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日が登る頃にはすっかり仲良くなって、一緒に川で水をかけ合いながら遊んだ。気づいた頃にはすっかり服は水浸しになっていた。
するとシルヴァンは服を脱ぎ水を絞り始めた。
「あれ? 脱がないの?」
——そうだった。脱いでもいいんだっけ。
上着を脱いで絞っていると、いきなり車のクラクションのようなものが響いた。
「なに! なに!」
シルヴァンが焦ったように周囲を見渡して動揺している。だが僕にはどうすることもできなかった。これがクラクションだということしかわからないし、どこからかもわからない。
「ペラン! いつまでこんな田舎にいるつもりなんだ!」
父だ。
手が震え、立っていられないほど動揺しているのは自分が一番理解できる。その場に座り込んで頭を抱え、ただ震えるだけしかできない。
「ペラン! えっと、どうしよう。まずはフルールおばあちゃん? いや長か?」
「そこにいたんだなペラン。」
顔を上げるとチェーンソーを持った父が立っていた。その後ろには倒れた数本の木が横たわっている。
「やめて! ぺランが怖がっている!」
すると父はチェーンソーをふかし、容赦無くシルヴァンに振りかざそうとした。
「わかった! ——家に戻るから、この子には何もしないで。」
怖かった。
父の存在も、シルヴァンが今にも殺されようとしていることも。
「わかればいいんだ。」
そう言ってきた道を引き返した。
「ペラン……。」
「いいんだ。楽しい時間をありがとう。」
初めて僕からキスをした。そしてきっと最後。
切り倒された木を横目に進んでいくと、一台の車が止まっていた。中には母がいる。でもここで逃げればきっとここの人々は殺されてしまうから。そう言い聞かせ車に乗った。
「やっと戻って——何よその小汚い服は! しかも上半身裸って、恥を知りなさい!」
またいつもの日常だ。こんなことなら夢を知らなければよかった。あのときフルールを助けなければ、そもそも寝過ごさなければ、こんなに辛いと感じずに済んだのに。もしかしたら、簡単に死ねたかもしれないのに。
僕の中はどす黒い後悔で満たされていた。