第13話・新海VS久里浜
当方ローファンタジー初挑戦なのですが、まさかのランキングに載っていました!
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試合開始のベルが鳴ったと同時、特殊作戦群の久里浜士長は猛烈な勢いで床を蹴った。
最初の角は全く無駄の無い機敏な動作でクリアリングを済まし、銃口はいつどこから透が出て来ても良いよう、前に向けながら前進する。
「わたしは負けない……! 憧れの特戦にようやく入れたエリートなんだから、あんな青二才––––すぐに蹴散らしてやるわ!!」
彼女の殺意は、持っている銃にも明確に表れていた。
得物の名は『HK416A5』、自衛隊に正式採用されていないドイツの高性能アサルトライフルだが、とにかくカスタムされている。
変更箇所を挙げればキリがないが、一言で言うならそれが近接戦特化型のカスタムということ。
透が潜んでいるであろう部屋に近づくと、普通の自衛官なら滅多に持てないフルスペックのレーザーサイトを起動。
フラッシュライトの点滅と同時に、恐ろしい速さで制圧していく。
まるで木の葉が清流を流れるがごとしだ。
それを繰り返して行く内、早くも透のスタート地点から一番近い部屋へ辿り着く。
「前に進まなかったのは臆病者らしい選択だけど、間違ってないわよ。言っとくけど角待ちしたって無駄だから、そんな中東のゲリラみたいな戦術で––––」
扉を僅かに開けた久里浜は、確信を持って室内へ“フラッシュグレネード”を投げ込んだ。
「わたしを欺けると思わないことね!」
閃光弾の炸裂と同タイミングで、久里浜は突入。
外壁から見立てで、自分ならここで待つだろうという場所へ銃弾を数発叩き込んだ。
勝利の余韻に浸ろうとした彼女は––––
「えっ……?」
目を見開く。
そこには、ただ訓練弾で開いた穴だけがあった。
つまり、人間などどこにもいないのである。
「ッ!!!」
すぐさま角へ移動し、呼吸を整える。
あり得ない、ここへ来るまでに全ての場所をクリアリングした。
ベニヤ板で仕切られただけの訓練施設において、唯一久里浜の索敵から逃れる方法。
「まさかっ!?」
ようやく真実へ辿り着いた彼女は銃口を上に向けるが、全てが1歩遅かった。
「おっ、よく気づいたな」
現れたのは、ベニヤ板を飛び越えて室内へ突入してきた透。
そう、彼は正面からの戦いをすぐにやめ、ベニヤ板を飛んで相手の索敵から逃れていたのだ。
無論、ルール上問題は無い。
加えて言うなら、彼女を部屋の隅に追いやることが狙いだった。
「このっ!!」
両者は発砲するが、角っこにいたばかりに久里浜は回避行動ができない。
透が掠めた一方で、彼女は肩にモロで食らってしまう。
「いっっつッ…………!!?」
銃を持つ手が緩んだ瞬間を見逃さず、透が詰めてくる。
久里浜は重い『HK416A5』から、まだ重量的に撃てる拳銃––––名を『G17 Gen5』を抜いた。
グロックと呼ばれる、9ミリ口径の最新式自動拳銃である。
突っ込んで来た透目掛けて放つが、あり得ないことが起きた。
「えっ!!?」
あらかじめそこに銃弾が来ることがわかっていたかのように、透は持っていた20式ライフルを盾代わりに使った。
「おっらあああぁぁあああ––––ッ!!!」
久里浜は連射するが、ことごとくが射線を読まれていた。
当然訓練弾は弾かれ、さらなる接近を許す。
「ふざけた真似をッ!!」
残弾が空になったグロック拳銃を放り捨て、久里浜が再びアサルトライフルへ手を伸ばす。
だが––––
「あぐっ!!?」
銃を持つ前に、透が先に拳銃を抜いていた。
訓練弾が6発、久里浜の柔らかい腹部へ突き刺さった。
さらに接近され、腰に手を伸ばされる。
「オエッ……、ぐっ! 舐めん––––––––なぁッッ!!!!」
痛みを堪え、アサルトライフルをフルオートで乱射。
投げ技を回避するための処置であり、狙いなどつけていない。
まだ移動空間を十分に残した透には当たらず、机の陰に隠れられる。
「わたしは同期も、原隊も、先輩も今までずっと圧倒してきた––––お前なんかに負けられないのよ!!」
バー仕様の机に隠れた透へ、接近しながらHK416をセミオートで発射。
飛び散る木屑と共に、ゆっくり距離を詰めていった。
リロード時間は透と同等以上に速く、隙など無い。
とうとう机まで数メートルという位置に来た時、久里浜は決着をつけようと動いた。
「これで……終わりよ!!」
この時、中継を見ていた特戦群の他隊員は––––勝敗が決まったことを悟る。
「あれ……? えっ!?」
腰にあったはずの予備のフラッシュグレネードが、影も形も無いのである。
手でまさぐっている久里浜に、透は安全ピンを抜きながら答えた。
「探してるのなら、返すよ」
机の向こう側から飛んで来たのは、久里浜が探し求めていたグレネード。
さっき距離を詰められたほんの一瞬で、奪われていたのだ。
––––バァンッ––––!!!
強烈な爆音と閃光が、久里浜の聴覚と視覚を奪った。
悶える彼女に透は容赦なく残弾全てを叩き込み、そのまま押し倒す。
この際、ワンタッチのスリングポイントを銃から外し、久里浜から武器をも離させる。
「カハッ……! がっ!?」
馬乗りになった状態で、透は拳銃を久里浜の唾液まみれになった口へ突っ込んだ。
初めて彼女の顔が、恐怖の感情で満たされる。
「俺の勝ちで良いかな? 久里浜士長」
武器、体勢、状況––––全てにおいて完封された久里浜は、涙目で両手を上げるしかなかった。
【試合終了!! 勝者––––新海透3尉!!】
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