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2人目:冬川 康男



あの時見送らなければ、

ずっとここにいてほしいと言っていれば、

あの子たちは殺されずに済んだのかもしれない。


だけど、2人はもう戻らない。

「ただいま」と言ってくれない。

あの日扉の先に向かった瞬間から僕の時間は止まっている。



2人目は冬川 康男という男。

志戸が企てた殺害計画に金銭的援助をした人物だ。


奴はほぼ21時前後に仕事を終え、最寄りの駅から帰路に着く。

その予想を的中するかのように、会社から出てくる冬川の姿が遠目に見えた。


街灯以外明かりのない閑静な住宅街、

唯一聞こえる物音は会社の向かいにある川から発する水のせせらぎだけだった。

周りの音と同化するように足音を消しながら冬川の背後に迫る。


街灯の真下を通るたびに冬川の左手に光るものが見える、結婚指輪だ。


志戸ほどではないが奴も熟年した見た目をしている、おそらく40代後半だろう。

愛すべき人がいるのだ、きっと子供もいる。だけどそれがどうした?

この間まで愛すべき人がいたんだ。お前たちが手を出さなければこれからもずっと生きていたんだ。


だからお前も死ぬべきなんだ!!!


ドン!!


「うぉ!?」


体重をかけたタックルを冬川の背中に喰らわせる。


突然の出来事に奴は思考する間もなく、

突き飛ばされた身体は柵を飛び越え、3m以上の高さがある川に向かって頭から落下していった。


ゴッ・・・


人工的な整備がされたコンクリート造りの川に奴の身体は打ち付けられた。

おそらく本能的に頭を守ろうとしたのだろうが、先ほどの鈍い音がそれらの行動が無意味であったことを物語っている。


橋の傍らに取り付けられた梯子を伝って川の底まで下りる。


「うぅ・・・」


頭を抱えるように横たわっている男の姿があった。

意地汚い生命力に感心しながら奴のそばまで歩みを進める。


冬川はこちらの足元を横目に見ると、

息も絶え絶えに懇願した。


「すぃ・・・あせん・・・たすけぇ・・・」


冬川の両脇をつかんで橋の真下まで移動する。

その間に奴は痛みに耐え、即座に助けられたことに半ば安堵した表情をしているように見えた。


「あ、ありが・・・」


パキパキ・・・!!


橋の真下に到着すると同時に冬川の頭を両腕でつかみ、勢いのままに180度回した。

不自然な音を発したそれはどこか1点を見つめたまま、痛みに悶えることもなく息をすることもなかった。


「残り14人・・・」


誰一人として逃がさない。

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