第18話・事前準備は大事です
––––3日後、地竜エリアの攻略を行うことが正式に決まった。
投入戦力は今までで最大規模。
普通科を中心として、戦車小隊が随伴––––支援には自走砲と攻撃ヘリコプターがつく。
地形が東ヨーロッパの平原と似ているため、持ち込んだ90式戦車は問題なく運用できるだろう。
前日の威力偵察によって発見された、謎の塔––––通称『ラビリンス・タワー』と名づけられた場所へ、透たちは派遣されることとなった。
––––駐屯地内、新海&坂本の共同部屋。
各部隊が真剣に銃器、兵器のチェックを行う中––––配信チームたる新海透3尉と、坂本3曹は自らの愛銃を分解しながら雑談していた。
「隊長、青年誌の表紙に写ってるエロ写真って……なんであんなにそそられるんでしょうかね」
訂正、非常に低レベルな会話だった。
「いや知らねーよ、俺は二次元の専門だからグラビアとか興味無いし」
「じゃあ隊長がいつも購読しているミリタリー×萌えの軍事雑誌。アレも表紙のキャラが結構際どいの多いっすよね」
「俺的には変にバニーやらチャイナドレス着せるピンナップより、普通に可愛い私服が見たいんだがなぁ」
しがないヲタク自衛官は、あまりにしがない会話をしながら銃器の分解を進める。
アッパーとロアレシーバーを分割し、ボルトとリコイルスプリングを取り出した。
「そういえば隊長、今年のコミケは行くんすか?」
「ダンジョン攻略で忙しいからなぁ……、夏コミはパスするかもしれん。そもそもこんなに有名になった時点で、東京歩いたら大騒ぎされる」
「そうですか、せっかく本土へ外出するならお土産貰いたかったのに」
「外出っつっても、行けるところなんて関東近郊くらいだろ……。良い場所ある?」
「個人的には横須賀がオススメですね、海自や米海軍の空母が近くで見れますよ」
「防衛大時代に散々住んだわ、しかしウチの国が空母ねぇ……」
かつてより日本という国は、必要最小限の自衛力しか持てなかった。
どれほど過剰に縛ってきたかというと、国民からすれば耳を塞ぎたくなるものばかり。
・相手国に届かないよう、わざわざ対艦ミサイルの射程を落とすため金を掛ける。
・近隣国に配慮して、当時導入したF-4戦闘機から大金を払って爆撃能力を無くす。
・P-3C哨戒機の空中給油能力を、相手国に配慮して消し去る。
端的に言ってふざけていた。
こんなことをしても平気でいられたのは、日本の政策がアメリカを利用して経済に予算を注ぎ込んでの成長を目的としたため。
一言でいえば、米国に安全保障を押し付けたのだ。
無論、この問題は後のトランプ政権によってかなり敵視された。
さらに極東における中国の覇権主義、ロシアのウクライナ侵略を経て様相は一変。
現代の日本は、アジアの軍事大国を名乗るに相応しい能力を持ちつつあった。
・いずも型護衛艦を、航空母艦へと改装して実質の空母化。
・国産極超音速誘導弾の実用化。
・長射程巡航ミサイルの大量運用能力。
・世界屈指のイージス艦戦力。
・147機という、世界で2番目のF-35ステルス戦闘機配備国。
これだけ見ても、通常戦力の拡充具合は凄まじいものだとわかる。
特にF-35戦闘機は世界最強と名高く、ウクライナ戦争に投入されればロシア軍は一気に劣勢となるレベルの兵器。
これより一世代前のF-16ですらロシア軍の防空網を叩き潰せるので、これがもしF-35であったなら、露軍はウクライナ領からすぐにでも叩き出されるだろう。
今透がいじっている最新の20式小銃も、年間1万挺以上が配備されており、今や普通の部隊でもよく見かけるものだ。
「自衛隊も変わりましたね」
「変わったな。俺的にはお堅い公務員たる自衛隊が、まさかダンジョン配信するなんて思ってもいなかった……」
「僕も同感です、あっ。こないだ隊長が民間のハンターを助けた動画……アーカイブ再生数が8000万を超えてましたよ」
「朝に四条から聞いたよ、猟友会から感謝のメールが来たって。にしても8000万か、いよいよ実感の湧かない数値だな」
今度の配信は3日後。
銃を組み立て直した透は、ふと気になって机のパソコンを立ち上げた。
「何見るんです?」
「インターネットの掲示板サイト、一応配信者だし……スレでも見ようかと思って」
「珍しい! 僕も見ますよ」
透と坂本は、早速某有名インターネット掲示板を開いた。
そこには、今まで実感など無かった自分たちの影響力がとんでもないレベルで発現しており、2人を震撼させた。
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