表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/454

第188話・ミーナの願い

 

 第3エリアに散りばめられた隠蔽クリスタルの数は、現在判明している限りで16個存在する。


 これらは事前のスキャン・イーグルで確認された分もあるが、実を言うと空中偵察で判明した物などほんの数個に過ぎない。


 当初はそれが全てかと思われていたが、今––––自衛隊は“16個”で全てとわかっていた。

 その要因は……。


「16個のクリスタルが、第3エリアを統括する【アカシック・キャッスル】を隠蔽してる。座標はさっき教えた通り、疑うならあなた達の持っている空飛ぶ精霊で確認すれば?」


 数十両もの装甲車両が周囲に展開する中で、LAVの椅子に座らされたエルフ。

 千里眼のミーナが喋る。


 車内の暖房が心地良いようで、完全にお寛ぎモードだった。


「いや……色々教えてくれんのは良いんだけど、マジで信じて良いのか? 随分とアッサリ喋るから拍子抜けなんだが……」


 隣でSFP-9自動拳銃を持った透が、困惑気味に呟いた。

 このミーナという美麗なエルフは、投降するや速攻で寝返ったのだ。


 現在までで既に、隠蔽クリスタルの数や地雷原の詳細まで喋っている。

 ここまで来ると、嘘をついているんじゃないかと疑いたかったが……。


「そんなに疑うなら地雷原に突っ込んでみたら? それで死んでもわたしのせいにしないでよね。あっ、お茶とか言ったっけ……美味しいからおかわりちょうだい」


「こいつ図々し過ぎるだろ」


 透の反対で挟むような位置で、細かくメモを取る坂本。

 最初は車内で拳銃を突き付けての尋問だったが、あまりにアッサリ情報を吐くので尋問は無しに。


 それどころか、日本人的に例えれば––––嫌だった職場を辞めたような雰囲気だ。


「はい、お茶」


「どーもー」


 坂本が気怠そうに渡した。

 美味しそうにコップをあおり、飲み干すミーナは非常に満足気。


 その満足そうな表情の裏で、ミーナはどうやら何かを企んでいるようだった。

 彼女の言葉一つ一つには、はっきりとした目的が込められている。


 しかし、それが何かを透はまだ見抜けていない。

 ミーナの言葉を信じるにはあまりにも多くの疑問が残るが、それを解決する手がかりもまた……彼女の中にしかないようだった。


「じゃあ、自衛隊さん、わたしがなぜこんなにも情報をオープンにしてるか分かります?」


 ミーナが突然問いかける。


「え、命のため……とか?」


 尋問経験皆無の透が言葉に詰まる。

 その様子を見て、ミーナは碧眼をフロントガラスの奥の雪景色に向けた。


「見返りが欲しいからよ。わたしがここで皆さんに協力的なのは、わたしの家族をアカシック・キャッスルから救い出してほしいからなの。それが唯一の望み」


「家族が囚われてる……? どういうことだ、エルフはダンジョン側の戦力だろう」


「エクシリアっていう執行者のやり口でさ、わたし達若いエルフが逆らえないように……親や祖父母を一部監禁してるのよ。戦闘から逃げないように」


 その言葉に、車内は重苦しい空気に包まれた。

 透と坂本は顔を見合わせる、ミーナの願いが真実かどうかはさておき、彼女がこれまで提供してきた情報の価値は計り知れない。


 もし家族を人質に取られて戦わされているなら、倫理の観点からも無視はできない。

 ミーナの要求を受け入れることによって、第3エリアの探索が飛躍的に進む可能性だってある。


 信じる価値はグングン上がっていった。


「ミーナ、君の言うことが真実だとして……本当に家族を助けることに繋がるのか?」


 透が慎重に問い詰める。


「ええ、もちろん。わたしがあなたたちに教えたクリスタルを破壊して、鉄壁の防御を無効化すれば……中に入ることができるわ。その中にはわたしの家族だけじゃなく、他にも多くの無実のエルフたちが囚われてる」


 ミーナの話には一貫性があり、彼女の表情からも真剣さが伝わってくる。

 これまでの彼女の協力的な態度も、話が真実であることを示唆している可能性が高かった。


「わかった、ミーナ。暫定だが一部信じよう。ただし、嘘が少しでも含まれているようなら……覚悟はしてもらう」


「おー怖、急に女たらしの目じゃなくなったね」


「当然だろ、仲間の命が掛かってるんだ……罠に掛けようとすれば躊躇なく殺す」


「オッケー、それでいいよ。こっちはただ家族が無事であることを望んでいるだけだから」


 その後、透たちはミーナと共にクリスタルの位置を再確認し、アカシック・キャッスルへの侵攻計画を練り始めた。


 これから先、ミーナが示す道がどれほどリスクを伴うかは未知数だが、提供された情報が戦いを左右することは間違いない。


 ––––作戦開始だ。


「施設科部隊に伝達! “92式地雷原処理車”を前へ!! 敵の爆裂魔法陣地に突破口を開く!」


188話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」


と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ダンマスさんおバカ疑惑。それって統治者として一番まずいやり方じゃん。圧倒的な力を持っているから今まで力で捻じ伏せるだけでなんでも思い通りに行ってたんだろうけどさ。 力関係が崩れたらあっという…
[気になる点] エルフがどんな種族なのか知らないけど、魔王軍が攻めてくるなんて知ったら戦闘に参加するエルフなんていくらでもいるだろ。 家族を人質にする必要なんてあったのかな? [一言] 肥えドールに続…
[一言] 督戦というか、家族を人質にして配下を自分の支配下にってのは戦国時代の常套手段だけど… 土地や家に縛られていない分、示し合わせて反乱されると大変そうだなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ