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第163話・優れた科学技術は魔法と見分けがつかない

 

「エルフ……、何で駐屯地内をこいつらが出歩いてんの?」


 彼らは雪山での威力偵察で、第1特務小隊に蹂躙され……一部が捕虜として捕縛された。

 相手が知的生命体である以上、人道上で必要な措置だった。


 エルフが国際条約の対象かは、さておきだが。


「まぁそう睨みつけないでくれ、魔力は使えないようにされているし、今君たち自衛隊と戦っても勝てないことはわかってる。問題は起こさないよ」


 堂々とするエルフは、どうやら本当に許可を貰って出歩いているようだった。

 ご丁寧に名札まで下げており、そこには『アラン』とカタカナで書いてある。


「日本という国は本当に凄いね、食事は王族以上の質……部屋には気温が自由自在に変えられる魔導具があって、ベッドもありえないくらい気持ち良い。とても人道的な対応で……正直最初は困惑したよ」


 感嘆しつつ述べていく。

 魔導具というのは、おそらくエアコンのことだろう。

 新設のユグドラシル駐屯地では、贅沢なことにあらゆる部屋にそれが付いている。


 本土の自衛官が聞いたら、卒倒するだろう。


「確かあなたたち、わたしらのことを魔王軍とか呼んでたって……」


「魔王軍か……、最初は確かにそう思っていたけど。ここに来てよくわかった––––私達の方が、君たちの世界を攻撃した侵略者だとね」


 随分とアッサリ認めた。

 アランの言葉に、坂本と久里浜は一瞬、顔を見合わせた後……ゆっくりうなずく。


「まあ……その通りですね。でも、今はおっしゃる通り敵じゃない。少なくともそうだと思っています」と坂本が答えた。


 アランは優雅に頭を下げた。


「その言葉、ありがたい。不幸な行き違いはあったが……互いに理解を深める良い機会になるといいな」


 こうして接すると、彼は本当にラノベのエルフのようだった。

 律儀で礼儀正しく、立場をしっかりわきまえている。


 おそらく、ダンジョン側が流した戦争時特有のプロパガンダにやられていたのだろう。

 自衛隊は魔王の軍勢だと……。


 どこぞの国が、理不尽に相手国をナチス呼ばわりして侵略したのと同じだ。


「話は変わるけど、さっきの銃の話……興味ある?」


 久里浜が尋ねた。

 彼女の目は、アランが銃への興味を示したことを覚えていた。


 彼は明らかに興味を示す。


「ええ、とてもね……特に君たちの技術がどのように戦闘に役立つのか、ぜひ見てみたい。ボコボコにされた身としてはさ」


「良いの? 僕らはお前の同胞を、少なくない数殺してるんだぞ?」


「それは我々もいくつかの世界でやって来たことだ。生存をかけた戦に、善悪や私怨は絡めるべきじゃない。君らを恨んではいないよ」


 アランの清々しさに、2人は思わず感心する。


 そこで、2人はアランに向けて銃のデモンストレーションをすることにした。

 これには、二度と逆らえないようにという意味も込められている。


「この武器は簡単に言うと、鉄の塊を音速クラスで飛ばす物だ。魔法は一切使ってない」


「なんと……! 魔法を使わずにあんな威力を!? 信じられんな……」


 アランは真剣な表情でそれを聞き、時折、自分たちの世界での戦闘方法と比較していた。


「うちの世界では、魔法と剣が主な戦闘手段だ。けど銃は全く新しい概念だな……自衛隊の武器は、遠距離からでも正確に対象を撃つことができる。とても興味深い」


 エルフは不思議そうに2人が持っている銃を眺める。


「これは……、どうやって使うんだい?」


 久里浜が彼の疑問に答えた。


「簡単よ、見てて」


 ドラムマガジンをSAIGAに押し込み、重いコッキングレバーを往復。

 ホロサイトの調整(ゼロイン)がまだなので、適当な的を見つけて––––


 ––––ドガァンッ––––!!!!


 発砲。

 発射された12ゲージ散弾は、近くの木製ターゲットをぶち抜いた。


 長い耳を押さえたアランが、思わず冷や汗をかく。


「なんて音だ……、いや。それよりも……」


 セーフティを掛ける久里浜を見て、次に20メートル離れた木の板を見つめる。

 ズタズタに引き裂かれており、無数の穴が空いていた。


「恐ろしい武器だ……。弓矢なんか比べ物にならないじゃないか」


「じゃ、次は僕……あそこのスチール見える?」


 坂本が指差したのは、100メートル先の45×75センチのターゲット。

 こちらも米国のIPSC (International Practical Shooting Confederation) が基準。

 裸眼だと、ほぼ見えない距離だ。


「まさかとは思うが……アレを狙うのか? 無茶だ、エンチャントした弓矢なら届くだろうが……、それでも届くだけ。当たることはまず無い」


 否定するアランの前で、坂本がヴィントレスのマガジンを挿入。

 コッキングレバーを引いて装填した。


「見てろ」


 ––––パシュッパシュッパシュッパシュッパシュッ––––!!!


 ––––カンカンカンカンカンッ––––!!


 サプレッサーで銃声が抑えられた分、スチールの音がよく響いた。

 さっきショットガンの爆音を聞いたばかりのアランは、全く違う音に驚愕する。


「ここまで音が違うのか……。これでは、遠くから撃たれてもきっとわからんな……」


 優れた科学技術は、魔法と見分けがつかない。

 有名な言葉だが、アランはこれを噛み締め……あるお願いをしてみる事にした。


「不躾ながら1つ……、よろしいか? 君たち自衛隊の力を信じて……頼みたいことがある」


163話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」


と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 前も思ったけど、オーガやゴブリンみたいなあからさまな魔物と同僚になってて疑問には思わなかったんだろうか… ただもしエルフという種族がダンジョンから離反すれば、かなりの戦力ダウンになるね?あと…
[良い点] 100mなんて至近距離、日本の警察や自衛官なら外さないって 聞いたらアランは何と言うのやら。 装備によっては、遥かに遠い距離から命中させれるんだよなぁ。 銃器の世界は奥が深いから知れば知…
[一言] 僕はきっとエロフが居ると信じている!
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