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第167話・雪原強襲

 

 配信画面に映るのは、積雪を背にする緊迫した戦場。

 画面の一角には、88式鉄帽を被り、白色外衣を着た美しい女性自衛官の顔が小さく映し出されている。


【四条2曹キター!!】

【いつもと感じ違うな】

【前回ほえちゃんからの今回四条さん! 動画の雰囲気が全く違う!】


 同接数は瞬く間に1億近くへ。

 前回の威力偵察では、配信をしていないので国民は現在の敵を知らない。


 四条は世論に向けて、エルフとの接触をリアルタイムで伝えるためにここへ呼ばれたのだ。

 彼女単独の理由は、単純にスキーが隊内で一番上手かったからである。


 関西で勤務している時、四条は兵庫県のハチ高原でスキーをよくしていた。

 趣味で磨いた技術だったが、その腕は北海道の部隊に追随できるレベルだ。


「えーっと……日本本土の皆さん、こんにちは。ここはダンジョンの第3エリア––––わたしたち自衛隊は、超常的な存在、いわゆるエルフとの交戦状態にあります」


【エルフ!?】

【ラノベじゃん!!】

【相手がいきなりスゴすぎる……!!】


 湧き立つコメント欄。


 画面越しに、砲撃による爆煙と雪原を進む自衛隊の姿が映し出された。

 四条の冷静な語り口が、緊張感をより際立たせる。


「今、皆さんに見ていただいているのは、エルフの拠点への接近作戦です。私たちは彼らの強力な魔法に対抗するため、砲撃とスキー移動で防衛線を突破しようとしています––––っと」


 突如、画面が激しく揺れ、低い爆音が聞こえる。

 四条のスマホを持つ手が、わずかに震えているのが見て取れた。


 50キロ後方から発射されたMLRSが、近くで着弾したのだ。

 いくら通常弾頭とはいえ、数百ミリのロケットは凄まじい威力を持っていた。


 しかし、彼女の声は依然として落ち着いている。


「さすが特科ですね……、初弾から敵に当て続けるのは当たり前というわけですか」


「四条2曹、敵に動きです!」


 カメラは四条から前方に切り替わり、エルフの小規模部隊が迅速に配置を変える様子を遠目に捉えた。

 彼らは自然を操る魔法で、自衛隊の進行を阻もうとしていると聞いた。


 おそらく、雪や風の壁を作るつもりだ……。


「あれがエルフの魔法です。しかし、わたし達もいまやダンジョン初心者ではありません。魔法を打倒し、必ず任務を遂行します」


 スキーを駆使し、隊はさらに速度を上げる。

 画面には白銀の世界を疾走する自衛隊員の姿が映し出され、いかに異質な戦闘かが映し出されていた。


「全隊、8秒後に停止––––撃ち方用意」


 先頭の中隊長がスキー板を曲げ停止。

 後続の自衛官も、その場で寝転ぶようにして20式アサルトライフルを構えた。


 通常の戦闘服の上から、防寒戦闘服白色外衣と合わせて偽装しているので、少し離れれば完全に景色と溶け込む。


「…………」


 今回四条は、ヘルメットやスマホのカメラに加えて、銃にもカメラを付けている。

 6倍率で映し出された画面には、銃口の先で動くエルフの姿。


 彼らは驚くほどの速さで動き、木々の間を縫うようにして進んでいた。

 その動きは、まるでダンスのようにも見えた。


 しかし、四条と他の隊員たちは、それに動じることなく……目標を追い続ける。


「全世界の皆さんが見ています。我々の戦い、そしてエルフとの遭遇を。彼らは美しい存在ですが、今は敵。決して侮ることなく、最大限の警戒をしましょう」


「もちろんだ、貴女にも期待しているよ––––四条2曹」


「了解」


 四条の冷静な声が、戦闘の緊迫感をさらに高める。

 彼女の頭にあるカメラの画面越しに、視聴者はその言葉の重さを感じ取ることだろう。


「発射準備」と中隊長が静かに命令。

 瞬時に、空気が凍りつくような静寂が訪れる。


 そして、ほんの3秒後には……一斉射撃の音が雪原に響き渡った。


 ––––ダンダンダンッ––––!!!


 扇状に展開した部隊が、20式を各自セミオートで発砲。

 続いてMINIMI多用途機関銃がフルオートで弾幕を張った。


 正確に飛翔した5.56ミリ弾は、構築途中だった風や雪の壁をアッサリ貫通。

 魔法陣を広げていたエルフを、次々に射殺していった。


「魔王軍の攻撃だ!!」


「急げ! “例のアレ”を起動させろ!!」


 この拠点はMLRSによる砲撃を防いだので、隠れられる場所が十分にある。

 エルフ達は飛び交う銃弾の嵐の中で、反撃と作業を並行させた。


 一方の陸自側も、斜面から雨のように弾丸を降らせる。


「弾切れ、リロード!!」


「機関銃手! カバーしろ!!」


 北部方面隊にとっては、これが初めての実戦。

 高揚でアドレナリンが噴き出し、トリガーを引く手が軽快になる。


 特にMINIMI機関銃はかなり激しく撃っており、200発弾倉がドンドン軽くなって行った。

 その一方で、エルフ達も何か準備をしている。


「準備完了!」


「よし、詠唱を始めるぞ!」


 エルフの一部が慌ただしく動き出し、その中の一人が高らかに呪文を唱え始める。

 空気が震え、周囲の雪と風が一点に集まり、巨大な魔法陣が地面に描かれていった。


「なに、あれは……!?」


 四条の驚きの声が、リアルタイムで全世界に配信された。


【魔法陣!】

【これはなんだ!?】

【エルフの反撃来るか!?】


 コメント欄は急激に活気づく。


 その時、魔法陣から放たれた輝きが、雪原を照らし出す。

 信じられない光景が広がった……。


「こりゃ驚いた……」


 全員が思わず発砲をやめる。

 荒んだ拠点の真ん中に現れたのは、モンスターでも戦車でもない。


 敢えて端的に表すなら––––3メートルはあろうスリムな“パワードスーツ”だった。

 それに1人のエルフが搭乗すると、スーツが稼働。


 手に大きな剣を具現化させ、全身に紋様を浮かばせた。


167話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」


と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか楽しそうなものを召喚した! コスパ悪そうだがアホほどMPある魔王様なら…。
[一言] さて、そのパワードスーツが何が防げるか実験しよう まずは閃光と音。次に臭気。熱風は防げるのか、X線は透過するのか。密閉性は?酸素は通すのか?宇宙服より便利か? 実験することは山ほどあるぞ …
[一言] おー、なんかすごい強化外骨格的なものが …それ、対物ライフルに中の人が耐えられるものでらっしゃる? 体高3メートルでスリム(薄い)な装甲なんて、例え抜けなくても衝撃もろに中の人に伝わりそうだ…
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