クインリーズ魔術学院の貴族は誇り高い
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(……マジでか……)
黒髪の少年は心の中で言葉をこぼす。
この少年は今年度のクインリーズ魔術学院の新入生である。
名を、フェイ=ステラルーツ。年齢は15歳、容姿は黒髪中背に東洋らしい顔付きをしている。
そしてこの少年を語る上で特筆すべき事項がひとつ、それはかなりの『不幸体質』ということだ。
少年はことある事に厄介事に巻き込まれる。それは昔から変わらない。
少年に『どれくらいからそうなの?』と聞くと『6年前くらいかな?』と答える。
さて、少年の短い昔話は終わろう。
そして今の少年の状況を端的に話そう。変な奴らに絡まれている。
少年は今日も今日とてその『不幸体質』の効果を遺憾無く発揮するのであった――
■■■
災難だな。
この学院に着くなり思ったことはそれだった。
何故なら変な奴らに思いっきり絡まれている。
「はぁ」
俺はため息をする。
昔っからこの『不幸体質』は変わらない。コイツのせいでかなりの不幸に襲われたことを思い出すと少しも笑えない。
しかし、ここでも不幸が発動。
先程のため息を変な奴らに思いっきり聞かれていた。
俺がまずい! と思っても時すでに遅しとはこのこと、もちろんそれを追及される。
「……おい、この状況でため息なんて肝が据わっているな」
「…………」
それに対して俺は無言で返す。
しかし、俺が一言も喋らずとも変な奴らの話が終わったりなど当然ある訳もなく……。
いや、ここで訂正しておこう。
心の中だったとしても、腐っていようとも貴族。さすがに変な奴らは侮辱が過ぎた。
なので貴族に対する認識を改めようとするがその貴族が口を開く。
「お前ここがどう言うところか知っているのか?」
一瞬、思考を巡らせる。
俺は究極の二択を突きつけられる。そう、『揚げ足を取るか』と『煽るか』の二つの中から。
あぁ、世界はなんとも理不尽で不条理だ。と俺は思った。
なぜなら煽るか揚げ足を取るかの二択なんて選べるわけがないだろう!
ちなみに周りのヤツらがこれを聞くと普段死ぬほど気の合わない組み合わせだったとしてもこう思うのだ。
『お前、アホだな』と。
心外だな。俺は魔術に関してはかなりの知識がある。
だが、魔術だけでは無い。常識もある程度備えている。
なのにアホとはなんだアホとは。
俺は断じてアホでは無い!
コホン、さて話を戻そう。
究極の二択はもちろん『揚げ足を取る』だな。
これは煽りと俺のストレス発散を同時に行える行為。
俺が逃すわけが無い。
「あぁ、勿論知っているとも。ここはクインリーズ魔術学院。世界最高峰の魔術教育機関だろ?」
「そう、だからお前みたいなやつが来ることは出来ないはずなのに!」
貴族はその言葉に怒気をこもらせながら言う。その理由に心当たりは……もちろんある。
恐らくそれは俺が学院長に推薦された者にもかかわらず今年度の成績最下生だったからだろう。
ここの学院長は七大魔術師がひとり、《冰焔の魔術師》メリア=タイトルにだ。
あいつの話よりも俺は早くここを立ち去りたいので話を切り上げて退散する。
「ま、そういう時もあるさ。人生だもの」
「なんだお前バカにしてんのか?」
「いやいや、俺みたいな一般ピーポーが貴族様をバカにできるわけないじゃないですか」
「チッ! お前を相手していると調子が狂うぜ。ここまでにしといてやる! 行くぞ!」
そうして絡んできた貴族たちは去っていき、気配が完全に消えたことを確認してから俺はこう言った。
「フッ。また奴らに勝ってしまった……か。」
ちなみにこれを言うと知り合いのやつからは「お前、絶対厨二病だろ?」と言われる。俺は最初それを聞いた時少し傷ついた。
しかし、俺は絶賛成長中なのである。今ではもう、そんなことでは傷つかない。
フ、我ながら自分の成長速度は恐ろしい。
「それは勝ったとは言わないんじゃ無いかな?」
「ッ!?」
俺はその瞬間、心臓が口から飛び出そうになる。
なぜなら気配が全くなかったからだ。
コレでも俺は気配を読むのが得意だ。なのでその俺が読み取れないとなれば普通は警戒するがこの状態では厳しい……か。
この思考を一瞬で済ませ、気にしてもしょうがないという結論に至り、この問題を放置する。
「ごめんね……驚かす気持ちはなかったんだけど……」
「ふむ、何か用か?」
……あくまで平静を保ったように対応する。
「いや、気になって声をかけただけだよ」
「……じゃあ、ここについて教えてくれ。俺はここら辺のことについて疎い。今まで田舎にいたからな」
「そうか……もちろん話そう。ここはクインリーズ魔術学院という世界でも指折りの魔術学院になる。この他にはレイトメス魔術学院とサンリバー魔術学院がある。レイトメスは魔術をサンリバーは魔剣術を、そして我が校、クインリーズは総合能力がそれぞれ秀でているのは分かるかな?」
「そこまでは話で聞いていた」
「そうなの? 説明してソンした。まぁいいよ。それでここ、クインリーズは七大魔術師が学院長をしているため人気だから毎年入学試験倍率が上がり続けているんだ」
「へぇー」
テキトーに返す。
なぜならどうでもいい事だからだ。
正直その情報は要らない。持っているからな。
「クインリーズを語る上で特筆するべきところが3つくらいあるんだよね。1つ目は教師にも七大魔術師がいるということ。だけど授業はおろか姿を表したこともないらしいから今では都市伝説並に忘れられたらしいよ。2つ目は実践強化よ授業が多いこと。ほかの魔術学院は授業と実践が7:3、5:5だったりするの。だから他に比べて少し危険だけど将来が高位の魔術師になれる可能性が数パーセントあがることもクインリーズが人気のひとつだよ。まぁ、こんなところかな」
「ふむ、感謝する。……それと聞きたいことがある。生徒については何かあるか?」
俺は生徒について聞きたいことがあるため聞く。
さっきの貴族のこともある事だしな。
「リクエストありがとう。生徒についてだね。そうだね……今年度は『黄金世代』と呼ばれてることは知ってるかい?」
「『黄金世代』?」
聞き覚えない単語に首を傾げる俺。
「そう。何故かと言うと今年度は3人の有望な新入生がいるらしいから。1人目が……貴族の中でトップレベルの魔術師の家系であるセルフィスト家の子供が入ってくるから。2人目が君、フェイ=ステラルーツ。七大魔術師、《冰焔の魔術師》に推薦されたから。3人目は……これは噂程度だけど聞くかい?」
噂でも俺は情報収集には手を抜かない。
故にここで聞く以外の選択肢は持ちあわしていない。
「もちろんお願いしよう」
「フッ。フェイならそう言ってくれると思ったよ。3人目は七大魔術師の中で最も謎に包まれている人物、《千剣の魔術師》が、僕らと同年代でここに入学してくるらしい」
「そいつは……またとんでもない……」
「そう、《千剣の魔術師》について分かっていることは当時の世界最強の魔術師、《惺統の魔術師》と交代して入ってきたということのみ。だから謎なんだけど……僕は結構すきかな。こういう謎。……っとまぁこんな感じかな」
「そうか……感謝する」
「うん。さて僕はそろそろ行くよ。会うことがあればまた会おう!」
「ああ……」
かなり興味深い情報を得た。あいつには感謝しなければ……ってかあいつの名前聞くの忘れてた。
まぁ、あいつも新入生っぽかったしまたどこかで会うだろう。
ちなみに、高位の魔術師になれる可能性が数パーセント上がるだけで危険なクインリーズに来るのは魔術師がそういう生き物だからだ。
俺は時計を見る。
すると、もう少しで入学式が始まることがわかったため会場である体育館に行く準備をする。
「んっ! ……さて、行きますか!」
背伸びをして歩き出す。
そして俺は体育館へ向かうのだった。
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