはしばらく無さそうだ」


 拳銃をしまう透。


 LAVの横を、雪をかき上げながら颯爽と走っていく装甲車両があった。

 戦車と同レベルの大砲に、履帯ではなくタイヤで走る特徴的な車両。


 “16式機動戦闘車”が4両、自慢の高速で地雷原だった場所へ突入した。

 爆風の吹き戻しを追い風にして、16式は80キロという高速であっという間に駆け抜けた。


 同時に、透の上を数機のヘリコプターが通り過ぎる。


「俺らはここでしばらく待機だ、坂本。久里浜に準備だけは怠るなと伝えておいてくれ」


「了解」


 坂本が通信機に向かって命令を伝えると同時に、透はミーナを見た。

 彼女の助けが無ければ、今の鮮やかな突破はあり得なかった。


 透は深く頷き、素直に感謝の意を表した。


「本当にありがとう、ミーナ。君がいなかったら……かなり多くの仲間が危険にさらされていた」


 ミーナは少し照れくさそうに笑い、肩をすくめた。


「わたしも自分の家族を助けたいだけ。でも、あなたたちがわたしを少しは信じてくれたみたいで、ちょっとうれしいかな」


「君の家族は俺たちで救って見せる、どうか安心してくれ」


 透の言葉に、ミーナはようやく安堵の表情を見せた。


『MCV小隊は突破を続行!! クリスタルの破壊を最優先だ! 戦車中隊は本隊の先陣を切れ!!』


『桜03よりCP、敵地雷原を無力化。これよりフェーズ2に入る』


 窓の外には破壊された魔法陣地が広がり、その先には雪に覆われた広大なフィールドが広がっている。

 空は晴れやかな蒼に覆われ、ひんやりとした空気が窓ガラスに触れる。


 しかし、そのすべてが今––––自衛隊の進行を阻む障害ではなくなっていた。


「さて……、聖園(みその)に座標を教えてやらないとな」


 装甲車内で透は、次の作戦について考えを巡らせている。

 アカシック・キャッスルの攻略は、ミーナの情報だけではまだ不十分だ。


 さらに詳細な偵察が必要であり、次の手を考えなければならなかった。


「坂本、UAVを展開してくれ。この周囲の防御設備についてもっと詳しく知る必要がある。可能な限り多くの情報を集めるんだ」


 坂本は透の指示に応じて、機器を取り始める。

 彼が取り出したのは、国産の飛行ドローンとその操縦機器だった。


 呼応するかのように、ミーナも自らの持つ知識をさらに提供し始めた。


「アカシック・キャッスルの内部には、数多くの防衛システムが稼働している。特に中央の塔は、ベルセリオンが直接監視しているからけっこう高い警戒が必要だよ」


 彼女の情報は、透たちがこれまで手に入れた中でも特に貴重なものだった。

 それを基にして、作戦会議が行われた。


「次のフェーズでは、突破を最優先にする。アカシック・キャッスルの弱点を突く準備を整えるぞ」


 透がそう言い放つと、車両はさらに前進し始めた。

 彼らの前に広がる未知の地と、そこに潜む敵。


 しかし、自衛隊の士気は高まる一方で、エルフの存在が新たな希望をもたらしていた。


「ミーナ、しばらくは俺たちを支えてくれ。お前の家族を救うためにも……こっちは全力を尽くす」


「……信じて良いんだね?」


「後悔はさせない」


 ミーナは決意に満ちた表情でうなずき、窓の外を見据えた。

 彼女の目には明確な目的があり、今持つ情報こそ今後の戦いの鍵となることは明らかだった。


「隊長、ドローンを飛ばします」


「頼む、16式とアパッチ攻撃ヘリが、クリスタルを無力化するのを手伝うぞ」


 こうして、アカシック・キャッスルへの長く短い道のりが続いていく。

 その先には何が待ち受けているか、未だ誰にも分からない。


 しかし……一つ確かなことは、自衛隊が一致団結している限り、どんな困難も乗り越えられるという事実だった。


 有事の団結力において、日本人は地球最強なのだから。


GW中はたぶん毎日更新できるんですけど、読者のニーズ的に2日に1話と毎日とどっちが良いかわからないんですよね。

もしこっちが良い! と思う方があったら気軽に言ってください。


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」


と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 皇統1500年に及ぶ単一民族国家における唯一の軍事組織の一体感よ……。
[一言] 日本人は命の価値もクソ高いからねぇ 人命保全・救助という点に関しては随一だと思うよ まぁそれが弱腰と言われる点でもあるけど
[気になる点] ヘイ!ヘイヘイヘイ!ラスト数行が俺たちの戦いはこれからだ的なニオイを感じるんですけどぉ!?w [一言] ダンマス「ふーむ…鮮やか。実に鮮やかな突破行だ。だが鮮やかすぎる。魔法の素地を…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ