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「手を繋いだままのゾンビねぇ。変なゾンビもいんだねぇ」


 目の前にはゾンビの体が二つ。動き出さないよう首から上はさっき切り取った。

 二人のゾンビは手が繋がっていた。まるで恋人同士のように握り合う手のひらは完全に癒着しており、引っ張っても離れない。


「この状況、手を繋いだまま死んだってことでしょうか?」

「だろうねぇ。服や髪が肌に焼け付いたゾンビは腐るほどいるけど、手は初めて見たなぁ」

「サンプルとして持ち帰り――」

「いやぁ、べつにいらないかなぁ。それよりもっとゾンビの謎に迫ったり、打開策に繋がる何かを持って帰んないと」


 そう言って頭を掻くエルフの女に、エルフの男が「ですよね」とうなずく。

 そこにもう一人、エルフの男が遠くから駆け寄ってきた。


「隊長! すげーの見つけました!」

「すげぇの?」

「はい! この子です!」


 得意げに差し出す両手には子供のドライアドのゾンビが抱かれていた。


「子供とはいえ、ゾンビの頭も取らずに抱き上げるのはやめなよ」

「いやいや、違うんすよ! この子、ゾンビっぽい見た目してますけど、ゾンビじゃないんですって!」

「はぁ、なにバカなことを」


 真っ赤な眼と青白い肌はどう見てもゾンビのそれだ。

 しかし、その視線はゾンビのように虚ではなく、真っ直ぐこちらを見据えている。

 エルフの女が眺めていると、子供が口を開いた。


「みんな、だあれ?」


「……しゃべった」

「でしょ! ゾンビって喋んないすもんね! こうやって抱っこしても噛みついてこないですし、どう考えてもこの子はゾンビじゃないですよ!」

「もしくは、意思疎通ができるゾンビってことかぁ」


 それは間違いなく、ゾンビの謎に迫ったり、打開策に繋がる何かだ。


「だあれ?」


 再び投げられた問い。


「あたしたちは……味方だよ、まぁたぶんだけどね」


 ドライアドの里にゾンビが発生してから四年。散りゆく花の残した種がひっそり芽吹くように、止まっていた時計の針がようやく動き出した。

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