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第143話・パーフェクト・ゲーム

6件目となるレビューを頂きました!!

応援大感謝です!

 

 ”攻撃ヘリコプター“。

 その名の通り武装を積んだヘリであり、近年では高コストな割には活躍の場が少ないということで、各国共に削減傾向にある兵器。


 だがそれは、敵が高性能対空ミサイルで武装した地球での話だ。

 ことダンジョンにおいては––––


「3、2、ヒト––––弾着」


 この限りではない。

 上空から雨のように降り注いだヘルファイアは、炸裂した者に死んだという感触すら与えなかった。


 尾根が噴き上がり、爆炎が森を駆け回る。


 聖園が見ていたIRカメラでは、土砂と一緒に大量の結晶が飛び散っていた。


「ダンジョン内の敵って、死んだら本当に結晶になるんっすね」


「散々配信で映ってたんだから、今更じゃないか。お前だって知ってただろ」


「まぁそりゃそうっすけど、なんか殺した実感薄いですね。本当にダンジョン物のゲームみたい」


「とりあえず次だ、生き残りがいないか確認しろ」


 聖園が視線を動かすと、一緒に照準も動く。

 これは従来のようにコントローラーではなく、より直感的に狙うため、ガンナーの首の動きに合わせて機銃も動くのだ。


「目標全滅。生存者はいないみたいっす」


 ヘルファイアの雨は、予想以上に凄まじい威力を発揮していた。

 当然だろう……、1発でMBTを粉砕する兵器が、32発も落とされたのだから。


 しかし油断はできない。

 ここは敵の支配地域、何が起こるかわからないと思考した時––––


 ––––ビッ、ビッ、ビッ、ビーッ––––!!!


「ロックオンだと?」


 アパッチに搭載されていたRWR警報が鳴り渡った。

 これは、敵ミサイルの誘導波を検知した時に発動するもの。

 まさかダンジョン勢力が対空ミサイルを? だが今は考えている暇など無い。


 パイロットはすぐさま低空を機動し、旋回と同時にチャフとフレアをばら撒いた。

 すると––––


「えっ、今のって……!」


 驚く聖園が目にしたのは、機体を掠めて飛翔して行く“矢”だった。


「今のはミサイルじゃありません、弓矢っすよ弓矢!」


「矢がアクティブ誘導波を発してたってのか? どんなハイテクだよ」


「いや、これハイテクっていうより……」


 聖園は無線を再び地上へ繋げた。


「四条2曹! さっきそっちで捕まえたエルフ、何か弓矢について言ってませんでしたか!?」


 質問の答えは、即座に返って来た。


「今聞きました、どうやら弓に“エンチャント”? とか言うのを掛けてるみたいです」


 予想的中。

 お礼だけ言って、通信を閉じる。


「先輩! アレは誘導能力を付与された弓矢っす。いわば魔法の類いですよ」


「なるほど、そのエンチャントとやらで……矢自体が誘導波を発するようになったわけか」


 RMR警報が鳴った理由はわかった。

 すぐさま旋回し、ロックオンされた方位を索敵する。


「おっ、見つけたっす」


 森に隠れる形で、エルフ部隊が弓矢を構えていた。

 4キロ離れたこっちはまだ見えていないらしく、ロックオンもされない。


「矢でアパッチが落ちるとは思えないっすけど、油断は禁物ですね。掃射します!」


 武装を変更。

 機首の30ミリ機関砲に切り替え、サーモグラフィーカメラで照準した。


()ッ!!」


 ––––ダダダダダダダダンッ––––!!!


 重たい発射音と共に、30ミリ砲弾が撃ち出された。

 地球上で最も射程が長いスナイパーライフルの有効射程が2000メートルなのに対し、聖園は4000メートルで発射した。


 それでも機関砲弾は真っ直ぐ飛んでいき、隠れていたエルフ部隊へ直撃した。

 遥か遠方––––弓矢とは比べものにならない兵器での攻撃に、混乱する敵部隊。


「命中、続いて撃てッ」


 さらにトリガーを引く。

 この30ミリ砲弾、何がヤバいかと言うと殺傷能力の高さだ。

 地面に当たった瞬間に爆発するので、辺りへ撒き散らすだけで軽く1個小隊を殲滅できる。


 ”手榴弾が音速で飛んでくる“と考えれば、わかりやすいだろう。


 アパッチは超高性能カメラで照準しているので、どれだけ逃げようが、隠れようが……体温を発している限り逃れられない。


 聖園がトリガーを引くたび、30ミリ弾によって一方的にエルフたちは殲滅されていった。


 抵抗などできない、そもそも本気で隠れたアパッチは容易に見つけることなどできないからだ。

 さっき目視できたのは、たまたま運が良かっただけで、しかも当たっていたとして……アパッチは20ミリ砲弾の直撃すら耐える。


 弓矢では全く相手にならないだろう。


「目標沈黙。ふーっ……、これが実戦ですか」


「気分はどうだ?」


 心配を含めた先輩の声に、聖園はヘルメット越しに感情を伝えた。


「最初はゲームみたいって思ったけど、今はアドレナリンがヤバいっす……。ロックオンアラートが鳴った時も……恐怖より興奮が勝りました。これ、異常っすかね?」


「戦場では普通だ。それでもお前は努めて冷静に敵を殲滅したし、自衛官としては……満点だ」


「でも、今日は興奮で寝れないっすね……えと。地上は大丈夫です?」


「あぁ、87式偵察警戒車は元々パンクしても大丈夫なよう作られている。あともう少しだけ索敵して、援護に戻るぞ」


 アパッチの初戦は、完全な勝利で終わった。

 だが自衛隊が高戦績を叩き出した一方で、国外––––日本の北西では“大事件”が発生していた。


143話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」


と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!

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― 新着の感想 ―
読み返し中 4キロ離れたエルフ部隊。ヘリが見つかっていないのは低空飛行したからなのか、そもそもエルフたちが気付いてないのか。気付いてないなら矢は何を狙って誘導されたものか まぁ人間でも4キロ先のヘリな…
[気になる点] 異世界産の生き物が死ぬと結晶になる。地球人が死んだらどうなんだろ? 錠前は魔王になったから結晶化しそうだな! [一言] 日本の北西 将軍閣下の国でクーデターでも起こったのかな。人民蜂起…
[一言] 日本の南西? 軍事力の誇示でギリギリ形を保ってた国がありますねぇ…なんか空域全く守り切れず攻め込まれた挙句上級民ばかりが住む都市に銃撃食らいまくった… クーデターでも起きた?
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