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After the Bullying  作者: Saki Tachimazaki
第2章
7/13

 日が登る頃にはすっかり仲良くなって、一緒に川で水をかけ合いながら遊んだ。気づいた頃にはすっかり服は水浸しになっていた。

 するとシルヴァンは服を脱ぎ水を絞り始めた。

「あれ? 脱がないの?」

 ——そうだった。脱いでもいいんだっけ。

 上着を脱いで絞っていると、いきなり車のクラクションのようなものが響いた。

「なに! なに!」

 シルヴァンが焦ったように周囲を見渡して動揺している。だが僕にはどうすることもできなかった。これがクラクションだということしかわからないし、どこからかもわからない。

「ペラン! いつまでこんな田舎にいるつもりなんだ!」

 父だ。

 手が震え、立っていられないほど動揺しているのは自分が一番理解できる。その場に座り込んで頭を抱え、ただ震えるだけしかできない。

「ペラン! えっと、どうしよう。まずはフルールおばあちゃん? いや長か?」

「そこにいたんだなペラン。」

 顔を上げるとチェーンソーを持った父が立っていた。その後ろには倒れた数本の木が横たわっている。

「やめて! ぺランが怖がっている!」

 すると父はチェーンソーをふかし、容赦無くシルヴァンに振りかざそうとした。

「わかった! ——家に戻るから、この子には何もしないで。」

 怖かった。

 父の存在も、シルヴァンが今にも殺されようとしていることも。

「わかればいいんだ。」

 そう言ってきた道を引き返した。

「ペラン……。」

「いいんだ。楽しい時間をありがとう。」

 初めて僕からキスをした。そしてきっと最後。

 切り倒された木を横目に進んでいくと、一台の車が止まっていた。中には母がいる。でもここで逃げればきっとここの人々は殺されてしまうから。そう言い聞かせ車に乗った。

「やっと戻って——何よその小汚い服は! しかも上半身裸って、恥を知りなさい!」

 またいつもの日常だ。こんなことなら夢を知らなければよかった。あのときフルールを助けなければ、そもそも寝過ごさなければ、こんなに辛いと感じずに済んだのに。もしかしたら、簡単に死ねたかもしれないのに。

 僕の中はどす黒い後悔で満たされていた。

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