現実世界1
空がオレンジ色になる時間。
制服を着た高校生男子2人が歩きながら帰っていた。
1人は背が高く、いかにもスポーツができそうで明るそうな見た目をしている。
もう1人は背も普通、顔も体格も一般的で、特に目立った特徴はない。
「、、それでな、俺、また優勝!」
背の高い方が自慢げに何かで優勝したことを伝える。
彼の名前は佐久間 夜宇。
見た目通りスポーツ万能、勉強もできて顔も良い。
完璧な人間である。
「うそっ!まじかぁ」
「夜宇は相変わらずすげぇな」
それを一般的な方が感心する。
彼の名前は、資野 兆。
見た目通り、学校でもあまり目立たず、いつも佐久間の後ろに張り付いている。
学校では普通の生徒である。
そう。
学校では。
「それじゃあ、また明日な!」
「うん」
「じゃあねっ!」
2人は分かれる。
佐久間は家へ。
兆は反対方向へ行く。
そして、しばらく歩いた先にあるとても高い建物へ入っていった。
「こんにちはぁ!」
「「あっ!社長!こんにちは」」
数人のスーツを着た人たちが迎える。
彼らはこの会社の社員。
そして、出迎えられた兆は、
この会社の社長。
彼の会社は現在世界で売り上げが上位2桁に入るくらいの大きな会社。
ゲーム会社である。
「あっ!社長!こちらの資料を!」
「こちらの報告書もお願いします!」
「社長!目をお通しして頂きたいメールが!」
「はいはい。1つずつ見るから待ってください」
兆が廊下を歩くと、次々と社員が集まってきた。
学校がある日は学校が終わった時間しか資料に目を通せなので、社員たちは対応もしなければならず急いで見てもらわないといけないのだ。
社長はもちろん大変だが、社員も大変なのである。(社員も大変なのを分かってない上司もいるんですよねぇ。ムカつきます)
・・・。
「お、終わったぁ」
「「「「ありがとうございますぅ!!」」」
数時間かかって、やっと確認作業が終わる。
渡された書類をとって、社員たちは急ぎ足で部署に帰って行った。
そのまま30分ほど経つと、その日の仕事を終わらせた社員たちが次々と帰って行った。
一瞬で建物からほとんどの人間が消える。
残ったのは10人。
5人は緊急事態が起きたときのために対応するためのプログラマーとエンジニア。
2人は、緊急事態が起きたときに社員たちに急いで連絡を取るための窓口業務の人たち。
そして、残りの3人は、
「社長。副社長。お父さん。準備できてますよ」
「「あぁ。ありがとうございます!」」
「ありがとう」
並んだ3人にヘルメットのような物が渡される。
それは、VRヘッドセット。
ゲームをするための物。
3人はそれをかぶり、
VRの世界へとダイブした。